北朝鮮“ミサイル”領域内落下可能性なし Jアラートも

防衛省は4月13日朝、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射されたと発表しました。政府は、発射されたミサイルのうち1つが北海道周辺に落下するとみられると発表しましたが、その後、落下の可能性がなくなったと改めて発表しました。防衛省によりますと、発射されたのは少なくとも1発のICBM=大陸間弾道ミサイル級の可能性があるもので、日本の領域内への落下は確認されていないということです。

松野官房長官は13日午前の記者会見でJアラートを発出したことは適切だったのかどうか問われたのに対し「結果的にわが国領域への落下の可能性はなくなったことが確認されたが、Jアラートの役割にかんがみれば、発出判断そのものは適切であったと考えている」と述べました。

韓国軍の関係者は、今回の発射について、迅速に発射できる固体燃料式の新型のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験だった可能性も含めて分析を進めていることを明らかにしました。

防衛省は13日午前7時26分、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射されたと発表しました。政府は午前7時56分、エムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信し、「先ほど発射されたミサイルが午前8時ごろ、北海道周辺に落下するものとみられます。北海道においては直ちに建物の中や地下に避難して下さい」と伝えました。

しかし午前8時16分、政府はエムネットで新たに情報を発信し「本日7時55分にJアラート、7時56分にエムネットにて北朝鮮から発射されたミサイルのうち1つが北海道周辺に落下するものとみられるとして発表しました。その後、情報を確認したところ当該ミサイルについては北海道及び、その周辺への落下の可能性がなくなったことが確認されましたので訂正します」と改めて発表しました。

防衛省も13日午前8時45分「我が国領域に落下する可能性があるものとして探知し、北海道に落下する可能性のあったミサイルについては、我が国領域への落下の可能性は無くなったことが確認されました。詳細は分析中です」と発表しました。

その後、防衛省は、北朝鮮が13日午前7時22分ごろ、内陸部から少なくとも1発のICBM=大陸間弾道ミサイル級の可能性のあるものを高い角度で東の方向に発射したとみられると発表しました。日本の領域内への落下やEEZ=排他的経済水域内への飛来は確認されていないということです。

防衛省が情報の確認を進めるとともに詳しいいきさつを調べています。

岸田首相「領域内に落下していないこと確認」

岸田総理大臣は、午前9時ごろ総理大臣官邸に入った際、記者団に対し「わが国領域内に落下していないことは確認している。このあと詳しい報告を受けた上で、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開催したい」と述べました。

また、北朝鮮からの発射に関する情報を訂正したことをめぐり「Jアラートの件も含めて確認中だ。その報告をこれから受ける」と述べました。

浜田防衛相「1発のICBM 領域やEEZに落下なし」

浜田防衛大臣は、記者団に対し、北朝鮮が13日7時22分ごろ北朝鮮内陸部から少なくとも1発のICBM=大陸間弾道ミサイル級の可能性がある弾道ミサイルを高い角度で東方向に向けて発射したとみられると発表しました。

発射された弾道ミサイルは、日本の領域内への落下や日本のEEZ=排他的経済水域の飛来も確認されていないということです。

松野官房長官「Jアラート 発出判断そのものは適切」

松野官房長官は、午前の記者会見で「Jアラート=全国瞬時警報システムの情報を訂正したということではない。Jアラートを発出したが、状況を分析した結果、わが国領土に着弾する可能性がないということで改めて情報提供をしたところだ」と述べました。

また「探知の直後、北海道周辺に落下する可能性のあるものはレーダーから消失していたが、限られた探知の情報の中で、国民の安全を最優先する観点からJアラートを発出した。その後、当該ミサイルについて、わが国への飛来が確認されず、我が国領域への落下の可能性がなくなったことが確認された」と述べました。

Jアラートを発出したことは適切だったのかどうか問われたのに対し「ミサイルの落下物などの危険性を速やかに国民に知らせるというJアラートの役割にかんがみ、安全を最優先する観点から発出した」と述べました。その上で「結果的にわが国領域への落下の可能性はなくなったことが確認されたが、Jアラートの役割にかんがみれば、発出判断そのものは適切であったと考えている」と述べました。

弾道ミサイルの軌道について「詳細は防衛省が分析中だ」と述べました。破壊措置については「あらゆる事態を想定し必要な準備は行っていたが、防衛省が分析した結果、わが国の領域に落下するおそれがないと判断されたことから、破壊措置は実施しなかった」と述べました。

自民 萩生田政調会長「Jアラートめぐる混乱 経緯検証を」

自民党の萩生田政務調査会長は、党の政務調査会の会合で「たび重なるミサイル発射は、わが国の安全を脅かすものであり、厳しく非難する」と述べました。その上で「今回もJアラートをめぐる混乱が見られたが、国民の安全に関わる問題であり、経緯を検証し、改善すべき点があれば速やかに改善してもらいたい」と述べました。

立民 長妻政調会長「『警報慣れ』は困るので検証を」

立憲民主党の長妻政務調査会長は、13日の記者会見で、Jアラートを発出した政府の対応について「万が一のことも考えて幅広くアラートを出し、結果として空振ることは、一概に批判されるものではないが、どうしてそういうことが起こったのかについて、一定程度の情報開示をしてもらいたい。『警報慣れ』で、国民の意識が『どうせ来ないよ』となると困るので、検証してほしい」と述べました。

Jアラートやエムネットでの情報発信

弾道ミサイルの発射をめぐり、政府がJアラート=全国瞬時警報システムや、エムネット=緊急情報ネットワークシステムで情報を発信したのは、今回で7回目です。

このうち前回の去年11月3日には北朝鮮からミサイルが発射され、日本の上空を通過したとみられるなどと発信しましたが、実際には日本列島を越えなかったとしてその後、訂正しています。

また、去年10月4日の発射では、発射と上空通過、それに、推定される落下地点についてJアラートやエムネットを通じて情報を発信しました。

このとき、弾道ミサイルは青森県の上空を通過し、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の太平洋に落下したとみられています。

飛行距離はおよそ4600キロと北朝鮮が発射した弾道ミサイルのなかでは最も長く、防衛省はIRBM=中距離弾道ミサイル級以上の射程があると考えられるとしています。

Jアラートとは

Jアラート=全国瞬時警報システムは、防災や国民保護に関する情報を、人工衛星を通じて瞬時に自治体に送るシステムで、弾道ミサイルが日本の領土や領海に落下する可能性がある場合や領土や領海を通過する可能性がある場合に使用されます。

総務省消防庁のJアラートシステムを使い、主に携帯電話会社と市区町村の受信機に情報が通知されます。

通知を受けて携帯電話会社は、対象エリアの携帯電話やスマートフォンにエリアメールや緊急速報メールを流すほか、市区町村では防災行政無線などが自動的に起動し、屋外のスピーカーなどから特別なサイレン音とともに、避難を呼びかけるメッセージが放送されます。

弾道ミサイルは発射から10分もしないうちに到達する可能性があることから、メッセージが流れた場合、政府は、近くの建物の中か地下に避難することや物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭を守ること、窓から離れるか、窓のない部屋に移動するよう呼びかけています。

Em-Netとは

Em-Net=緊急情報ネットワークシステムは、国民保護法に基づく緊急事態が起きた際に、国が、地方自治体や報道機関などに、メールで連絡するために整備されたものです。

緊急情報は、総理大臣官邸にある危機管理センターから送られ、受信先では、警報音がなって、情報が伝えられたことを知らせる仕組みになっています。

Em-Netは、現在、すべての都道府県と市町村に導入されています。

北朝鮮の最近のミサイル発射

北朝鮮は、さまざまな種類のミサイルを繰り返し発射し、能力の向上を図ってきました。

3月は9日に「火力襲撃訓練」として、短距離弾道ミサイル6発、12日に潜水艦からの発射訓練として、戦略巡航ミサイル2発を発射したとしています。

また、14日に短距離弾道ミサイル2発、16日にICBM=大陸間弾道ミサイル級の「火星17型」1発を発射し、いずれも発射訓練だったとしていました。

さらに19日に短距離弾道ミサイル1発を発射したほか、22日には戦略巡航ミサイル4発を発射したとして、これらも訓練だったと発表しました。

そして、27日も短距離弾道ミサイル2発を発射し、「地対地戦術弾道ミサイル」の発射訓練だったと発表していました。