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生まれてくれた命のために

流産・死産などを経験した母親たちをつなぐ
  • 2023年06月22日

熊本の皆さんの小さな挑戦、小さな一歩を紹介するコーナー「Step~未来への道しるべ~」。

出産直後に赤ちゃんを亡くした自身の経験から、
流産死産などを経験した母親たちがつながる場を作る活動に取り組む女性がいます。

厚生労働省の統計では、おととし生まれた赤ちゃんのうち、16,000人以上が死産していて、その確率は50人に1人と言われています。

そうした母親たちの苦しみを少しでも減らしたいと奔走する澤野典子さん。その一歩を見つめました。

澤野さんは、おととし7月に、息子の蒼空君を亡くしました。3年に及ぶ不妊治療の末に授かった待望の第一子でした。妊娠12週を過ぎたころ、赤ちゃんに病気が見つかり、長く生きられない可能性を指摘されました。

それでも息子に会いたいと出産。生まれたおよそ1時間半後に、天国へ旅立ちました。

”否定された”ように

その後、日常生活もままならなくなった澤野さん。
追い打ちをかけたのは、周囲の心ない言葉でした。

「亡くなった子と写真撮る人とか信じられん」とか言う人もいて。

「この子がかわいそう」とか、「亡くなった姿さらされてかわいそう」とか言う人もいるけど逆に私は生きている赤ちゃんがわからないから、この姿が大切な訳ですよね。

「次があるから早く忘れたほうがいい」

励ましのつもりでかけた言葉が、赤ちゃんが生まれたことを”否定された”ように、母親たちは感じると言います。

次第に澤野さんは、社会との関係を断つようになりました。

同じ思いをした人と

澤野さんが助けを求めたのは、同じ経験をした母親たちでした。SNSを通じて知り合い、これまで言えなかった思いを少しずつ打ち明けるようになりました。

周りがどう接していいかわからないみたいな状態になっちゃって。
体は元気になっていくけれど心が追いつかないみたいな。
同じ思いをした人がいることを知れるのがせめてもの救い。

そうですね。心身示す反応が頭がフリーズして何も考えられんよね。

"赤ちゃんが亡くなった時"の備えは

母親たちが追い詰められるのには、理由があります。

赤ちゃんが元気に生まれた時と違い、亡くなった時への備えはほとんど整えられていないのです。

生きている赤ちゃんのお世話するお尻拭き・綿棒とかそういうセットは最初にお金払って必ず買わないといけないのに、どうして亡くなったときは何もないのか?

準備しておいてほしいよね

そう。それ変じゃない?って思う

マニュアルの中に流産・死産・新生児死になった場合のことなんて
何一つ書いていない。

私はおむつとかいらないし、何も関係ないものだらけ。

家族で過ごした7日間

そんな澤野さんの心の支えになっている出来事があります。
蒼空君が生まれてから火葬されるまでに家族で過ごした7日間です。

母親としてできることを必死に探した澤野さん。

小さな体を洗い、服を着せてあげたとき。

「母親として息子に何かをしてあげられた」

と感じることができたといいます。

どんな週数であれみんな(命が)宿って
"いた"ということに意味がある。

(亡くなっても)赤ちゃんは赤ちゃんだから、同じように大事に限られた時間を過ごせたらいいんだろうなって。

踏み出した一歩

「我が子の死に直面したお母さんたちに、同じような時間を過ごしてもらいたい。」

蒼空君を亡くした4か月後、自助グループを立ち上げました。

亡くなった赤ちゃんのための服を病院に寄付したり、死産した赤ちゃんにできることを発信したりしています。

この人がいた意味。この人が私のところに来たから(母親たちが)つらい中でも回復を促す仕組みが"できた"という事実を作りたい。

かわいそうだった 生まれないほうが幸せだったとか、そうじゃないと証明したい。

届き始めた声

澤野さんたちの声は、少しずつ社会に届き始めています。

障害者用の衣服を作るこの会社では、亡くなった赤ちゃんのための衣服を手掛けるようになりました。

赤ちゃんを亡くした母親たちの苦しみを知り

「旅立つまでの時間を後悔せずに過ごしてほしい」

と病院に服を届けるようになったのです。

死産ってわかった時点で、「(服を)準備してください」と言われても本人は動けないと思う。

「本人がそのときに自分で調べて自分で動いてっていうのは酷というか苦しい部分もある」

当事者から(声を)挙げるのはつらいことだと思う。

思いを抱えながらやっていくのは相当のパワーがないとやれないし。

でも私たちも声を挙げていかないとできない。
ハードルが高いからといって引き下がる気もない。

グリーフシェアマルシェ

社会に理解をさらに広げるため、澤野さんはイベントを開きました。
その名も「グリーフシェアマルシェ」。参加者はみな、大切な人を亡くしています。

それぞれの悲しみを分かち合う場を作りたいと考えたのです。

県内で15年間、助産師をしている女性も訪れていました。

(赤ちゃんを亡くした)お母様と接すると(苦しい)思いがあるとSOS出されている。そのキャッチのしかた お母様とどう接したらいいか もう一回認識したかった
自分自身振り返りたかった。

現場の人と足並みをそろえて

葛藤を抱える助産師に対し、澤野さんは"自身の体験"を語り始めました。

まずは一つの命として人として扱う。
”亡くなった”と認識するのは「生きている人が亡くなった」じゃないですか。
死産・流産の場合は”生”を実感する間もなくいきなり”死”が現れる

私自身(流産・死産を)経験した方に残したほうがいいと言ってもらったから
どうにかしてカメラだけは渡して助産師さんが撮ってくださった。

この人が"生きている時間"を収めてくれたのは現場の助産師さん
だから今こうしていられるし(社会が)こうであってほしいと伝えたい

手助けまではいかないけれど きっかけが…

とても大きな存在です。「一緒に」と思う。当事者だけではなく現場の人と足並みをそろえながら 誰も無理をしすぎず必要なときに必要なケアが提供される状況に…

蒼空君がいてくれたから

「どんな小さな命にも生まれてきた意味がある」。

その思いが、澤野さんの一歩につながっています。

やりたくてやっているというか、やりたくない気持ちもあるけれど
今はこういう生き方しかできないのかもしれない。

子育てみたいな感覚でもある。
私がこうやっていたら「この子のおかげだね」みたいな
蒼空君がいてくれたから動かしてくれている

動画はこちら

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