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真冬の楽園~高知 大月町柏島~

  • 2024年02月27日

日本有数のダイビングスポットとして知られる高知県大月町の柏島。暖かい黒潮の影響で海にはテーブルサンゴやカラフルな生き物が見られます。今回は海や川などの環境問題について映像取材するために培ってきた潜水撮影のスキルを生かして冬の海中を彩る生き物たちを撮影しました。
 (高知放送局 カメラマン 岩崎温)

四国のはじっこ大月町 柏島(かしわじま)

柏島は高知県の西南端に位置する周囲およそ4キロの小さな島です。はえ縄漁や養殖が盛んですが、透き通ったエメラルドグリーンの海の絶景でも知られシュノーケリングやダイビングなどマリンレジャーを楽しむ観光客に人気の場所です。

2本の橋でつながる島

『風の島』と呼ばれる柏島

冬、柏島には強い季節風が吹き付けることから、地元では『風の島』とも呼ばれ、海が荒れる日も少なくありません。

冬の海の様子(2023年12月17日撮影)

冬でも絶えないダイバーの姿

そんな中でもドライスーツを身に着けたダイバーが集ってきます。

千葉の
水中写真家

冬の海は透明度が上がるので背景がきれいな写真が撮ることができます

愛媛からの
ダイバー

この時期にしか見れないかわいい生き物がいるのでその子たちに会いに行きます

黒潮の恵み

私はこの海で去年の暮れ、潜水カメラマンとして撮影を行いました。海上の過酷な風景から一変。海の中では別世界が広がります。この日の水温は20℃ほど。温暖な黒潮と瀬戸内海からの栄養豊富な潮が交わるため、温帯と亜熱帯、両方の生き物を見ることができます。

テーブルサンゴが広がる柏島の海中

柏島は国内で確認されている魚類のおよそ3分の1におよぶ1300種以上が生息し、海の生き物たちの楽園といわれています。

地元水中ガイドが語る冬の海

撮影をサポートしてくれたのは柏島で23年前から水中ガイドをしている松野和志さんです。柏島の海で見られる生き物の多様さに魅せられたダイバーの1人です。

松野和志さん

冬は海藻が生え始める時期で、それを食べる小さなウミウシが出てきたりエビやカニが増えます。夏と比べると海中のプランクトンが少なくなって透明度が上がるため、色彩豊かな生き物が多く見られ、柏島ならではの海を楽しむことができます

辰(たつ)年にちなんだ生き物たち

向かったのは水深27メートルの海底。1メートル以上ある巨大なサンゴの前で松野さんが動きを止めました。紫の枝が鮮やかな軟らかいサンゴの仲間のウミウチワです。このサンゴの絡み合った枝の中に、ある生き物が隠れています。

港から船で5分ほどの沖合

枝が動いたと思いきやウミウチワに隠れていたのは、タツノオトシゴの仲間「ピグミーシーホース」です。その姿から竜を連想させる生き物として知られます。ことしの干支は辰(たつ)ということで松野さんが案内してくれました。

大きさは1.5センチほど

続いて、水深10メートルの海底で見つけたのは、鮮やかな青い尻ビレが特徴の「イッポンテグリ」。海外では「小さな竜」という意味で「Dragonet」と呼ばれています。胸びれを使って砂地を歩くように移動するのが特徴です。

大きさは10センチほど

次に見つけた生き物は、細長い口が竜を連想させる「ニシキフウライウオ」です。皮弁(ひべん)と呼ばれるたくさんのトゲで周りにあるサンゴの仲間に姿を似せて巧みに身を隠しています。

周りの環境に色や形を似せて身を隠す”擬態(ぎたい)”
体やヒレに”皮弁(ひべん)”と呼ばれるトゲ状の突起

1年を通して伝えたい柏島の魅力

松野さん

季節ごとに生態系の特徴があって、その時期にしか見ることができない生き物がいます。じっくり探して紹介することでお客さんがすごく喜んでくれるので、私もがんばるぞと気合いが入ります

魚の楽園とも言われる柏島ですが、冬は水温が下がりプランクトンも少なくなるため、夏と比べると海の生き物を見つけることが難しくなるそうです。

水中で生き物を探す松野和志さん

光で浮かび上がる生き物

23年間で10000本以上柏島の海に潜ってきた松野さん。その経験と知識でさまざまな生き物との出会いを演出します。

水中ライトの光の先に注目

何もいないように見える海中で水中ライトを向けると、姿を現したのはクラゲの仲間「オビクラゲ」です。

水深10メートルの海中

長さは30センチほど。「オビクラゲ」は普段外洋に漂っているクラゲ。冬の時期に大陸からの季節風が海面に吹き付けることで、北西に面するこの柏島の海に流されてきます。その姿から海外ではビーナスの腰ひもとも呼ばれ、神秘的な姿がダイバーに人気です。

海外ではその美しさから“ビーナスの腰ひも”とも呼ばれる

海藻を手であおいだその先には

さらに水深10メートルの海底。松野さんがちぎれた海藻がたまっている場所をやさしく手であおぎ始めました。

ちぎれた海藻がたまる場所を手であおぐ松野さん

すると海藻から何かが飛び出してきました。小さなエビの仲間「フィコカリス・シムランス」です。大きさは1センチ以下で体を覆う毛の色を周囲の色に合わせ身を隠しています。

擬態していてわかりづらいですがエビの仲間です

教えて下さい!生き物の探し方のコツ

岩崎C

海の中で生き物を探すコツを教えて下さい!

松野さん

探し方のコツ①お目当ての生き物が好む環境を図鑑や雑誌で調べて、水中でその環境がある場所を探す(例)海藻、サンゴなど

松野さん

探し方のコツ②お目当ての生き物が何を食べているのかを調べて、その生き物が海中で食べるものを探す(例)赤いヒトデを食べるフリソデエビなど

動画で楽しんで!柏島の海の魅力!

冬の柏島ではさまざまな生き物たちとの出会いがありました。これまで紹介してきた生き物たちも、ぜひ動画で見てください!

2024年1月11日放送

私は今回、20年ぶりに柏島の海に潜りました。冬は生き物の活動が少なくなる季節ですが、柏島では魚をはじめカニやエビなど多様な生き物が見られました。冬ならではの透き通った海で輝きを増す生き物たち。柏島が持つ魅力を改めて再発見することができました。高知が誇る豊かな水中の世界をこれからも視聴者の皆さんにお伝えしていきますのでぜひご覧ください。

高知 柏島への行き方

高知市中心部から車で高知自動車道と国道56号線などを使っておよそ3時間ほど、JRやバスなどの公共交通機関を利用する場合はおよそ5時間ほどで行けます。

  • 岩崎温

    高知放送局 コンテンツセンター

    岩崎温

    日本海や九州の磯焼けの海、沖縄のサンゴの異変など取材してきました。高知の海には20年ぶりに潜りましたが生き物の豊かさに驚きました。

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