統合失調症とは?

統合失調症は、およそ100人に1人がかかるといわれています。特に、10代後半~30代といった若い世代に発症しやすいという特徴があります。統合失調症は決して珍しい病気ではないのですが、どのような病気なのかがあまり知られていないのが現状です。
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統合失調症は、およそ100人に1人がかかるといわれています。特に、10代後半~30代といった若い世代に発症しやすいという特徴があります。統合失調症は決して珍しい病気ではないのですが、どのような病気なのかがあまり知られていないのが現状です。
統合失調症は1つの病気ではなく、症状や経過が似たさまざまな精神疾患が集まって起こる症候群だと考えられています。代表的な症状には陽性症状、陰性症状、認知機能の軽度の障害などがあります。
私たちの脳では神経伝達物質のドパミンが目や耳から受け取った情報を伝達しています。しかし、統合失調症では部分的にドパミンの伝達が過剰になり、神経の働きが過敏になって、幻覚や妄想などの陽性症状が現れます。
「陽性」とは、本来"ない"はずのものが "ある"ということです。陽性症状には、主に幻覚と妄想があります。
幻覚は、聞こえないはずの声が聞こえる幻聴、見えないはずのものが見える幻視、におわないはずのものがにおう幻嗅(げんきゅう)[※幻臭(けんしゅう)ともいう]などがあります。
特に幻聴は正常かどうか区別がつきにくいです。そのため、病気の症状なのか現実なのかわからなく、病気だという認識がなかなかつきにくいという特徴があります。妄想とは現実的ではない考えを信じて、そのことに心がとらわれてしまうことです。自分と外界との関わりの中で妄想を持つため、社会的な背景や文化的な特色などの影響を受けることもあります。
統合失調症により部分的にドパミンの伝達が低下してしまうと、心の動きや感情表現が乏しくなる「陰性症状」が現れると考えられています。
「陰性」とは、ふだんは"ある"はずのものが "ない"ことを指します。陰性症状には、主に感情の平板化と意欲の低下があります。感情の平板化とは、外部からの刺激に対して、自然に起こるはずの喜怒哀楽の感情が起こりにくくなることをいいます。意欲の低下とは、服装や化粧、持ち物など身だしなみへの関心が低くなることです。
物忘れや集中力を欠くなどで日常生活に支障を来すことがあります。また失敗体験を繰り返すことで自信をなくしたり、大事な場面になると緊張して失敗するといったことがあります。
これまでさまざまな研究が行われてきましたが、今のところこれが統合失調症の原因だと言えるところまで至っていません。しかし、体質的な要因や環境的な要因、過剰なストレスが引き金となって起こることがあると指摘されています。
統合失調症の患者さんのほとんどは、「自分が病気だ」という認識はありません。幻視や幻聴などは、本人にとってはすべて本当のことに思えているからです。そのため、周囲の人が病気に気付くことが重要です。陽性症状が現れていれば気付きやすいのですが、できればその一歩手前で気付くことができるのが理想です。
一番のサインは、「これまでできていた普通のことができなくなる」ことです。「朝起きて身支度をする」「朝食を食べて学校に行く」「友達づきあいをする」などのことが急にできなくなり、ふさぎ込むようになったら、「病気の前兆かもしれない」ということを念頭に置いてください。
子どもが学校に行かなくなる原因はさまざまですが、統合失調症の可能性があることも知っておくと、対応がしやすくなるかもしれません。
サインに気付いたら、頭ごなしに否定したりせず、まずは話を聞きましょう。本人はこれまでできていたことができなくなり、つらく苦しい気持ちを抱えています。幻覚や妄想も、本人にとっては現実です。「そういう体験をしているのだ」と受け止めて、よく聞くことが大切です。
病気の前兆かもしれないと感じたら、家族だけで抱え込まずに、まずは担任の先生やスクールカウンセラー、全国の都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターなどに相談してみてください。
幻覚や妄想などの症状があれば、精神科の受診が勧められます。患者さんは受診を嫌がることも多いですが、「眠れない」「食欲がない」など体の不調を抱えていることが多く、症状のために「つらさ」を感じています。「体の不調や、そのつらさが心配だから、病院で相談してみよう」と伝えると、患者さんは受診しやすいようです。
この時期に適切な治療を受けることで、発症を遅らせたり、重症化を防ぐことが可能です。病気に対する正しい知識を身につけ、生活環境を整えたり、休息をとるなど日常生活での注意点の指導が行われます。
なるべく早い段階で、治療に入ることが、その後、改善に影響するということがアメリカの大規模な研究で分かっていますので、早期発見、早期治療、これが大切なポイントです。
統合失調症には病気の前兆が現れるリスク期があり、軽度の幻覚や妄想が起こることがあります。さらに、まとまりのない発言をしてしまうなど、社会生活に関わる機能が低下し、苦痛を感じるようになります。そのほかに、不眠や不安、抑うつなどの症状が出ることがあります。これらの症状が続くと、統合失調症をはじめとする精神疾患に移行する危険性が高まります。
夜眠れない、朝起きられない、不安やイライラの気持ちが長く続くなどの症状がある場合も注意が必要です。
この時期に適切な治療を受けることで、発症を遅らせたり、重症化を防ぐことが可能です。リスク期の段階では基本的には薬は使いません。病気に対する正しい知識を身につけ、生活環境を整えたり、休息をとるなど日常生活での注意点の指導が行われます。また、統合失調症の発症原因の1つに過剰なストレスがあるので、ストレスの対処法を身につけることも大切です。
詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年7月 号に掲載されています。