高さ14メートル! 龍ケ崎の"撞舞"にかける思い
郡司掛弘典(カメラマン)
2023年08月02日 (水)
「撞舞(つくまい)」を知っていますか?
街なかに立てられた高さ14メートルの柱。その上で、逆立ちなどの曲芸を披露する伝統芸能です。
ニュースのカメラマンとして、これまで茨城のさまざまなお祭りや伝統芸能を取材してきましたが、特に印象深かったのが、龍ケ崎の「撞舞」です。
あんなに高い柱の上で、誰が、どんな思いで曲芸を披露しているのだろう?
話を聞いてみることにしました。
※ことしの撞舞は7月23日に行われました。
450年以上続く伝統芸能
茨城県龍ケ崎市。
撞舞は、龍ケ崎で450年以上続く伝統芸能です。
竜に見立てた高さ14メートルの柱の上に設けられた円座で、舞男と呼ばれる人たちが逆立ちなどの技を披露します。
地元の“巨大なカエル”伝説に由来
撞舞は、地元に残る伝説に由来しています。
巨大なカエルが、洪水の時には水を飲み込み、日照りの時には水を吐き出して雨を降らせ、農民を助けたというものです。
舞男たちが付けるのが“アマガエル”の面。
撞舞は、アマガエルが竜の背中をはい上がる様子を表しているとも言われ、雨乞いや疫病よけを願って行われます。
舞男はここ70年あまりで9人。危険が伴うことなどから、なり手は少ないと言います。
舞男は地元のとび職人
現在、舞男を務めるのは、地元のとび職人です。
舞男の谷本仁さん(54歳)と大石浩司さん(40歳)です。
左が谷本さん、右が大石さん
本番を3日後に控えたこの日、最後の練習が行われていました。
舞男歴15年の大石さん。
毎年こんなに高かったかなと思いますね。
ベテランの谷本さんのもとで、5年間修行を積み、舞男になった大石さん。
何度やっても、恐怖心は消えません。
それでも、舞男を続けるのには理由があります。
降りて「ありがとう」と言ってくれる人もいる。体が病に侵されている人は「励ましになる」って言ってくれるんですよ。
不思議なお祭りなんですよね。力が出る人には出るんじゃないかな。
伝統をつなぎたい~若手にも指導~
見た人を元気づける撞舞。
大石さんたちは伝統を絶やさないため、舞男のなり手を増やしたいと考えています。
練習には、2人の弟子たちの姿も。
舞男になるには、何年も修行を積み、安定して技を繰り出せるようにならなければなりません。
大石さんたちは、みずからの練習の合間に、弟子たちに手の付き方や姿勢を教えていました。
最大の見せ場 大車輪
大石さんには、舞男として、どうしても決めたい技があります。
それが、撞舞の最大の見せ場、手を離して綱を滑り降り、途中で回転する「大車輪」です。
本番でこの技を決め、観客、そして弟子にも、舞男として雄姿を見せたいと考えています。
がんばってやらせてもらうんで。 拍手喝采を浴びられればなと思います。
7月23日 伝統の撞舞、本番
本番当日。
新型コロナの影響で中止や規模の縮小を余儀なくされてきた撞舞。
ことしは、4年ぶりに通常規模での開催となり、会場にはおよそ8000人が集まりました。
いよいよ、舞男の出番です。
たくさんの観客が柱の上を見つめます。
期待と緊張が入り交じった独特の雰囲気に包まれるなか、大石さんは逆立ちなどの技を順調に決めていきます。
そして、演技の終盤、あの大車輪に挑みます。
柱に張った綱を頭から滑り降りて・・・、
ぐるぐると、5回転!
↓動画はこちら↓
見事成功!! ことしも舞男としての大役を務め上げました。
すばらしい。自分はああいう風にはできない。
格好よかったです。引き継ぐことができるなら頑張ってやっていきたい。
どうにか降りて来られたのでよかったと思います。 絶対に途絶えることのないようにずっと続けていければ。
未来へと続く撞舞
事故や大きなけがにつながらないように、何年も修行を積んだ舞男たちの曲芸。
大石さんは、これからも自分の技を磨くとともに、若手の指導も続け、次の舞男を育てていきたいと、力強く話していました。
今回、取材、撮影させていただき、技を披露するときの大石さんたちの真剣な表情が忘れられません。
技を磨き、伝統を次の世代につないでいく。
舞男たちの強い思いを感じた取材でした。