認知症
認知症とは、脳がダメージを受けて記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障が出る状態をいいます。
認知症の症状は大きく2つに分かれます。1つは中核症状。物忘れをはじめとする認知機能の低下です。もう1つがBPSD(行動・心理症状)。周辺症状とも呼ばれます。BPSDは、中核症状を持っている人が、混乱したり落ち込んだりした結果として起こります。具体的には抑うつ、不安、緊張、焦燥、妄想、幻覚など精神症状と、暴言、暴力、俳諧などの行動障害に分けられます。
認知症の人が物をなくした場合、身近な人に「あなたが盗んだんでしょう」と疑いを向けることがあります。これを「ものとられ妄想」と言います。
BPSDの中には、環境や人間関係の調整によって改善できるものがあります。
レビー小体型認知症の症状
レビー小体型認知症の初期症状について、次の5つの項目をチェックしてみましょう。2つ以上当てはまると、レビー小体型認知症の可能性が疑われます。
- 実際にはいないのに、「知らない人がいる・虫がいる」などと訴える
- ぼんやりとはっきりの差が激しい
- 小刻みにたどたどしく歩き、よく転びそうになる
- 睡眠中、大声で寝言を言ったり、手足を激しく動かしたりする
- 落ち込むことが多くなった
実際にはいないのに「知らない人がいる」「虫がいる」などと訴える「幻視」は、最も特徴的な症状で、特に暗がりで見えやすく、「床が水で濡れている」「煙が出ている」などと訴えることもあります。幻視は、脳の「視覚連合野」という部分が障害されるのが原因と考えられています。
幻視の対策としては、部屋を明るくし、複雑な模様があるような室内デザインは避けます。たとえば、患者さんが「そこに人がいる」と訴えたときは、家族や介護をする人が近づいたり触ったりしながら"ほら何もないでしょう"などと言って、幻であることを理解してもらうのもよい方法です。こうした対策を繰り返すうちに、幻視の訴えを減らすことができます。
統合失調症
統合失調症とは
統合失調症は1つの病気ではなく、症状や経過が似たさまざまな精神疾患が集まって起こる症候群だと考えられています。およそ100人に1人がかかるといわれており、特に10代後半~30代といった若い世代に発症しやすいという特徴があります。
統合失調症の症状
統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。
陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。
私たちの脳では神経伝達物質のドパミンが目や耳から受け取った情報を伝達しています。しかし、統合失調症では部分的にドパミンの伝達が過剰になり、神経の働きが過敏になって、幻覚や妄想などの陽性症状が現れます。
幻覚は、聞こえないはずの声が聞こえる幻聴、見えないはずのものが見える幻視、におわないはずのものがにおう幻嗅(げんきゅう)[※幻臭(けんしゅう)ともいう]などがあります。
特に幻聴は正常かどうか区別がつきにくいです。そのため、病気の症状なのか現実なのかわからなく、病気だという認識がなかなかつきにくいという特徴があります。
妄想とは現実的ではない考えを信じて、そのことに心がとらわれてしまうことです。自分と外界との関わりの中で妄想を持つため、社会的な背景や文化的な特色などの影響を受けることもあります。
リスク期の症状
統合失調症の患者さんのほとんどは、「自分が病気だ」という認識はありません。幻視や幻聴などは、本人にとってはすべて本当のことに思えているからです。そのため、周囲の人が病気に気付くことが重要です。
統合失調症には病気の前兆が現れるリスク期があり、軽度の幻覚や妄想が起こることがあります。さらに、まとまりのない発言をしてしまうなど、社会生活に関わる機能が低下し、苦痛を感じるようになります。そのほかに、不眠や不安、抑うつなどの症状が出ることがあります。これらの症状が続くと、統合失調症をはじめとする精神疾患に移行する危険性が高まります。
病気の前兆かもしれないと感じたら、家族だけで抱え込まずに、まずは担任の先生やスクールカウンセラー、全国の都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどに相談してみてください。幻覚や妄想などの症状があれば、精神科の受診が勧められます。
なるべく早い段階で治療に入ることが、その後、改善に影響するということがアメリカの大規模な研究で分かっていますので、早期発見、早期治療、これが大切なポイントです。
統合失調症の原因と症状、なりやすい人について詳しく知りたい方はこちら
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、日中に突然強烈に眠くなる病気です。ただの睡眠不足による日中の眠気ではなく、夜はきちんと眠れているはずなのに、眠くなってしまいます。脳内の神経伝達物質「オレキシン」が不足してしまうために脳が睡眠状態へと促されます。
10~20代の発症が多く、13~16歳の思春期がピークとなります。男女差はありません。
ナルコレプシー 症状セルフチェック
「もしかしてナルコレプシー?」と思った人は、ナルコレプシーに現れる特徴的な症状をチェックしてみてください。
- 睡眠発作
食事中や散歩中などの通常では考えられないような状況でも耐え難い眠気を感じます。 - 自動症
眠ったままの状態で、起きているときのように普段から慣れた行動を数分間にわたって自動的に続ける症状です。 - 情動脱力発作
強い感情的な刺激が加わった興奮状態のときに、突然起こる脱力発作のことで、首と膝の力が抜けてしまい、ろれつが回らなくなってしまいます。 - 睡眠麻痺
主に入眠時に起こる症状です。眠っているときに体が動かなくなるいわゆる「金縛り」です。 - 入眠時幻覚
入眠してすぐに夢を見ている状態となり、人の声や気配を感じたりする症状です。
残念ながら、ナルコレプシーの根治的な治療は現時点では存在しません。しかし、対症的な治療を続けることで、強い眠気などの症状を改善することができます。治療は「薬」と「生活習慣の見直し」です。