ページの本文へ

よむ富山人

  1. NHK富山
  2. よむ富山人
  3. 防災士に聞く 「マイ・タイムラインを活用しよう!」

防災士に聞く 「マイ・タイムラインを活用しよう!」

台風や大雨に備えて
  • 2023年10月05日

 

マイ・タイムラインを活用しよう!

ことしの6月、そして7月と、大雨による建物への浸水や土砂崩れが相次ぎ、犠牲者も出るなど、県内各地で被害が発生しました。

近年、全国各地で、想定外の雨が降り、大きな被害が発生しています。

富山県でも7月には線状降水帯が発生しました。今後もこれまで経験したことがないような激しい雨が、いつ降ってもおかしくありません。

10月はまだ、台風への備えが必要な季節です。

いざというときにどう行動すればいいか、ふだんから備えておくことが大切です。

大雨や台風などの危険が迫ってきたときどう行動するか、事前に考えておくことにより、自分や家族を守ることにつなげる「マイ・タイムライン」について、改めて確認していきたいと思います。

マイ・タイムラインを活用しよう!

今回は、富山県防災士会の江尻泰将(えじり・ひろゆき)副理事長に、話しをお聞きしました。

NPO法人 富山県防災士会 江尻泰将 副理事長

「マイ・タイムライン」とは、改めて江尻さんに教えてもらいました。

江尻
副理事長

「マイ・タイムライン」はひと言で言うと、災害時行動計画のこと。風水害ですから、地震とか突発的な災害ではございません。1週間ぐらい前から徐々に近づいてきて、どういう準備をしようか、いよいよ来たぞ、どうなったら自分たちはどうやって逃げるのか、書いておくためのものです。

マイ・タイムラインができるきっかけになったのが、平成27(2015)年9月に起きた関東・東北豪雨です。

関東・東北豪雨

茨城県を流れる鬼怒川が決壊し、避難するタイミングを逃した多くの人々が、浸水した家屋などに取り残されました。
このときは、茨城県常総市のおよそ3分の1が水没し、逃げ遅れて救助された人は4300人ほどにもなったということです。

関東・東北豪雨

この災害をきっかけに、徐々に進行していく台風などの災害に備えて、時間の経過とともにとるべき行動を事前に決めておく「マイ・タイムライン」が考え出されました。

 

具体的には、どのようなものかというと、例えばこちらは、富山県のマイ・タイムライン作成シートです。警戒レベルが1~5へ、災害の危険度が高まって来る中で、自分や家族がどう行動するか確認し、記入する形になっています。

富山県 マイ・タイムライン作成シート

自治体により多少様式は違いますが、各自治体のホームページなどから入手できます。

 

ここからは、江尻さんの地元の射水市のマイ・タイムラインを元に、詳しく見ていきます。

射水市 マイ・タイムライン

# 平常時・・・

まずは差し迫った危険のない平常時です。

江尻
副理事長

まず平常時は、洪水ハザードマップや土砂災害ハザードマップで、自宅や避難先の危険を確認する。自分のところは安全だから避難はしなくてもいいやとか、これはだめだと、コミュニティーセンターへ行かなきゃいけない、そういったことを確認していただきたい。

ハザードマップを見て、自分の家はどのくらいの深さまで浸水するのか、また土砂災害の危険はないのか、確認して記入してください。

射水市 マイ・タイムライン 

避難の必要があれば、避難先も記してください。一つではなく、複数の避難先を考えておくことが大切です。その際、必ずしも指定されている避難所に逃げる必要はありません。

江尻
副理事長
 

親戚や友達の家で安全なところであれば、『何かあったら私あんたんとこ逃げてもいいけ?』『来られ来られ』言うがやったら、そちらに逃げても全然問題ございません。

# 警戒レベル1・・・

次は、警戒レベル1です。台風が数日後に、近づいてくるかも知れないとか、そういうときです。
ここには“非常用持出品を準備する”と書いてあります。

射水市 マイ・タイムライン 
江尻
副理事長

非常用持ち出し品の確認ということで、うちの場合はこれ持ってかんなん、飲料水持ってかんなん。例えばおうちに、おじいさんがおられる場合、入れ歯とか眼鏡とか常備薬ですね、これも非常用の持ち出し品になります。

それぞれの家庭の状況に応じて必要なものを準備する、例えば赤ちゃんがいたら、ミルクやおむつなどを用意するということです。

# 警戒レベル2・・・

続いて警戒レベル2は、注意報が出ている状況です。

射水市 マイ・タイムライン 
江尻
副理事長

気象情報を確認するとか、暴風や浸水への対策を行う。例えば鉢植えを片づけたり、物干しざおを片づけたり。

そのほかにも、避難しやすい服装や雨具の準備、携帯電話の充電など、確認して一つずつチェックしていきます。この段階で、いつでも避難できるよう準備しておきます

# 警戒レベル3、4・・・

次は警戒レベル3「高齢者等避難」です。

射水市 マイ・タイムライン (一部)

お年寄りや体の不自由な方、小さなお子さんをお連れの方など避難に時間のかかる方は、このタイミングで避難します。

そして、警戒レベル4は「避難指示」です。危険な場所にいる人は全員避難します。

何よりも大切なのは、警戒レベル3で逃げるのか、警戒レベル4で逃げるのか、この避難のタイミングを決めておくことだと言います。

江尻
副理事長

自分がどうしたら逃げるのか、例えば外の状況、あるいは家族の状況がこうなったときに逃げます。隣の川の水の流れがこうなったら逃げるんだと。あなたの避難スイッチは何ですかというところを、確認して書いておいていただきたい。

いつ逃げるか“避難スイッチ”を決めておくことが重要です。

ただ江尻さんによりますと、マイ・タイムラインをせっかく作ったのに、実際には避難しない方が多いそうなのです。

江尻
副理事長

計画では、こうなったら避難すると考えているのですが、いざ本番になると避難しない方が多い。でもそうではなくて、やっぱり時系列に流れてきますよね、平常時から災害が近づいてくる、そのどこかのタイミングで避難しなければいけない自分と家族の命を救うタイミングがあるはずなので、そこを決めたら決めたとおりに動いていただきたい

実行しないと意味がありません。ぜひ事前に決めたとおりに避難していただきたいと思います。

実際に避難する際の注意点についても(“火元や戸締まりの確認”など)書いてありますので、こちらもぜひ、目を通しておいていただきたいと思います。

マイ・タイムラインを作ることで、心の準備ができる!

最後に、マイ・タイムラインを作ることの大切さを、改めて江尻さんにお聞きしました。

NPO法人 富山県防災士会 江尻泰将 副理事長
江尻
副理事長

いきなり災害に遭うと、頭の中が真っ白になってしまいます。そういうことのないように、もし台風が来て川の水がこうなったり、停電が起きたときはこういうふうにしようと。この警戒レベル2・3・4とかの状態になったら、こういうふうにしようと話し合っておくことで、自分と家族の心の準備ができる。これはすごい大きなことだと思います。

このマイ・タイムライン、できれば自治会など地域の集まりの際に、近所の人たちと一緒に作ると、自分や家族だけでは気づかなかった点にも気づくことができるので、おすすめだそうです。

また、一度作ってしまえば、その後は毎年、家族状況の変化などに応じて見直すだけ(例えば、子どもが大きくなったから、緊急持ち出し品からミルクやおむつを外すとか)なので、とにかく一度作ってみて欲しいとのことでした。

マイ・タイムラインの作成シートを見るだけでも、いろいろと気づくことはありますし、ぜひ台風などの危険がさし迫っていない平常時にこそ、少しだけ時間をとって考えてみてください。

 

【参考】NHKのポータルサイト「NHK防災」には、さまざまな災害から身を守るための情報が詳しく記されています。ぜひ、ご覧になってみてください。
 

ポータルサイト「NHK防災」

ポータルサイト「NHK防災」: https://www.nhk.or.jp/bousai/

 

  • 牧野雅光

    NHK富山局(防災士資格所持)

    牧野雅光

    報道の仕事に携わる中で、防災・減災報道の大切さを痛感し、 防災士の資格を取得しました。 とは言え、日々勉強中です。

ページトップに戻る