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広島 全国男子駅伝 ひろしま男子駅伝 たすき込められた思い

  • 2024年01月30日

 

今月21日に行われた都道府県対抗の「全国男子駅伝」。47チームのランナーが新春の広島を駆け抜けました。選手や監督のことばから、「たすきに込められた思い」や「大会の意義」を感じることができました。

(広島放送局アナウンサー 武本大樹)

強さのひみつ

勝つことが宿命ではなくて、勝てる喜びを味わえるのが長野県チームだよ

長野の高見澤勝監督が毎年、ミーティングで語りかけることばです。長野チームは正月明け、中高生に加え、箱根駅伝を終えた大学生なども含めた全員が参加する合宿を続けています。3区を走った伊藤大志選手(早稲田大3年)は「お風呂で中高生と積極的に話したり、部屋に来いよと言って一緒に話をしてあげたり」と話します。高見澤監督は「この駅伝はただ勝つだけが目的ではない。普及や強化も目的のひとつ。失敗を恐れずにやってもらいたいし、仮に結果を残せなくても、また次のカテゴリーでチャンスがある。チャンスは常に続く駅伝なので」と大会の意義を語りました。

何とか恩返ししたかった

3連覇、10回目の優勝のフィニッシュテープを切った、鈴木芽吹選手(駒沢大4年)。佐久長聖高校の3年間を長野で過ごしました。優勝インタビューでは「高校の時から長野チームで1回も走ることができなくて、何とか学生のうちに走って恩返ししたいという思いがあった。ラストチャンスだったので本当にうれしいです。ありがとうございます」と第二の故郷への感謝を口にしました。箱根駅伝で優勝に届かなかった鈴木選手を迎えた長野チームは「芽吹を男にしよう」と一致団結したと言います。

ふるさとへ

本当に感謝の一言

眼鏡がトレードマークの高校生が1区で快走しました。区間新記録で区間賞を獲得した川原琉人選手。長崎・五島列島のひとつ、福江島にある五島南高校の3年生です。強豪校の選手を引き離しての区間賞にも落ち着いた様子で、「支えてくれた地域の人たちに恩返しができた。安心しています」と開口一番。陸上を始めた時からのコーチ、祖父の高弘さんへの思いを聞かれると、「小学校、中学校、高校と面倒を見てもらった。本当に感謝の一言です」とようやく表情が緩みました。

塩尻は広島では走る

3区にはリオ五輪代表で、1万メートル日本記録保持者の塩尻和也選手が群馬チームで出走。「地元・群馬の代表として走れる貴重な機会」と8回目の出場です。奥谷亘監督は「自分が何とかしますと言ってくれている。塩尻は広島では走ります」と信頼を寄せていました。塩尻選手は15人抜きの快走。オレンジと黄色が映える群馬のユニフォームがことしも安芸路に映えました。

伊豫田、伊豫田 舟入、舟入

千葉のアンカーを務めた伊豫田達弥選手は、広島市立舟入高校の出身です。千葉を活動拠点にする富士通に所属しています。レースの後、伊豫田選手は順位をひとつ下げてしまったことに悔しさをにじませながらも「沿道から伊豫田、伊豫田。舟入、舟入と。もう多すぎてわからないくらいの知り合いがいた。楽しい試合でした」と最後は笑顔でした。

笑顔でタスキリレーしよう

47チーム、最後のフィニッシュテープを切った石川の福村拳太選手。チームメイトとは「笑顔でたすきリレーしよう」と決めて走りました。広島の街を走る中で、「石川」という文字や声援がたくさん飛び込んできたことについては「本当にうれしかったです。途切れることなく石川頑張れという声があったので。本当に100%の力を出し切れました」と振り返りました。

ベテランたちの思い

皆さんに元気をお届けできる年賀状

「ミスター男子駅伝」、鳥取の岡本直己選手はことしも健在。15年ぶりにアンカーを務めました。今月娘が生まれた39歳はこの駅伝の存在をいつもこう語ります。

石川代表であることを誇りに ひとつでも前を追って頑張りました

岡本選手を超える40歳で出場したのは、石川の中村高洋選手。石川県立小松高校の出身で、現在は京セラ鹿児島に所属し、フルタイムで仕事をしながら競技を続けています。大会2日前の夜まで鹿児島で仕事をし、その日の夜遅くに広島入りしてレースに臨みました。インタビュアーの質問が終わり切る前に、故郷への思いを口にしようとした姿に人柄のすべてがにじんでいました。

未来へ

箱根や世界に羽ばたく人たちのきっかけになってほしいし、見せていきたい

千葉の3区を走った篠原倖太朗選手(駒沢大3年)。去年、ハーフマラソンの日本学生記録を更新し、将来を嘱望される逸材です。千葉県立富里高校出身の篠原選手は「高校があまり強くないので駅伝で全国大会は厳しかった。悔しい思いもしたので、そういう人でもここまで来られるのを見せていきたい」と語りました。駒澤大学では鈴木芽吹選手から新キャプテンを受け継ぎます。

誰にでもチャンスはある

熊本のアンカーは赤﨑暁選手。パリ五輪マラソン代表に内定しています。「後輩たちに少しでもプラスになるものを伝えたい。自分はマラソンの持ちタイムが良くなかったのに、MGCでオリンピック代表を勝ち取れた。誰にでもチャンスがあることを知った上で、一日一日努力していってほしい」と郷里のことばのイントネーションで語りました。

監督たちの思い

広島もいいですよね 僕は大好きです

全国高校駅伝、全国女子駅伝が開催される駅伝王国の京都。男子の監督を務めるのが中井祥太監督です。中井監督は毎年、中高生を連れて年明けに広島に合宿にやってきます。「最初は私だけあいさつ回りに日帰りで。(中継所近くの)選手の待機場所を飛び込みでお願いしていた。一年に一度お世話になる人たち。感謝です」と京都土産の菓子箱を大事そうに持って話しました。

大阪らしく笑いもありで、この駅伝を盛り上げたい

いつも笑顔の大阪・鈴木直監督。大阪チームには明るい雰囲気が満ちています。3区で葛西潤選手が19年ぶりに区間記録を更新。大いに安芸路を盛り上げました。来年はまた、「悲願」という優勝に挑みます。

とにかく開催していただくことに感謝ですね

「東日本大震災の時を思い出しましてね」と切り出したのは、宮城の齋康浩監督。2011年は女子チームのスタッフを務めていました。「夏くらいまでチーム編成ができるのかと不安で仕方なかった。精一杯つなごうよと声をかけて臨んだのが翌年の都道府県対抗駅伝でした」と石川チームの思いを推し量りました。「宮城県人会の方々にはどんな時も支えていただく。必ず別れる時には涙を流してしまうくらいなんですよ。私は涙もろいので」と少し声を詰まらせながら話しました。

大事なのは「今あることを一生懸命すること」

質問をじっと聞いてから答える兵庫の山口哲監督。阪神・淡路大震災の翌年に始まったこの大会での入賞を毎年のスローガンにしています。「勇気を与えるんやない。兵庫もそういう時があったけど、今これだけ走っている子らがいますよという発信。彼らの親の世代が復興のために頑張ったからこの子らがいる。それは僕たちや東北のチームが伝えられること。だから彼らは好きなことを一生懸命やる。それに越したことはないんです」と山口監督。「この子たちには背負わないでほしい。でも、(今回の地震のことも)知っておいてほしい」と選手たちの練習を見つめながら話しました。

胸を張って 思い切って

大会テーマ曲、ポルノグラフィティの「Rainbow」には、「弱き我が心よ 共にまた行こう 胸を張って 思い切って 強くなるためのハイペースで」でという歌詞があります。この駅伝を伝えるために全国から集まったスタッフは総勢250人。大会前夜、広島局の鳥山圭輔アナウンサーがこの歌詞を引用し、「緊張感のある場面が多くありますが、準備してきたものを胸を張って思い切って表現して、良い放送を作り上げていきましょう」と声出しを行いました。来年は、30回となる節目の大会。私たちは来年も皆さんをお待ちしています。

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