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介護の負担軽減へ 高知発! “とろみ”つき牛乳

高齢者に食の楽しみを
  • 2023年06月28日

お年寄りなどが飲み物を飲んだときに誤って気管に入ってしまう「誤えん」を防ごうと、高知県の老舗乳業メーカーがとろみのついた牛乳を開発しました。
牛乳自体にとろみをつけたのは全国で初めてということで、会社では、高齢化社会を見据えて、とろみのついた飲料をさらに充実させる方針です。

全国初!とろみつき牛乳

高知県の老舗乳業メーカーが新たに開発したこの飲み物。

とろみつきの牛乳

一見、普通の牛乳ですが、実は、牛乳自体に“とろみ”がついているんです。
会社によると、全国で初めての試みだということです。

なぜ “とろみ”?

飲み込む力は加齢とともに低下し、飲食物が誤って気管に入ってしまうと「誤えん性肺炎」のリスクも高まります。

厚生労働省によると、誤えん性肺炎は去年1年間の日本人の死因のうち6番目に多く、およそ5万6000人が亡くなっています。こうしたリスクを防ぐには、とろみをつけるのが効果的です。

通常の牛乳

牛乳はタンパク質とカルシウムが手軽にとれる飲み物ですが、牛乳にとろみをつけるのは難しく、ヨーグルトなどで代用されることもありました。

高齢者に牛乳を

高齢になっても昔からの味を楽しんでほしい。この会社では、およそ1年半かけてとろみをつけた牛乳を開発しました。この会社の吉澤文治郎社長は父を誤えん性肺炎で亡くした経験があり、みずから先頭に立って、開発を進めてきました。

吉澤文治郎社長
「在宅医療や在宅介護になったときに、家でとろみ剤でとろみをつけたり、とろみ飲料を買ってきたりというのは結構手間で、課題があるという話を医療現場や介護の現場で伺いました。
のどの筋肉の力が弱ってくることで、昔から親しんできた牛乳を飲めなくなったというのは悲しいことなので、日常生活の中で牛乳を買いに行った時にこういう飲み物が買える。そういう社会を作っていきたいと思っています」

使用するとろみ剤

10回ほど試作を繰り返し、とろみ剤の種類だけでなく、入れるタイミングや温度を工夫することで開発に成功しました。とろみ剤にはキャッサバや大豆、とうもろこしなどすべて植物由来の成分を使っているそうです。

新たに導入した充てん機

また、1億3000万円をかけて新たな充てん機も導入し、本格的な生産体制を整えました。

高齢者の反応は

完成した商品の試飲会が南国市の高齢者施設で行われ、80代から90代の施設の利用者にできあがった商品を飲んでもらいました。

なかなか牛乳ってとろみが付きにくいんですが、はじめからついたものを作りました

おいしい

甘みがちょうどやね

とろみはどうです?

いいですね、このくらいが

試飲会のあと、利用者のみなさんに感想を聞いてみると、「おいしいかった」「飲みやすい」「簡単に買えるといいですね」などと好評でした。

吉澤文治郎社長
「おいしい、おいしいと飲んでいただけたのでほっとしています。何度も試行錯誤して、どれぐらいのとろみがいいのか模索してきたので、いいとろみですよと言っていただいてよかったです。
高知県は高齢化では先頭を走っていますので、高知県からこういう商品を発信することは意義があることじゃないかなと思います」

とろみ飲料をスーパーでも

普通の牛乳と比べて割高なものの、一定の需要が見込めるとして、この会社では、7月から高知県内のスーパーなどで販売することにしています。
高齢化社会を見据えて、介護食品のビジネスも今後さらに活発になりそうです。

  • 奥村敬子

    高知放送局 記者

    奥村敬子

    2019年入局
    高知市を中心に行政取材を担当

  • 澄田謙人

    高知放送局 記者

    澄田謙人

    2021年入局
    スポーツ・高知市政を中心に取材中

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