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“春夏秋冬”楽しめる高鍋町 地元LOVEのみなさんに聞いた魅力

NHK宮崎 土橋大記アナウンサーが“ぶっつけ本番”自撮り旅
  • 2024年01月19日
小丸川の河口に開けた高鍋町

「アナウンサー自撮り旅」。今回は宮崎県内で最も面積の小さな町「高鍋町」を、わたくし土橋大記が小型カメラを片手に一人旅しました。
春の「花」、夏の「海水浴」、秋の「芋焼酎の仕込み」、冬の「カキ」、そして「古民家カフェ」……。地元の方に話を伺いながら、四季折々の知っているようで知らない高鍋町を発見した探検記。どうぞご覧ください。(2023年8月下旬の旅に加筆してお届けします)

旅のスタートは高鍋駅

宮崎県内で一番面積の小さな町、高鍋町が今回の旅の舞台です。

さっそく駅前の地図をチェック。
海あり、山あり、そして高鍋藩7代藩主秋月種茂公によって設けられた藩校「明倫堂」に代表される文化ありと、小さな町ながら魅力が詰まっていそうです。

海を目指して町探検

まずは駅からもほど近い、海へ向かうことにします。

途中、道で出会った地元の方に高鍋の方にとっての「海」の存在を聞いてみました。

若いころはよく行ったね!

今でも、あせもが出来たら、海水をくみに行って、家に持って帰って、海水で体を拭いてるよ。

海が見えてきた!

駅から歩くこと10分ほど。やってきたのは蚊口浜海水浴場です。遠浅で子どもも泳ぎやすい(地元客談)ということで、毎年に夏には家族連れなど多くの海水浴客でにぎわいます。

蚊口浜海水浴場(2023年8月撮影)

海辺で開かれていた神事

ところが、この日はひっそりとした様子。そして、海辺に張られたテントから笛や太鼓の音が聞こえてきます。どうやら神事のようです。

近づいてみると、祝詞をあげる神主さんの姿が。そしてYシャツ姿の観光協会や地元の人たちが名前を呼ばれては、祈りをささげています。

誰もいない海の前で行われていたこの行事は何なのか?
実は海水浴場の閉会式(閉海式!?)だそうです。

終わった後に地元の方に話を伺いました。

きのう8月27日で48日間の海水浴シーズンが終わったんです。今年は台風6号の影響で閉鎖が多かったんです。ここで40年間くらい海の家をやっているんだけど、こんなことは初めて。大変ったら大変でした。

冬の名物・カキに異変

ところで高鍋というと、カキを思い浮かべる方も多いかもしれません。

採れたてのカキ

味が濃い、磯の香りが香ばしいと言われる高鍋の天然カキ。素潜りで獲ったカキを海辺の店で食べるのは格別です。

高鍋のカキは味が濃いと評判

しかし、実はここ数年不漁が続いていて、廃業するカキ料理店も少なくありません。
今シーズン(2023~24)も店を開く、カキ生産組合の高島順治組合長によると、海が荒れたり、海水の流れが変わったたりして、砂が巻き上げられるようになってしまったということです。

高島順治さん

「‟瀬”と呼ばれるカキが付く岩」が砂に覆われてしまい、カキが見えないうえ、今シーズンは死んでしまってるカキが目に付きます。

今シーズンも海の状況が良い日には潜っています。
せっかく予約してもらってもカキが獲れない日もありますが、これから春先にかけてが旬なので、3~4月ごろまで漁を続ける予定です!

今シーズン(2023~24年)のカキ

甘藷(サツマイモ)の収穫に遭遇

海を後にして、続いては畑作地帯へ向かってみることにしました。

遠くから機械の音が聞こえてきます。農作業をしている方を訪ねてみました。

農機に乗って作業をしていたのは、この道ウン十年(教えてもらえませんでした)というベテランの吉川早苗さんと津野裕子さんです。一見何も植わっていないように見えますが、芋掘りをしているといいます。

畑の中に埋まっている芋は、機械の先の刃のような部分で掘り起こされ、そのままベルトコンベアーで運転席の方へ運ばれていきます。
次々と掘り出される芋を、乗っている2人が手際よく選別していきます。

中には片手では持てないほどの大きなものもありました。

吉川早苗さん(左)津野裕子さん(右)

芋ほりは大好きです 楽しいです

家に持って帰って焼き芋にしたり天ぷらにしたりはしないんですか?

しないです 焼酎芋だから。

料理用とは種類が違うからおいしくないです。

そうなんですか!まさに焼酎のための芋なんですね!
おいしい焼酎の原点となるお2人に会えてうれしいです。

奈良から嫁いできた吉川さんは「高鍋町はのんびりしていて、自然がいっぱい。優しい人も多くて大好きです」と話します。

高鍋町では基腐病の影響はなく、いい芋が収穫できているということです。

焼酎芋の仕込みを特別見学

焼酎の原点に携わるお2人にお会いしたところで、どんな風にして作るのか、その様子を見てみたいと地元の方に相談したところ、特別に酒蔵を見せて頂けることになりました。

店の脇にある小道をどんどん進んでいきます。すると次第にお酒の香りが漂ってきました。

突き当りに見えてきたのが酒蔵。明治時代の建物が、いまも大切に使われています。

扉を開けてもらうと、薄暗い空間にタンクが見えます。そしてさらにこの階段を上がると・・・待っていたのがたくさんの桶。この樽の中で仕込みが進んでいると言います。

木桶を覗かせてもらいました。
黄色い色はまさに芋の色。耳を澄ますと「プクプク」と発酵してできた泡がはじける音が聞こえてきます。

きょう収穫した甘藷がお酒になって飲めるようになるのはいつごろになりそうですか?

早ければ半年後くらいにはお出しできるかと思います。

自然のもの、地元の原料を使って、高鍋の酒だという風に造る。大事に育てている感じがします。

古民家カフェを発見

酒蔵を後に、街並みを歩いていると、築100年という古民家カフェを見つけました。

ちょうど店で食事をしていたのは、店主の岩佐茂登子さんと高鍋高校の同窓生だというお2人。

高鍋高校吹奏楽部の先輩 店主の岩佐茂登子さん 高鍋高校の同級生

 

築100年くらいの建物です。もともとは酒店さんだったのですが、店を閉めるということで、お借りし、去年カフェに改装しました。

「頼りは高鍋高校の仲間なんです。高鍋高校の先輩と仲間、みんなで作り上げたカフェです」という岩佐さん。その理由がコチラの写真に隠されています。

天井が高いですね

本当は天井板が貼ってあって2階だったんです
二部屋あったっていうことなんです

そうなんですか!
あっ 床の間や押入れがありますね

同級生のアイデアなんです エアコンと水道工事以外は全部同級生でやりました

「設計内装から掃除、そして運営まで、高鍋高校の人のつながりで長年の夢をかなえた。人の縁が高鍋の自慢だ」と皆さん話が弾んでいました。音楽を趣味にしている友人も多く、このスペースを使ってミニコンサートも開いているそうです。

天井板をはがして作った吹き抜け 
朝日の時間帯は特にきれいなんだそうです


春は花見山へ変身中! 高鍋大師から町を見下ろす

陽が傾き、旅も終盤。高台から1日かけて巡った高鍋を見下ろしてみることにしました。
向かったのは高鍋大師です。

大小700体以上の石像が並ぶ高鍋大師。多くの石像が町を見下ろすように立っています。
これらの石像はすべて町内で米穀販売業を営んでいた岩岡保吉さんが手作りしたもので、中には6メートルを超える巨大なものもあります。

近くの持田古墳群の盗掘に心を痛めた岩岡さんは、40歳前後の昭和初期から、古代の人たちの霊を慰めるために石像を彫り始めました。その後昭和52年に89歳で亡くなるまで生涯を石像づくりに捧げました。

また四国八十八か所霊場にちなんで、札所の番号が付けられた石像もあって、高鍋で八十八か所巡りに思いをはせるのもいいかもしれません。

高鍋大師の周辺では、いま石像群の周辺や敷地内に花や木を植えて、四季折々の花を楽しめる「花守山」にしようという取り組みが行われています。福島にある花見山をモチーフにした計画で、すでに多くの木々が植樹されていて、春は桜・つつじ、秋には彼岸花が楽しめます。

将来のイメージ図

この活動は県や高鍋町の補助金のほか、地元の人の寄付やボランティア活動で支えられています。地元の人は「毎年、桜の木が潮風や台風で倒れてしまうなど困難も多いが、いつかはイメージ図のような花を楽しみながら散策できる憩いの場所にしたい」と夢見ています。

将来のイメージ図

1日かけて廻った高鍋町。小さな町の中に、地元への愛が凝縮されているのを感じました。

この記事は2023年9月放送の「てげビビ!」をもとにしています
  • 土橋大記

    宮崎放送局コンテンツセンター アナウンサー

    土橋大記

    元バックパッカー。旅や人との出会いが生きる喜び。

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