冬のお風呂・サウナが危険!死亡事故につながるヒートショックとは?

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心筋梗塞脳梗塞不整脈めまいがする頭が痛い胸・心臓脳・神経

温暖な地域でも家が寒くて危険?「冬の室温&死亡増加率」全国マップ(クローズアップ現代)

高齢者の入浴中の死亡事故が増加している

高齢者の浴槽内での死亡者数と発生月別死亡者数のグラフ

厚生労働省「人口動態調査(2019)」を基に消費者庁作成

入浴中の事故でもっとも命にかかわるのが「溺死」です。とくに高齢者に多く(65歳以上が80%以上を占める)、浴槽内での高齢者の死亡者数は2019年には4,900人。2009年と比較すると約10年で約1.5倍に増加しています。また、死亡事故が起きているのは冬場。1月、2月がとても多くなっています。高齢者に事故が多いのは、若ければ血圧が大きく変動してもしなやかな血管なので血圧が一定の範囲におさまりますが、高齢になると血管が硬くなり、急激な血圧変動に血管が対応できないからだと考えられています。

ヒートショックとは

暖かい場所と寒い場所においての血圧の変化
ヒートショック 注意が必要な人

こうした入浴の事故の原因とされているのが「ヒートショック」です。ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ、逆に寒い場所から暖かい場所へ移動するなど、急激な温度変化が影響し、血圧や心拍数が大きく変化して体に悪影響が及ぶことです。暖かい室内から寒い脱衣所や浴室へ移動すると、寒さによる刺激により交感神経が刺激され、血圧は上昇します。心筋梗塞や脳梗塞、不整脈のリスクが高まります。一方、浴槽でお湯につかると血管は拡張、血圧が急降下します。すると体の中で一番高い位置にある脳に血液がきちんと回らなくなり、いわゆる脳貧血・失神を起こしてしまうのです。最悪の場合、浴槽の中で意識を失って、そのままおぼれてしてしまうこともあります。
ヒートショックに注意が必要なのは、「心臓や脳、血管に持病がある」「高血圧、糖尿病、脂質異常症や不整脈がある」「浴室・脱衣所が極端に寒い。暖房器具がない」「一番風呂に入ることが多い」「飲食・飲酒後に入浴する」「熱めのお風呂で長湯するのが好き」などに当てはまる人です。

ヒートショック対策

ヒートショック対策

入浴前に脱衣所は暖房器具などで暖めておき、温度差をなくすことが重要です。また、食後低血圧と言って、食後は血圧が下がりやすくなる傾向があるので食後すぐの入浴は避けましょう。また、飲酒をするなら、入浴後にするようにしましょう。浴槽のふたをあけたり、シャワーでお湯張りすると蒸気で浴室が温まり、温度差をなくすことができます。
入る前にコップ1杯の水を飲み、十分に水分補給する。脱水による血圧低下を防ぐことができます。
浴槽に入る前に、手足などの末梢からかけ湯をします。少しずつ体を温めることで、血圧の急降下を防ぐことができます。また長時間の入浴は体に負担を与えます。入浴はほんのり汗ばむ程度にしましょう。浴槽から出る際は、急に立ち上がらずゆっくりと出ることも大事です。高齢者は手すりを付けることなども検討してください。
高齢者では、家族の見守りも重要です。入浴前に周囲の方に一声掛けてから入浴するようにしましょう。ひとり暮らしの高齢者は電話などで安全を確認してもらうなどの工夫を行うとよいでしょう。また同居者は、高齢者の入浴中は動向に注意し、長時間入浴している、音がしない、突然大きな音がした、などの異常に気付いた場合には、ためらわずに声をかけるようにします。

お風呂でぐったりしているのを見つけたら

お風呂でぐったりしているのを見つけたら

脱力した人の体は非常に重く、体は濡れていて裸なのでつかむことが難しいです。お風呂でぐったりしているのを見つけたら浴槽の栓を抜き、排水します。これで、溺れるのを防ぐことができます。また、他の家族がいる場合はすぐに救急車を呼んでもらうことも大事です。
つぎに意識があるか、呼吸しているか、脈が触れるかを確認します。脈が触れない、呼吸が確認できない場合は、救急車が到着するまで胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行ってください。浴槽から出せない場合は浴槽の中で胸骨圧迫を続けてください。また、最近は、人工呼吸は省略してもいいということになっています。いつなんどき、家族や知り合いが事故にあうかわかりません。いざというときのために、救命講習を受けるなど、応急手当を覚えておくことが重要です。

動画で解説 胸骨圧迫の方法についてはこちら

サウナもヒートショックに注意!

サウナもヒートショックに注意

水風呂の強烈な寒冷刺激によって血圧が急上昇して交感神経が反応し、頻脈になることがあります。また、寒冷刺激に長くさらされると脈が遅くなる徐脈が発生することも。頻脈・徐脈から失神し、転倒よる出血や骨折を起こすことも多いです。とくに高齢者では血液をさらさらにするお薬をのんでいる人も多く、出血には注意が必要です。サウナなどで転倒した場合は頭から出血するケースが多く、タオルなどで傷口を押さえる圧迫止血を行います。
サウナに入るときの注意としては「飲酒後はやめましょう」「休憩の時間を作り、十分に水分を補給します」「高血圧や心臓・脳などに持病がある人はかかりつけ医に相談して利用するようにしましょう。」

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ニュース「入浴・サウナ ここに注意!」