注目ワードはこれだ!
全9党首演説をAI分析 参議院選挙

参議院選挙は6月22日に公示され選挙戦がスタートしました。
9党の党首が全国各地で行った第一声の演説は合計でおよそ2時間50分。
NHKは演説で語られた言葉をすべて書き起こし、合計で4万7000字に及ぶ内容をAI分析して、多く語られた言葉がより大きく表示される「ワードクラウド」という手法で可視化しました。
今回の選挙の注目ワードと、各党が重視したテーマが浮かび上がってきました。
(参議院選挙取材班)

自民党総裁の岸田総理大臣は福島市でおよそ17分間、第一声を行いました。

最も多く使われた言葉は「福島」の24回でした。自民党は、公約に東京電力福島第一原子力発電所の処理水の風評対策に万全を期すことや、帰還困難区域への希望者全員の帰還をめざすことを掲げています。
岸田総理大臣は「福島は自民党にとって特別な場所で、震災からの復興が政権奪還をした原動力だった」と述べ、日本産食品の輸入規制の撤廃が進んでいることを成果としてアピールしました。

また「高騰」という言葉も多く使われ地方創生臨時交付金1兆円を活用した物価高への対策を強調しました。

一方、自民党が重点政策に掲げる安全保障の文脈では「防衛」という言葉を使わなかったほか、「憲法改正」という言葉も1回だけでした。

立憲民主党の泉代表は青森市でおよそ11分間、第一声を行いました。

地名や党名の「立憲民主党」の次に最も多かったのは「物価」の9回でした。

立憲民主党は「生活安全保障」を公約のスローガンに掲げ、消費税率の5%への時限的な引き下げなど「物価高」と戦うことを第1の柱に据えています。
泉代表は「繰り返し、この物価高は多くの国民にとってマイナスになるんだと訴えてきた」と述べ、政府の物価高への対策は不十分だと主張してきたことをアピールしました。

また、次に多かったのは「国会」でした。「緊張感のある国会」や「より女性の声を反映した国会」が必要だと訴えました。

演説を行ったのが青森だったこともあって、「農家」という言葉は「交付金」と合わせて多く使われました。

公明党の山口代表は横浜市でおよそ20分間、第一声を行いました。

党名の「公明党」の次に多かったのは「日本」の16回でした。公約のキャッチコピーを「日本を、前へ。」としていて、山口代表は「日本の防衛力は大丈夫かしっかり点検し、武力行使を日本の周りの国々から起こさせない防衛力を強めていきたい」と訴えました。

重点政策の1つに国際社会の平和と安定を掲げ、専守防衛のもと防衛力を着実に整備・強化するとしています。

また、「消費税」という言葉は、社会保障の財源として欠かせないとする文脈で使われ、継続的に賃金が上がるよう対策を講じたいとしています。

このほか、「補助金」「社会保障」に加え今後も対策が必要だとして「賃金」「値段」「物価」という言葉も上位に入りました。

日本維新の会の松井代表は大阪市でおよそ23分間、第一声を行いました。

最も多く使った言葉は「大阪」で29回。大阪府や大阪市の行政を担ってきた実績を訴えました。

次に多かったのが「経費」や「議員」で、公約に掲げる議員定数の削減や議員特権の見直しなど「身を切る改革」に関連して、「政治家が本気で改革のマインドを持って自分たちにメスをいれなければならない」と主張しました。

このほか松井代表は、国が「借金」にあたる赤字国債を発行し続けることや、政府が節電家庭に「ポイント」を付与することをバラマキだと批判しました。

一方で、公約に掲げた、憲法に自衛隊の存在を明記する9条の改正に取り組むといった内容についての言及はありませんでした。

国民民主党の玉木代表は愛知県犬山市でおよそ7分間、第一声を行いました。

最も多く使われた言葉は「選挙」の10回でした。玉木代表は「大変厳しい選挙です。政治が役割を果たしていないから私たちは新しい答えでこの日本を変えていきたいと思います」と呼びかけました。

また、「日本」「国民」や「賃金」も多く使われました。

国民民主党は「給料を上げる。国を守る。」をスローガンに掲げ、積極財政と金融緩和で、消費や投資を活性化させることで「給料が上がる経済」を実現するとしています。

一方、公約では防衛費の増額を打ち出していますが、玉木代表の第一声の演説では防衛や外交に関する言及はありませんでした。

共産党の志位委員長は東京・新宿でおよそ30分間、第一声を行いました。

最も多く使われた言葉は「日本共産党」でした。

「消費税」も14回と多く、物価高騰で生活が苦しい原因は、進まない賃上げや年金の減額、たび重なる消費税の増税にあるとして、税率の5%への引き下げを訴えました。

同じく14回使われたのは「平和」でした。志位委員長は「今回は戦争か平和か日本の命運がかかった選挙だ。 軍拡で平和が守れるだろうか」 と述べ、憲法9条をいかした対話による平和外交を行うべきだと強調しました。

さらに「企業」も、最低賃金時給1500円への引き上げや、男女の賃金格差の是正を訴える文脈で使われたほか、「核」も8回使われ唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に参加すべきだと訴えました。

れいわ新選組の山本代表は東京・新宿でおよそ23分間、第一声を行いました。
最も多く使われた言葉は「国」で38回、次いで「消費税」が30回でした。れいわ新選組は、公約で「消費税の税収は法人税減税の穴埋めに使われ、 社会保障には一部しか使われていない」として、消費税廃止を訴えています。

山本代表は「1人1人の購買力を上げていく。現在の物価上昇のみならず、不景気が続く25年の間この国が壊された状況を回復させるには消費税廃止、これぐらい大胆な政策が必要だ」と強調しました。

次に多かったのは「企業」。一部の資本家や大企業にだけ利益が流れていると主張したほか、れいわ新選組は、大企業からの組織票をもらう政党ではないとアピールしました。

社民党の福島党首は東京・新宿でおよそ16分間、第一声を行いました。

最も多く使われた言葉は党名の「社民党」で、次いで多かったのが「戦争」で18回でした。社民党は「がんこに平和!くらしが一番!」をスローガンに掲げ、公約では、ウクライナ情勢に便乗した防衛力の大幅な増強や憲法の改悪に反対するとしています。

外交や防衛に関連した「平和」や「軍事」「防衛」「核」という言葉も多く使っています。

福島党首は「日本国憲法にとって、社民党にとって、そして日本の社会政治にとってまさに正念場の選挙です」と訴え、「憲法」や「日本」「9条」「選挙」も上位に入っています。

このほか「賃金」や「雇用」「年金」「消費税」は「生活」や「暮らし」に関連して使われていました。

NHK党の立花党首は東京・渋谷でおよそ21分間演説しました。

最も多く使った言葉は「NHK」の50回で「受信料」「放送」も上位を占めました。「年金受給者のNHK受信料の無料化」を公約の柱に掲げ、「最終的にNHKスクランブル放送の実現を目指す」としています。

立花党首は「年金生活者の方の受信料を無料にする、悪くても半額にするということを1番の公約に掲げさせていただく」と訴えるなど、「年金生活者」という言葉も多く使われました。

一方で、「テレビ局」について、「国民の電波を預かっている日本で1番の権力と言える。テレビ局はあらかじめ用意したテーマに沿わない発言を全てカットする」と述べました。

9党全体の注目テーマは「物価高騰対策」

9党の演説で使われた言葉の割合を見てみました。

最も大きな割合を占めたのが「選挙」という言葉。次いで「日本」「人」「政治」「国」「国民」と続きます。政策テーマに関しては、「NHK」「消費税」「物価」「賃金」という言葉の割合が大きくなっています。

「消費税」については、野党側が物価高騰対策として消費税率引き下げや廃止を訴えていることが影響しています。与党側からは「財源をどうするのか」などと疑問を投げかける主張がありました。

また「物価」はほとんどの党が使っていて円安やウクライナ情勢の影響で生活品やガソリンの価格が高騰するなかでどのように生活を守っていくか対策を訴えていました。

「賃金」については、労働者の賃金が長年上がっていない現状や、企業の賃上げをどう実現するかの言及がありました。

9党首の演説で「物価」とともに使われた言葉を分析しました。
円が大きければ大きいほど、多く語られたことをあらわしています。

最も多く使われたのは物価高騰を表す言葉です。
ほかにも「ロシア」「円安」「ウクライナ」など、物価高騰をめぐる日本の現状が話題となっていました。

「消費税」は与野党で違いも

特徴的だったのが「消費税」です。
分析すると、与野党で違いが見えてきました。

「青」は主に野党側に多かった言葉です。
物価高騰対策として消費税率の引き下げや廃止を訴えていることを反映しています。

「赤」は主に与党側が多く使った言葉です。
消費税は社会保障などの財源だと主張する際に使っていました。

「物価」や「消費税」に重点をおいた第一声は、食料品や生活必需品の値上がりが相次ぐ中、支持拡大のため、より有権者に響く選挙対策という意味合いが大きいと言えます。
これまでの政府与党の対策をどう評価するのか、そして、消費税の引き下げなどさらなる対策が必要なのかという争点が浮き彫りになりました。

「憲法」「外交・安保」は上位に入らず

一方、今回の選挙では、ほとんどの党が公約で改憲の是非を掲げていますが、第一声の演説で「憲法」を使ったのは社民党が16回、共産党が6回、自民党が1回で、ほかの党の演説では使われず、全体では上位に入っていません。

さらに、外交・安全保障に関連する言及も一部にとどまりました。各党の党首が、有権者により身近な問題に比重を置いて政策を訴えたことがうかがえます。

※分析手法:各党党首の演説をテキストにおこし候補者の名前や有権者へのあいさつなどを除いて使われた単語の回数を集計し、上位の単語を表示しています。9党の合計は使われた割合を示しています。