凍結肩(五十肩)の症状、診断、治療、注意すべきこと

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五十肩(凍結肩)肩・首が痛い首・肩手・腕関節

凍結肩とは?

肩が痛くて腕が上がらない症状のことを、一般に「五十肩」と呼びますが、実は、五十肩というのは、正確な病名ではありません。明らかなきっかけがないのに肩の動き(可動域)に制限があり、痛みがある症状は、正しくは「凍結肩」と呼ばれる病気です。世界的な病名は「フローズン・ショルダー」で、これを直訳して凍結肩と呼ばれます。関節が凍結したかのように硬くなり、動きにくくなることから、そのように名付けられたと考えられます。

凍結肩とは

凍結肩と間違われやすい病気

40〜50代頃に発症しやすい主な肩関節周りの病気の中で、一番多いとされているのが凍結肩です。人口の2〜5%が発症すると報告されています。1)凍結肩と間違われやすいものとして、けん板断裂石灰性けん炎変形性肩関節症などがあります。これらの病気は重複して起こることもあります。医師であっても、問診や触診だけではこれらの病気の判別は難しく、画像診断をしないと分からない場合もしばしばあります。

1)Lorbach o,et al.J Shoulder Elbow Surg.2010;2:172-9

肩関節まわりの主な病気

凍結肩の診断

凍結肩と診断するには、石灰性けん炎などではないことをX線検査で確認するとともに、肩の可動域を確認します。凍結肩の典型的な可動域制限は、「上下の屈曲が100度未満、前腕だけを水平に前に出して外側に回す(下垂位外旋、下記の写真参考)角度が10度未満、帯を結ぶように後ろに手を回す動作(結滞)が第5腰椎未満(ベルトの位置より下)」2)とされています。

2)Itoi E,et al.Arthroscopy.2016;32:1402-14

肩の可動域を確認した凍結肩の診断

よくある誤解

凍結肩(五十肩)にはいくつかの誤解があります。そのひとつが「時間がたてば自然に治る」というものです。確かに以前は「自然に治る」とされていましたが、最近ではいろいろな報告から、「適切な治療をしていても、完全に治るのは50% 3)で、40%の人には少し可動域制限が残る4)」とされています。少し可動域制限が残っていても気にせずに生活している人がいますが、こうした人がこの40%に含まれます。そして、残りの10%の人は重症で、可動域制限が強く、日常生活動作に支障を来している人です。凍結肩(五十肩)のもうひとつの誤解が「動かさないと固まってしまうから積極的に動かした方がよい」というもの。全く間違っているわけではありませんが、肩を動かしてはいけない時期、積極的に動かした方がよい時期、と時期によって対処法が異なります。痛みがある時期に無理に動かすと悪化してしまいますので、痛みがある時期に動かすのはやめてください。

3)Shaffer B,et al.J Bone Joint Surg Am.1992;74:738-46
4)Hand C,et al.J Shoulder Elbow Surg.2008;17:231-6.

凍結肩のよくある誤解

凍結肩の病期

凍結肩の進行は3つの時期に分かれています。最初は「炎症期」といって強い痛みを伴う時期です。夜寝ている時に痛みが起こり、睡眠障害を起こす事があります。炎症が落ち着いて痛みが軽くなる時期が「拘縮期」です。痛みは軽くなっているものの、肩が固まって動かしにくくなります。炎症期と拘縮期に適切な治療を続けることで、動きも改善されて「回復期」となります。それぞれの時期で適切な治療をしていれば、早ければ2〜3か月で改善が期待できますが、治療をしなかったり間違った対処をしていると1年以上続くことも多いので注意が必要です。

凍結肩の進行と治療

凍結肩の治療

炎症期、拘縮期、回復期でそれぞれ適切な治療法があります。
痛みが強い炎症期は、痛みをやわらげるために薬で治療をすることが大切です。薬を使いたくないからと痛みを我慢すると、肩の周囲の筋肉が痛みに反応して縮み、痛みの悪循環を引き起こしてしまいます。主な薬としては消炎鎮痛薬のNSAIDsを使いますが、痛みが非常に強いときは、もっと強い鎮痛薬を用いることもあります。また、ステロイドの内服や肩にステロイドを注入する治療を行うこともあります。ただし、ステロイドは一時的に血糖値を上昇させる作用があるので、糖尿病の方が使う場合には注意が必要です。
拘縮期は、固まった関節を動かすことが効果的なので、運動やストレッチを行いますが、関節の動きをよくするために、ヒアルロン酸の関節内注入を行うこともあります。
回復期は、関節が動かしやすくなっていく時期ですが、完全によくなるまで運動を続けていただきます。

凍結肩 炎症期の治療

重症の場合は手術またはマニピュレーション

運動療法をしていても、拘縮期が1年もしくはそれ以上続いている場合、または日常動作に支障をきたす場合には、手術、またはマニピュレーションという治療を検討します。手術は、関節鏡を用いて行う手術が主に行われています。関節包が癒着している部分に治療器具を挿入し、癒着している関節包を骨から剥がす治療になります。マニピュレーションは、動きが硬くなった関節を手でほぐして動きやすくする治療法で、医師が行います。固まって縮み、癒着している関節包を外力によって骨から剥がします。

マニピュレーションの注意

マニピュレーションは全ての人が受けられる治療ではありません。拘縮が非常に強く固まって動かないような場合は、関節鏡を用いた手術のほうが適しています。マニピュレーションは、外力を加えて行うため、ほかの合併症が起こる危険があります。骨折や神経損傷、けん板断裂などです。行いたい場合は、医師とよく相談した上で検討することが大切です。特に骨粗しょう症のある人は、骨折の危険を伴うので注意が必要です。マニピュレーションを行った後は、理学療法士による適切なリハビリが必要になるため、リハビリに継続的に通えるような環境の人でないと行うことができません。

マニピュレーション

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2023年8月 号に掲載されています。

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