都内で会社を経営するAさん(70歳・男性)に、去年9月、とんでもない事態が降りかかりました。仲間との旅行でお酒をかなり飲んで帰ってきた翌朝のことでした。朝起きてすぐトイレへ行くと、どうしても尿が出なくなってしまったのです。
「したいのに出ないのはなぜか。理由が分からず恐怖を感じました。」
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都内で会社を経営するAさん(70歳・男性)に、去年9月、とんでもない事態が降りかかりました。仲間との旅行でお酒をかなり飲んで帰ってきた翌朝のことでした。朝起きてすぐトイレへ行くと、どうしても尿が出なくなってしまったのです。
「したいのに出ないのはなぜか。理由が分からず恐怖を感じました。」
不安になったAさんは、すぐに泌尿器科へ行きました。診断は「前立腺肥大症」。
尿が出なくなったのは、大きくなった前立腺が尿道を圧迫して尿道が閉じてしまい、尿が全く出なくなる「尿閉」という状態になっていたからです。もともと前立腺肥大症があったAさん。さらに大量のアルコールを摂取したことにより前立腺がむくみ、尿閉を起こしてしまったのです。
尿は、いらない老廃物を体外に排出するためのものですが、「尿閉」になるとそれができなくなり、やがて腎臓からぼうこうにかけての尿の通り道が「交通渋滞」のような状態になり、腎臓が腫れてきます。そのまま長く放置すると、水腎症や腎盂腎炎(じんうじんえん)などになって、命に危険が及ぶこともあります。
Aさんがまず受けた治療は「導尿」です。直径5ミリメートルほどのやわらかい管「カテーテル」を、閉じている尿道から入れ、ぼうこうにたまっていた尿を外に全部出しました。
薬による治療も始めました。しかし、それ以降も尿の出は良くならず、ぼうこうに尿がたまる度に腹痛を感じるようになりました。そして、3週間後には2度目の尿閉が起きてしまったのです。「これは何か様子がおかしい、普通の体じゃない感じでした。セカンドオピニオンとして、違う病院で診てもらった方がいいのではないかと思いました。」
Aさんは、別の泌尿器科で前立腺を改めて詳しく検査しました。すると、Aさんの前立腺は肥大が進行し、通常の大きさの10倍にまでなっていたのです。
「尿閉の恐怖があったので、薬をのみ続けなくてはなりません。しかし、薬をのみ続けても、また尿閉になる可能性があるなら行動が制限されてしまいます。旅行にも行けないし、仕事の途中で尿閉になると嫌だなと思いました。」
そこで、Aさんは手術を決断しました。全身麻酔をしたのち、尿道から電気メスを入れ、肥大した前立腺の内側をくり抜き、吸い出す「TUEB(経尿道的前立腺核出術)」と呼ばれる手術でした。この手術にかかる時間は、およそ2時間。入院期間は5日間です。
手術のおかげで、中橋さんの尿閉の心配はなくなりました。さらに、尿の出も...
「普通に排尿すると、勢いよくサッと出てあっという間に終わります。こんな勢いよくでるのか!という感じです。」