前立腺肥大症とは
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを囲み、精液の成分をつくるなどの働きをしています。
この前立腺が大きくなって尿道が狭くなり排尿障害を起こすのが前立腺肥大症です。
前立腺肥大症は、男性泌尿器の疾患のなかで最も患者数が多いと言われていて、40代頃から年齢とともに増えていきます。詳しいことは分かっていませんが、加齢とともに起こるホルモンバランスの変化や炎症などによって、次第に大きくなると考えられています。食事の欧米化なども原因の1つと言われています。
前立腺肥大症による症状は放置していても自然に治ることはありません。それどころか腎機能が低下する可能性もあり、注意が必要な病気です。
前立腺肥大症 どんな症状?
前立腺肥大症の症状は、「蓄尿症状」、「排尿症状」、「排尿後症状」と大きく3つに分けられます。蓄尿症状には、膀胱が尿をためる時に起こる症状で、トイレが近くなる頻尿や、尿意ががまんできない尿意切迫感があります。
排尿症状とは、前立腺が尿道を圧迫し尿が出にくくなる症状のことで、いきまないと尿が十分に出ない、尿が途中で途切れる、尿の勢いが弱いなどの症状があります。
排尿後症状には、尿のキレが悪い、排尿後の残尿感があります。
通常、次第にこれらの症状が強くなっていきますが、頻尿などの蓄尿症状が強い場合と、尿の出が悪い排尿症状・排尿後症状が強い場合があります。
前立腺肥大症の検査
日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は泌尿器科を受診してください。その症状が前立腺肥大症によるものかどうかを特定していきます。
まずは問診です。症状とその程度から重症度を判定します。そして、「超音波エコー」で大きさを確認します。「直腸診」で前立腺の形やしこりの有無を確認することもあります。「尿検査」では尿の成分や排尿の量や残尿の量などを調べます。「血液検査」(PSA検査)で前立腺がんの可能性なども調べます。
前立腺肥大症の治療法
治療ではまず薬物療法が行われます。薬にはいくつか種類があり、現在ある症状を緩和させるものと前立腺を小さくするものがあります。7割くらいの人が薬によって日常生活を支障なく過ごせるようになります。薬をやめると症状が戻る場合が多いので、基本的にはのみ続ける必要があります。
薬で改善しない場合には手術を検討します。従来の手術では「経尿道的前立腺切除術」と、「経尿道的前立腺核出術」「レーザー前立腺蒸散術」があります。いずれも尿道から内視鏡を入れて行う治療で、前立腺の肥大した部分を切り取る治療です。
経尿道的前立腺切除術「TURP」
経尿道的前立腺切除術「TURP」は、尿道から内視鏡を入れて、その先にある電気メスで前立腺を削りとる手術です。
経尿道的前立腺核出術「TUEB」
経尿道的前立腺核出術「TUEB」は、前立腺をくり抜く手術です。主に電気メスを使いますが、レーザーを使用することもあります。
レーザー前立腺蒸散術
レーザー前立腺蒸散術は、尿道から挿入した内視鏡に光ファイバーを通し、レーザーを照射して前立腺を蒸散させます。
最新手術① 経尿道的水蒸気治療
2022年に保険適用となった「経尿道的水蒸気治療」では、大きくなった前立腺の組織に生理食塩水の水蒸気を当てて壊死させ小さくします。全身麻酔をかけたあと、尿道から専用の内視鏡を入れたら、前立腺に103度の水蒸気を当てます。水蒸気を当てる時間は1回あたり9秒。これを4回から5回ほど繰り返して、手術は完了です。手術全体の時間は30分以内と短く、前立腺を切り取らないため出血など体への負担が少ないことが特徴です。
最新手術② 経尿道的前立腺つり上げ術
2022年に保険適用となった「経尿道的前立腺吊り上げ術」は、前立腺を切除せずに、特殊な糸とその両端に取り付けられた長さ8mmの医療器具で前立腺を締め上げる手術です。まず、器具をつけた特殊な内視鏡をモニターで確認しながら尿道に挿入します。この器具と糸で左右の前立腺を締め上げ、尿の通り道を広げます。手術にかける時間は1時間程度です。
最新手術③ アクアビームロボットシステム
2023年に保険適用となった「アクアビームロボットシステム」はロボットが自動で前立腺を切り取る手術です。使われるのは「生理食塩水」。高速で噴射し、前立腺を切除します。まずは全身麻酔をかけたあとに、医師が前立腺をエコーで確認しながら、切除する範囲をロボットにマッピングします。準備が完了したら、1回あたり5分間の噴射を2回繰り返します。その間、医師は水の強さの調整などを行うだけです。仕上げでは医師が電気メスを使って前立腺の形を整えたり、止血をする必要がありますが、出血は比較的少ないと言われています。手術全体にかかる時間は1時間程度です。