母として 救急救命士として
- 2023年08月21日
熊本の皆さんの挑戦、小さな一歩を紹介するコーナー
「Step~未来への道しるべ~」
今回ご紹介するのは片山未希さん。
片山さんは3人のお子さんを育てながら、熊本市東消防署の“日勤救急隊”という部署で救急救命士として働いています。
『日勤救急隊』という言葉、初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。
なかなか聞き慣れない言葉ですが、違いは勤務形態にあります。
通常の救急隊は24時間勤務があります。
例えば月曜日の朝8時半から翌朝(=火曜日)の8時半まで24時間働いたら、
そのあとは、緊急時以外は基本的に休養をとる非番。
その次の日また24時間勤務。 そして非番、すると中2日のお休み
こうした24時間勤務と休息をとる日を組み合わせた勤務です。
それに対して日勤救急隊は、平日月曜日から金曜日まで 毎日朝8時半から夕方5時15分まで働いて、土日2日お休みというスタイルです。
“子育て”と“日勤救急隊” を両立しながら働く、片山さんの挑戦を追いました。
母として、救急救命士として
朝8時40分、片山さんの出勤時間です。
消防署に到着したら、医療機器の点検をするのが日課です。
いつも仕事が始まる前に車両の機材のチェックであったり、足りないものを補充したり、 朝から必ず点検しています。
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救急、一般負傷、第一出場
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点検を終えてまもなく、出動要請が入りました。
腹痛を訴えた高齢者のもとへ向かい、病院に救急搬送した片山さん。
熊本市東消防署には、こうした出動要請が年間3000件以上入ります。
多い日は1日6回も出動。昼食をとれない日も少なくないといいます。
遅い日だと、お昼ご飯がその日の仕事の最後になったりすることも今まであったんですよ。出動が多すぎて。
そして午後4時15分。時短勤務する片山さんは、一足先に消防署を離れます。
足早に向かったのは、子どもたちを預けている保育園。
家に帰ると息つく間もなく、家事が始まります。
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ねえママー!パトカー!きゃー!
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にぎやかですね~
そうですね、もう戦争です(笑)
母として、救急救命士として。片山さんは日々、奔走していました。
踏み出した一歩
片山さんは出産後、内勤の部署に異動したことがあります。
しかし“現場に戻りたい”という気持ちが消えることはありませんでした。
人の生死と関わるお仕事なので、大変な部分とか厳しい部分もたくさんあるんですけど、 搬送した人だったり、ご家族からお礼の手紙を頂いたりもするんですよね。そういうのを頂くとやっていてよかったなと思います。
さらに女性隊員が出産を機に現場を離れることに、悔しさも感じていました。
私が24時間勤務をしていた時に、現場にいる女性の救命士が少なかったんですよね。先輩の女性の救命士さんも妊娠・出産を機に現場を下りて、そういう人たちも資格を活かしながら、どうにか現場で仕事ができないかというのを考えて…
女性が、現場で働き続けられる環境を作りたい
片山さんは消防局全体で開かれる意見発表の場で、日勤救急隊の導入を訴えます。
この提案がひとつのきっかけとなり、3年前 熊本市消防局で、日勤救急隊が発足。
家庭の事情で、24時間勤務が難しい男性隊員にとっても、大きな後押しとなりました。
日勤救急隊を希望して上司と相談の上で入隊しました。
家のことしたり、晩ご飯を作ったりしています。
子どもとの時間も取れて、すごく良い隊です。
さらに日勤救急隊が設立されたことで、 組織全体にもいい影響があったといいます。
この東消防署と中央消防署は、年間の救急件数が3000件を超えておりました。
出動の多い署に日勤救急隊を配置し、救急隊が増隊されたことにより、 現場到着や病院到着への時間短縮につながる。増加する救急需要に対応する大きな効果がある。
日々、命の現場に向き合う片山さん。
たとえ過酷な現場でも 救急救命士を続け、家族も守っていきたい。
そう願う片山さんには、夢がありました。
今はまだ復帰してすぐなので、救命士として本当にちゃんと働けているのかなという疑問はあるんですけど、 これから女性がもっと活躍できるように、現場の救急隊長になれるように頑張りたいなと思っています。