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NHK熊本WEB特集 クマガジン

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豪雨被害は“私の失敗”

~災害から学んだこと~
  • 2023年07月26日

熊本の皆さんの挑戦、小さな一歩を紹介するコーナー
「Step~未来への道しるべ~」
人吉市の球磨焼酎蔵元の代表・下田文仁さんの蔵元は令和2年7月豪雨で全壊。
2年以上にわたる復旧工事の末、今年3月リニューアルオープンしました。
復興に向け踏み出した一歩。
それを後押ししたのは、“豪雨で受けた被害は自らの失敗だ”という自戒の念でした。

今年3月 復旧工事を終えた蔵元で、下田さんは新たな門出を迎えていました。

下田さん

この日までいろんな方に支えられて私たちは前に進んできましたが、
ようやくこの日を迎えることができました。
感慨もひとしおですが新しいステージに立って、
頑張っていきたいと思います。

焼酎の魅力を伝えようと、新たな蔵にはさまざまな工夫が凝らされていました。

蔵見学に来ていただいた方やお客様を招き
球磨焼酎の歴史をお話したり、焼酎を飲んでもらう
「昭和の初めの教室」を模して作った部屋

“酒造りの心臓部”といわれる麹室(こうじむろ)。
明治時代に作られたこの場所も、見学できるようになりました。

水害前は壁で仕切られていたため見ることはできなかった、
ちょっと変わった造りの麹室(こうじむろ)

豪雨被害は“私の失敗”

再起を果たした下田さん。
しかし災害直後は、目を覆うほどの惨状が広がっていました。

令和2年7月豪雨で、3メートルの濁流にのまれた酒蔵。

タンクが横倒しとなり、一升瓶4万本分の原酒が流出しました。
事務所にも土砂が流れ込み、重要な資料も多くが水浸しになりました。

下田さん

復旧するのは無理だな、
本当にこんな片付けるだけで3年ぐらいかかるんじゃないかなと。
もうそんなことしたら、会社として干上がってしまうので、
もう本当に廃業した方がいいのかなと感じましたね。

突然襲われ、逃れようのなかった豪雨災害。
しかしこの被害を、下田さんは“自らの失敗”と捉えていました。

下田さん

失敗ですね。本当に。
そもそもここは「水害で10メートル来る」と
ハザードマップで書いてあるにもかかわらず、全然想定してなかった。
想定していたら、もっと被害はおさえられていたはずですし。
そういう意味で、あの2020年7月4日の自分の行動は
大失敗だと思っていますね。

災害を忘れまいと、下田さんは蔵の至る所に当時の水位を記していました。

下田さん

自分たちとしては“戒め”として、自分たちが大失敗した経験なので。
ああいう失敗を二度と繰り返さないように、
「水はここまで来る可能性があるぞ」ということを、
常に肝に銘じながら仕事をしようと思って。

失敗を二度と繰り返さない

新たな蔵には “豪雨災害で学んだ教訓”が、ちりばめられています。

水害直前は事務所として使っていた部屋
下田さん

1階は事務所として使うと水没して、
パソコン・書類・お金・通帳みんな使い物にならなくなる。
事務所は2階に持って行って、1階には基本的に何も置かない方がいい。

さらに焼酎を貯蔵する甕(かめ)にも、工夫を凝らしました。
ロープでつるすことで、洪水時は浮かび、水が引くと着地する仕組みにしました。

失敗を次につなげる

下田さんはリニューアルした酒蔵で、“水害の教訓を伝える活動”も再開しました。

下田さんが繰り返し伝えたのは、
豪雨災害を”自らの失敗“と捉え、次につなげることの大切さでした。

下田さん

本当に失敗したなと思っているのは、
ハザードマップを見てなかったんですよ。
前回の水害で床下だったから、今回も球磨川があふれたら床下だろうと
前回の経験をもとに考えるのは間違っているなと思って、
ちゃんとハザードマップを見て、
どこまでの危険性があるのかというのを考えないといかんなと。
自然の力というのは、人間の力を軽く乗り越えてくるので、
人間の力だけを信じ切ってはいけなくて、
自然に対する畏れの気持ちというのを持たないといけない。

新たな蔵で踏み出した一歩。
そこには「災害の経験を決して無駄にしない」という強い信念がありました。

下田さん

水害に遭った経験がある方というのは多いようで少ない。
私たちはその経験をさせてもらって、一つの失敗経験として
皆様に私たちの失敗したことをちゃんと伝えて、
皆様が失敗されないように命を長らえられるように、
財産を失わなくて済むようにお伝えする責任があるなと思って。
今からも頑張っていきたい。

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