寿恵子(浜辺美波)も舌鼓!土佐の「田舎寿司」とは
- 2023年06月22日
連続テレビ小説『らんまん』は再び高知が舞台に。峰屋の宴会では土佐の郷土料理「田舎寿司(いなかずし)」が登場しました。浜辺美波さんが演じる寿恵子もおいしそうに食べていた「田舎寿司」とは、どんな料理なのでしょうか。
(高知放送局 リポーター 五十嵐優衣)
寿恵子(浜辺美波)が感激した土佐の料理
『らんまん』第59回の放送。東京から帰省した万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)も参加した峰屋での宴会には、土佐の郷土料理が並びました。寿恵子は次々に料理を勧められます。
「こちらもどうぞ。酢飯にゆずを使っています」
鮮やかな色のミョウガがのった、見た目もきれいなこちらは、土佐の「田舎寿司」です。寿恵子は食べ、「ん~~~っ」と幸せそうな表情を見せていました。
高知県民にはおなじみの「田舎寿司」。どんな料理なのでしょうか。
山の幸を使った“田舎寿司”
土佐伝統食研究会の彼末富貴(かのすえふき)さんに話を聞きました。土佐伝統食研究会は、高知県で受け継がれてきた料理の食べ方や調理方法、それに加工技術などを発掘、整理して次世代に伝えていく活動をしています。
彼末富貴さん
「田舎寿司は高知県の山間地帯に伝わる行事食でした。昆布やのりが手に入りにくかった時代、身近な山で採れる食材で寿司をつくったのがはじまりとされています」
高知県は森林面積が80%以上。
輸送や冷蔵面が発達していなかった時代に、山間部ではなかなか手に入らない海産物に代わり、身近にある山の幸を使ってごちそうを作ろうとして生まれたのが田舎寿司だそうです。
かつて、お米は貴重なもので、田舎寿司は冠婚葬祭やお祭りの時に食べられていたそうです。すしのネタには、ドラマで登場したミョウガ以外にもシイタケやタケノコなど、山の幸が使われます。
地域の旬の食材を使うため、地域ごとにネタも多少異なります。最近はネタの種類が増えてきていて、ゼンマイやわらび、カブなども使われているそうです。
田舎寿司は、魚を使ったすしに比べると安価で日持ちすることから、今は日常的に食べられるようになりました。
命名はわずか40年ほど前
高知県民にとって身近な郷土料理として親しまれている「田舎寿司」。実は、この名前が付いたのは1986年ごろ。今からわずか40年ほど前です。
彼末富貴さん
「1986年に、全国コンクールに出品された際に“田舎寿司”と名前が付きました。それまでは“ミョウガのお寿司”や“タケノコのお寿司”などと呼ばれていて、総称する名前はありませんでした」
田舎寿司と名前が付く料理は全国各地にありますが、このように野菜を使ったすしは、全国的にも珍しいそうです。
寿司酢にはゆず
高知の田舎寿司は酢飯にも特徴があります。酢として使っているのは、高知が生産量1位を誇るゆずです。
田舎寿司をいただくと、さわやかなゆずの香りがどの野菜ともよく合っていました。
見た目はシンプルな田舎寿司ですが、実はネタそれぞれ味付けが異なり、煮込んだり、酢漬けにしたりと手が込んでいます。
彼末富貴さん
「家庭で作るときは、ネタを仕込んだあとに冷凍しておくと日持ちしますし、食べたいときに手軽に作ることができるのでおすすめです」
伝統の田舎寿司を次の世代に
高知の山間地帯で暮らす人々のアイデアから生まれた田舎寿司。最近では、核家族化などにより料理をする人が減ってきていて、田舎寿司を作ることができる人も減ってきているといいます。
高知ならではの田舎寿司を次の世代に伝えていくために、土佐伝統食研究会はこれからも普及活動に力を入れていきたいといいます。
彼末富貴さん
「『らんまん』をきっかけに県外の人に知ってもらえることはとてもうれしいです。まずは“食べてみたい”と思ってもらうことが、田舎寿司の継承にもつながると思います。そこから地域の食文化に興味を持ってもらえたらいいなと思います」