災害時の糖尿病の対処法について(食事のとり方やお薬の備え)

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セルフケア・対処糖尿病動悸(どうき)がする手足が冷えるけいれん全身血液皮膚

災害が起きると、食事の内容や時間などに制約があったり、薬が手に入りにくくなったりして、血糖コントロールが難しくなることがあります。事前の備えや災害時の糖尿病の対処法を紹介します。

災害時に糖尿病が悪化する原因

災害時に糖尿病が悪化する原因

糖質が多く、不規則な食事

非常時の食事は、おにぎりやカップ麺、菓子パンなど高糖質や高塩分のものに偏りがちです。また、避難所では食事の時間が不規則なることがあります。そのため、血糖コントロールが難しくなり、糖尿病が悪化するおそれがあります。

過度のストレス

災害で過度のストレスがかかると、血糖値が上昇しやすくなります。

薬の不足

手持ちの薬がなくなってしまうと、血糖値が上昇し、脱水が起こって腎障害や脳梗塞につながったりします。その結果、命に関わることもあります。

災害時には糖尿病が悪化しやすくなる

東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市の糖尿病の患者さんを対象に行われた調査によると、糖尿病の状態を判断する指標であるヘモグロビンA1cの値が、震災4か月後の時点で平均5.9%から平均6.1%に上昇しました。特に津波の被害に遭った地域では、平均7.0%まで大幅に上昇していました*。(当時の基準値 5.8%未満)
*Ogawa S, et al. BMJ. (2012)

災害に備える

薬の携帯や持ち出し

薬の携帯や持ち出し

糖尿病がある場合は災害に備えて、外出するときは、3日分程度の薬を持ち歩くようにしましょう。
避難生活では、状況によっては薬が手に入るまでに時間がかかることがあるため、1週間分の薬をポーチなどに入れ、自宅の決まった場所に置いておくと、避難するときに持ち出しやすくなります。また、仕事をしている人は、職場にも1週間分の薬を用意しておきましょう。

お薬手帳の活用

東日本大震災の際には、自分ののんでいる薬の名前をよく覚えていなかったり、錠剤の色などの漠然とした情報しか把握していない患者さんが少なくありませんでした。そんなときに、お薬手帳を持っていたり、お薬手帳のコピーを財布などに入れておいたり、携帯電話やスマートフォンで写真に撮っておくなどすれば、その人が使っている薬を医療スタッフが確認できます。

最近では、お薬手帳の情報を取り込めるスマートフォンのアプリもあるので、それを活用するのもよいでしょう。

お薬手帳の情報を取り込めるスマートフォンのアプリ

被災時の食事のとり方

災害に遭ったときは、生き延びることが最優先です。食べられるときには、糖質が多い食べ物でも食べてください。
ただし、少し落ち着いてきたら、可能な範囲でよいので、「菓子パンの甘い部分を食べない」「カップ麺の汁は残す」などの工夫をするとよいでしょう。

薬の使い方に注意

東日本大震災では、1日2食だったり、食事の量が少なかったりするなかで、ふだんと同じ量のインスリン製剤を自己注射して血糖値が下がり過ぎる「低血糖」に陥ったケースもありました。十分な食事をとることができないときに使ってよい薬と使ってはいけない薬などの情報を、あらかじめ担当医に確認して、お薬手帳などに記入しておくようにしましょう。

シックデイへの対策

糖尿病の人が、発熱や下痢、腹痛などによって食事をとることができなくなる場合があり、この状態を「シックデイ」といいます。シックデイには、体内の炎症などによって、血糖値が急上昇します。非常時には、ストレスや環境の変化でシックデイが生じやすいとされています。

シックデイの対策

  1. 水分を十分にとり、脱水を防ぐ
  2. 食欲がなくてもできるだけ炭水化物(おかゆやスープ)などをとる
  3. 薬の使い方に注意する。食事の状況に合わせて薬を調整することが大切!

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年5月 号に掲載されています。

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    災害から命を守るために「糖尿病」