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四国中央市の“おおたにさん”!?

「えひめふる里山歩き」 大谷山
  • 2023年11月30日

愛媛県内の里山の魅力を紹介する「えひめふる里山歩き」。
このコーナーでは身近な山の情報を募集しています。
今回届いたのはこちらのメッセージです。

ということで、7回目は四国中央市の「大谷山」に登ってきました。
この山、あのスーパースターのおかげで、いま注目を集めているようです。

「大谷やま」改め「大谷さーん」

愛媛と香川の県境に位置する標高507mの大谷山。
本来は「おおたにやま」ですが、最近「おおたにさん」と呼ばれて親しまれています。

そう、大リーグで今シーズン2度目のMVPを獲得した、大谷翔平選手の名前にあやかって注目を集めているんです。

この山を「おおたにさん」と呼び始めた人がいると聞いて訪ねました。
ふもとの切山地区で自治会長を務めている参鍋修一さんです。

「私はあまり野球は見ないんですけど、大谷選手はよく見ていました。引っ掛けると面白いんじゃないかなと。もう一種の遊び心です」

平家の里・切山地区

愛媛県四国中央市の切山地区は「平家の落人伝説」が残る山深い地域です。
国の重要文化財「真鍋家住宅」があるほか、安徳天皇が身を隠したとされる場所など、平家ゆかりの史跡が数多くあります。

かつては農業や畜産業でにぎわいましたが、いまは過疎・高齢化が進み、自治会によると住民の数は50人ほどで、子どもは1人もいません。

登山環境の整備で里山に活気を

自治会では2023年の春から大谷山の整備を始めました。
大谷選手の知名度を生かして、にぎわいを取り戻そうと考えたのです。

行政の許可を得て、まずは登山道に茂った草や木を刈ることにしました。
すると「大谷」の名前はさっそく効果をあげます。
口コミやSNSで話題になり、関心を寄せた人たちが山の整備に駆けつけるようになったのです。

参鍋修一さん
「非常にありがたいことだと思っています。切山の力だけではどうにも、もう現状維持することさえできないので、大いに助かっています」

参鍋さんによると「おおたにさん」と呼ぶようにしてから登山者の数は増えているそうです。

「大谷効果」で移住者も!?

大谷山をきっかけに切山地区への移住を決めた人もいます。

水口透さん

伊予市の水口透さんは、ことし6月に登山道整備の手伝いで初めて切山地区を訪れました。転職でちょうど引っ越し先を探しているタイミングだったということもあり、参鍋さんに紹介された空き家を気に入って移住を決めたそうです。年内にも引っ越しをすることにしています。

親子で楽しむ大谷山

さらに多くの人に大谷山に親しんでもらおうと、「親子登山会」も開かれました。
四国中央市の登山グループが企画したこのイベントには、市内の小中学生など19人が集まりました。

大谷山を案内してくれたのは、地元の山岳ガイド・松本智広さんです。
ガイド業だけで無く、林業にも従事している、山と森の専門家です。

松本ガイドが連れて行ってくれたのは「やまびこ」を楽しめる場所です。
子どもたちはそれぞれ、山に向かって思い思いに叫びます。

「おおたにさーん」

「ゲーム買ってきてー」

「おなかすいたー」

地形や障害物の有無などにより「やまびこ」がきれいに返ってくる場所は限られるということで、ここは松本ガイドおすすめの場所なんだそうです。

大谷山の山頂へ

山頂まではゆっくり歩いて30分ほど。子どもや登山の初心者でも挑戦できる山です。

これまで樹木に覆われて山頂の眺望は限られていましたが、ボランティアの協力で整備が進み、いまでは四国中央市や香川の観音寺市の市街地も一望できるようになりました。

大谷選手の活躍をきっかけに始まった地域の取り組みが、里山に活気をもたらしています。

子どものペースを見極める!

ここで登山のワンポイント。
山岳ガイド・松本智広さんに聞きました。

『親子登山は子どもに合わせた行動を!』

大人と子どもでは、のどの渇きや疲れ、暑さ寒さの感じ方が異なります。
水分補給や服装の調整、休憩するタイミングにも配慮が必要です。

また、子どもの体力を考慮して、昼過ぎには下山できるような余裕を持った登山を心がけてください。

山の医療に詳しい、日本登山医学会専門医の上家和子医師にも聞きました。
大人に比べて、子どもは体温を調節する力が弱く「低体温症」になりやすいため、特に服装に注意して欲しいということです。

これはただ服を着せればよいということではありません。
過度な厚着で汗をかくと、汗が乾く際に熱が奪われる「汗冷え」が起きやすくなります。
これも低体温症の原因になりますので、休憩時には防寒着を着る、行動中は1枚脱ぐなど、細かく調節をしてください。

また、子どもは周りの目を気にして、頑張りすぎてしまうこともあるため、周囲と競争させない、比べないことを心がけるとよいということです。

大谷山を望む 次のピークへ

参加者は大谷山を望む、隣の「金見山」まで足を延ばしました。
親子どうし、友だちどうしが励まし合い、力を合わせて次のピークを目指します。

最後は全員で”拍手”をして登頂を果たしました。
山頂から振り返るとそこには大谷山が…。
そして、歩いてきた登山道を一望することができました。

「ちょっと大変だったけど楽しかったです」

「足が痛くなったけど、頑張って登れて楽しかった!」

「ひとりだったら登れていなかったかもしれないです。子どもたちや周りの家族さんがいたので頑張れました」

参鍋修一さん
「子どもの声っていうのは明るくて元気が出ていいものですね。切山という地区の知名度を上げて、とにかく関心を持ってもらいたいと思います」

最後に1句詠んでみた

コーナー恒例の里山ハイク。今回も1句詠んでみました。

「峰小春子らにこだまを返しをり」

暖かな日ざしの中、里山に子どもたちの元気な声が響く様子を詠みました。
いつか大谷選手にも切山地区に足を運んでもらえたらいいなという願いも込めてあります。


「えひめふる里山歩き」のコーナーでは皆さんおすすめの里山の情報を募集しています。
その理由と、あれば画像も下記のリンクからお送りください。
 

  • 岡部馨

    岡部馨

    NHK山岳カメラマン。ふる里山歩きのコーナーを担当。ふだんから息子たちと親子登山を楽しんでいる。

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