核兵器禁止条約 締約国会議 長崎の被爆者「核兵器国に圧力を」

オーストリアで開かれている核兵器禁止条約の初めての締約国会議は6月22日、長崎で被爆した医師の朝長万左男さんがみずからの被爆体験を証言し、そのうえで「核兵器禁止条約の参加国は核兵器国がこの条約に参加するよう最大限の圧力をかけなければならないと訴えたい」と述べました。

朝長万左男さんは英語で発言し、まずみずからの被爆体験について、「私は2歳の時に爆心地から2.5キロの場所で被爆しました。私は倒壊した家屋の中から当時20歳だった母に救出されました。周辺地域は焦土と化し、完全な焼け野原になりました」と語りました。

次に「高校生になって若い世代の被爆者の間で白血病が出始めました。私は不安になり、医師になることを決めました。以来、45年以上にわたって研究生活を続けています」と述べて、被爆者として、医師として原爆による人体への影響に関する研究に打ち込んできたと強調しました。

そのうえで「被爆者に加えてその子どもたちは、両親からの遺伝によってがんなどを発症するかもしれないという特別な不安を抱えている」と述べて、原爆が世代を超えて不安感を与えていることを指摘しました。

そのうえで朝長さんは核兵器禁止条約について「被爆者は高齢化するなか条約が発効したことをとてもうれしく思っています。しかし、9つの核保有国と30をこえる国が、核の傘に頼っている事実、とりわけ唯一の戦争被爆国の日本がアメリカの核の傘に守られている状況を残念に思います」と述べました。

そして、「核兵器禁止条約に参加する国々は、核兵器国が条約に参加するよう最大限の圧力をかけなければならないと訴えたい。ことし8月に開かれるNPT=核拡散防止条約の再検討会議の機会を捉えて、核兵器禁止条約に参加する国々は、核兵器国や日本のような核兵器に依存する国々と対話を開始すべきだ」と訴えました。

朝長さんが話し終えると、会場からはひときわ大きく長い拍手が送られていました。

締約国会議で朝長さんが証言を行った後、中央アジア・カザフスタン外務省のカイラト・サルジャノフ局長はNHKの取材に対し「朝長さんからはとても重要な指摘が寄せられたと思います。被爆者が核兵器禁止条約に関して発言することはとても大切であり、近い将来、日本政府が条約に参加するよう願っています」と話していました。

締約国会議 オブザーバー参加のNATO各国が発言

核兵器禁止条約の初めての締約国会議では2日目の会合で、条約には参加せずオブザーバーとして出席したNATO=北大西洋条約機構の加盟国が相次いで発言しました。各国はロシアによる核の脅威が高まる中、核抑止力に頼らざるをえないとしながらも、条約の締約国と協力して核軍縮に取り組んでいく姿勢を強調しました。

オーストリアの首都ウィーンで開かれている核兵器禁止条約の締約国会議は、2日目の6月22日、条約には参加しないものの会議にオブザーバーとして出席している、NATOの加盟国が相次いで発言しました。

このうちノルウェーの代表は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってヨーロッパの安全保障環境が激変したとしたうえで「NATOの核政策を完全に支持している。同時に核軍縮に向け禁止条約の締約国とも建設的な対話を続けたい」と述べ、条約には参加しないものの、締約国との協力を模索していく姿勢を示しました。

またオランダの代表は、禁止条約と核保有国も参加するNPT=核拡散防止条約との関係に言及し「禁止条約がNPTを強化し補完するよう、改めて求める」と述べ、2つの条約が補完し合って現実的な核軍縮が進むよう、改善を求めました。

さらにドイツの代表は「『核なき世界』という目標は完全に共有している。ロシアが核による威嚇を行い、中国が核戦力を強化するいまこそ、同じ目的のために対話と議論を進めたい」と述べ、核廃絶を目指す条約の理念は共有する考えを強調しました。