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青森に「なまはげ」はいるの?

執筆者砂川侑花(記者)
2023年05月10日 (水)

青森に「なまはげ」はいるの?

視聴者の皆さんから寄せられた質問などに答えるナノコエ。
今回は平内町の中学生・澤田裕心さんから質問をいただきました。

質問「青森になまはげはいないの?」

「なまはげ」というと、このイメージですよね。

なまはげイメージ

秋田県の男鹿半島に伝わる「なまはげ」は、大みそかの夜に地域の家々をまわって災いを払い、豊作や豊漁を祈願する行事のことです。

NHK青森放送局にも青森県出身の人たちが働いていますが、青森の「なまはげ」の存在を知っている人には出会えませんでした。

そこで、まずは詳しい専門家に話を聞いてみることにしました!

青森になまはげはいた!?

まず話を聞いたのは、秋田県出身で「なまはげ」などの民俗学が専門の國學院大學観光まちづくり学部 石垣悟准教授です。

青森に「なまはげ」がいるか早速聞いてみると、次のような答えが返ってきました。

國學院大學 石垣 悟 准教授
「残念ながら今現時点で行っている行事はないようですけれど、今のむつ市の大畑町赤川で『チャホシ』という行事が行われていたことや、風間浦村蛇浦というところで『メンコズ』という行事が行われていたことが報告で分かっています」。

記録があるというのは下北半島の2つの地区です。

風間浦村の蛇浦地区とむつ市大畑町の赤川地区の場所

取材を進めると30年以上前に県の郷土館がまとめた風間浦村蛇浦地区に関する資料に「メンコズ」について詳しく書かれていることがわかりました。

蛇浦の民俗

資料によると、面をかぶり包丁とバケツを持った人が、「泣く子どもはいないか」などと子どものいる家を訪れたといいます。

絵解き:メンコズを再現した写真

当時使われたという面の写真も残っていました。

メンコズの面

面は一見すると「ひょっとこ」のようにも見えますね?

こうした『面』をかぶっていたため、『メンコズ』という名前で呼ばれていたそうです。

現地で話を聞いてみると

蛇浦地区に暮らす人たちは果たして「メンコズ」を覚えているのか、面の写真を持って、現地を訪れることにしました。

漁協の人と砂川(記者)

漁港にいた人たちに面の写真を見せて尋ねてみると?

漁協の人
「わかんない。メンコか?」。

面は知らないみたいですね。

でも「メンコズ」と聞いてみると。

漁協の人
「メンコズ…?メンコズ!メンコズは聞いたことある!怖いものが来るイメージだな。『うわぁメンコズだ。メンコズ来た来た』っていう感じ」。

他の住民にも聞いてみました。

聞き込み中の様子

面はわかりませんでしたが、「メンコズ」というと。

住民
「メンコズは聞いたことがある。メンコズっていうのは今でいうとおばけみたいなもの。子どもが泣けば、そういうのが来るよって言われる。なまはげみたいな感じのもの」。

地区の人は「メンコズ」という名前自体は知っているようですが、行事を経験した人にはなかなか出会えません。

地区の皆さんの協力を得て、なんとか行事を経験した人にたどり着きました。

生まれも育ちも蛇浦地区。92歳の山本良子さん

生まれも育ちも風間浦村蛇浦地区。92歳の山本良子さんです。

包丁持ち再現する山本さん

山本さんの記憶では、毎年1月に、面をかぶり出刃包丁にバケツを持った近所の人が子どものいる家を訪れていたといいます。

山本良子さん
「『言うこときかねワラシいねぇか(言うことを聞かない子どもはいないか)』っていって家に入ってくるの。昔ここでは「なまはげ」とは言わず、「メンコズ」って言ったの」。

山本さんが30歳くらいの頃、子どもが言うことを聞かないため、近所の人に「メンコズ」として家に来るよう頼んでいたといいます。

山本良子さん
「怖がっていたよ。みんな親に抱きつくの。『言うことを聞くからどこかへ行ってくれ』っていうの」。

理由はよくわかっていませんが、行事そのものはおそらく60年ぐらい前に途絶えてしまったといいます。しかし、その後も「メンコズ」は親が子を戒める際に使われてきたそうです。
だから地区に住む60代や70代の人もその存在を知っていたんですね。

青森の「なまはげ」として地元の人々の記憶に残る「メンコズ」。
石垣准教授によると、「メンコズ」と同じく「なまはげ」と似た文化は本州に点在していて、日本海側は石川県から北に、太平洋側は岩手県から北に存在していたということです。

國學院大學 石垣 悟 准教授
「季節や年の変わり目に、異界から神様のようなものを迎え、悪いものを払ってもらって幸福をもらうというような文化が日本に古くからあったということがわかります。それを非常によく演出している行事が『なまはげ』や『メンコズ』のような文化なんです」。

取材後記

「なまはげ」は男性が担っていますが、今回の取材では、「メンコズ」は男女両方が担っていたことや、地区に暮らす人たちの記憶では行事が戦後しばらく続いていたことなど、県立郷土館の資料に書かれていない話を聞くことができました。「地方の民俗は基本的に口頭伝承なので、現地に調査に行かないとわからない」という民俗学の面白さを改めて実感しました。
記者としても実際に足を使って、県民の皆さんのさまざまな声を取材していきたいと思っています。

砂川記者

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