衆院憲法審査会 衆院選後初
改正是非などで各党意見

先の衆議院選挙後、初めての憲法論議が衆議院憲法審査会で行われ、自民党が「自衛隊の明記」など4項目の改正案をたたき台として議論を進めたいという考えを示したのに対し、立憲民主党は特定の改正案を前提とした議論に反対する考えを示しました。

16日午前に開かれた衆議院憲法審査会では、先の衆議院選挙後、初めて各党が憲法改正の是非などについて意見を述べる自由討議が行われました。

自民党の新藤義孝氏は「できるだけ多くの会派が議論に参加して国民に提示する憲法改正原案の作成を模索していかなければならない。自民党が提案している『自衛隊の明記』や『緊急事態対応』など4項目は今後の議論のためのアイデアであり、たたき台だ。国民のための憲法論議を一層深めていきたい」と述べました。

立憲民主党の奥野総一郎氏は「『論憲』の立場をとり、必要な議論は行っていくが、自民党の4項目など、特定の改正案を前提とするものや改憲ありきであってはならない。現行憲法の足らないところを議論し、白紙から一歩一歩進めていくべきだ。国民投票のCM規制などの議論を優先してお願いしたい」と述べました。

日本維新の会の馬場伸幸氏は「教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置の3項目の改正原案を取りまとめている。岸田総理大臣は、例えば、来年の参議院選挙で憲法改正の国民投票を実施するという具体的なスケジュールを提示し、この審査会での精力的な審査をリードすべきだ」と述べました。

公明党の北側一雄氏は「緊急事態での国会の機能の維持や、国会議員の任期延長を認めるべきかの議論を進めるべきだ。自衛隊の存在を明記すべしとの意見があるが、各国の例を見ても、自衛隊のような実力組織の存在を明記するだけの規定は知るかぎり見当たらず、慎重に議論していきたい」と述べました。

国民民主党の玉木雄一郎氏は「コロナ禍で明らかになった、緊急事態における法の支配の空洞化を是正するための議論をすべきだ。まともな緊急事態条項がない中、あいまいなルールで憲法上の権利が制限される状態こそ危ない」と述べました。

共産党の赤嶺政賢氏は「憲法審査会は、憲法改正原案の発議と審査を任務としており、ここでの議論は、改憲項目のすり合わせにつながる。いま、多くの国民が改憲を優先課題とは考えておらず、審査会は動かすべきではない」と述べました。

一方、自民 公明両党や日本維新の会などが憲法改正のテーマごとに議論する分科会を設置するよう提案したのに対し、立憲民主党はテーマが決まっていない中での分科会の設置は拙速だとして慎重な姿勢を示しました。

与党側筆頭幹事 自民 新藤元総務相「開催できたことは喜ばしい」

与党側の筆頭幹事を務める自民党の新藤 元総務大臣は、記者団に対し「短い会期の中で、与野党で合意して憲法審査会を開催できたことは喜ばしい。与野党で協議を維持していることを今後も大事にしたい」と述べました。

また審査会の与党側の幹事らによる会合に、国民民主党などが先週から加わったことについて「審査会を開催する協議でも一定の影響力は出せるのではないか。連携しながら議論に消極的な会派の出席を促し、議論を進めていこうと粘り強く訴えていきたい」と述べました。

野党側筆頭幹事 立民 奥野氏「拙速な改憲は危ない」

野党側の筆頭幹事を務める立憲民主党の奥野総一郎氏は、記者団に対し「きょうは参議院で予算委員会が開かれているが、臨時国会ということで、例外的に審査会を行った。来年の通常国会では、予算委員会が開かれる時期は、予算案の審議に集中すべきで、憲法審査会を開くことは到底受け入れられず、次の審査会は予算案の審議が終わったあとだ」と述べました。

そのうえで、今後の議論の進め方について「いまの憲法のどこに足りないところがあるのか自由討議の中でゆっくり議論すべきだ。憲法改正を差し迫ってやらなければならないという状況ではなく、拙速な改憲は危ない」と述べました。