「えひめふる里山歩き」その(2)興居島・小富士
- 2023年06月16日
愛媛県内の身近な里山の魅力を紹介するシリーズ「えひめふる里山歩き」。
2回目は松山市の興居島にある小富士です。かんきつの島として知られる興居島の山ならでは体験をしてきました。
(NHK松山放送局 松田利仁亜)
小富士の標高は282m。
その名の通り、海からそびえる富士山のような姿は松山市内のみならず、松前町や伊予市などの沿岸部からも見ることができます。
松山城からもよく見えますよね。
小富士は松山市中心部からアクセスが良いことも魅力の1つです。
伊予鉄道の高浜駅で降り、すぐ近くの高浜港から泊港行きのフェリーで向かいます。
興居島へは由良港行きのフェリーも出ていますが、小富士登山口へは遠くなるのでご注意を。
船に揺られておよそ10分。興居島に到着です。
島に上陸すると、それだけでゆったりとした空気が流れ、心も解けるように感じるのはなぜなのでしょうか。
港の待合所には地元の小学生が作ったかわいらしい案内図がありました。
いざ、小富士へ出発!
途中、家の間の路地に入り本当に大丈夫?と少し不安になりましたが、案内に従って進みましょう。
この日の松山市の最高気温は28.4度。
登山口から上り始めるとすぐに汗だくに。
ここで気をつけたいのが水分補給です。低い山だからといって甘く見てはいけません。
専門家によると標高が低い山は気温が高く、湿度も高くなりやすいといいます。
密集する木々に遮られて風が通らないことも珍しくありません。
夏を迎えるこれからの季節、水分に関連したトラブルはむしろ低山の方が多いという指摘もあるようです。
救急医で日本山岳ガイド協会の伊藤岳さんに注意すべきポイントを教えてもらいました。
「低山での水分補給の心得」
①水分不足は思わぬ怪我や体調不良につながる。
②自分が携行するべき水分量を、プランごとに検討すること。
③低山だからこそ、水分と塩分を積極的に補給しよう。
「登山中に水分補給が十分に行われないと、脱水症になってしまうことがあります。初期にはのどの渇きを自覚することが多く、やがて疲労や食欲不振、さらには頭痛や嘔気、体温上昇などが現れることがあります。なお、水分だけでなく電解質、特に塩分を摂取することも意識しましょう」
ひと息つき、さらに進むと山頂が見えてきました。
標高282メートル。興居島小富士、登頂です。
少し霞んではいましたが、松山城や三津浜港、船に乗り込んだ高浜港もよく見えました。
がんばったご褒美、いただきました!
次にちょっと移動して、島の反対側が見える展望所へ。
興居島の西側は風向きなどの条件によって松山空港に着陸する飛行機の航路にもあたります。
タイミングが良ければ、徐々に高度を下げている飛行機を真横に見ることができます。
飛行機の窓から小富士の姿が見えてくると、愛媛に帰ってきたなぁと感じる人も私だけではないはずです。
かんきつの島ならではの楽しみ
ところで登山口に向かう途中、何ともいえないいい香りが漂ってきました。
その元はレモンです。
レモンは興居島の特産品として、今年1月にまつやま農林水産物ブランドに認定されています。
訪れた5月中旬はまさに花の時期。白に薄紫色の可憐な花を咲かせていました。
畑の持ち主、かんきつ農家の山内捺暉さんと祖父の清茂さんに出会いました。
山内さん一家は捺暉さんのお父さん含め、3世代でかんきつ栽培をしています。
耕作放棄地の増加や、農家の後継者不足は愛媛でも大きな課題ですが、山内さんの畑はうまく引き継がれているようで、周りからもうらやましがられているといいます。
レモンの収穫期は来年の春。黄色の実がなるころにまた訪れようと思います。
島にはクラフトビールも
移住先として関心が高まっている興居島では新しい店が増えています。
ことし3月にオープンしたクラフトビールの醸造所もその一つです。
愛媛産の素材を使ったビールを製造しているということで、興居島産のいよかんを使ったビールをいただきました。
ホップの苦みにかんきつのスッキリした風味も加わって、登山後の疲れた体にしみ渡る最高のご褒美でした。
これだから登山はやめられない!
一句詠んでみた
興居島と小富士を満喫し、一句詠んでみました。
「ひとときを清涼にして花蜜柑」
暑くて汗が止まらない中でも、かんきつの花の香りとかんきつが使われたビールを味わうと暑さを忘れてしまったことを詠んだつもりです。
興居島・小富士について
所在地:愛媛県松山市興居島
標高 :282m
備考:高浜港から泊港行きのフェリーで10分ほど
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