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建設会社がVRゲーム開発!?なぜ? 建設×デジタルの可能性とは

業種を超えたチャレンジに意外な活路
  • 2023年09月27日

専用のゴーグルを装着し、VR(=バーチャルリアリティー)の3次元空間でゲーム体験。

最先端のIT企業の話?

いえいえ、実は富山県黒部市の山あいに本社のある ”建設会社" が作ったゲームの話なんです。なぜ建設会社がVRゲームを作ったのか。そこには業界が抱える課題を克服しようとする、ある戦略がありました
(NHK富山放送局 記者 山口雅史)

【2023年9月14日放送動画】

VRゲームで土石流を体験

9月中旬。富山県高岡市の高岡商業高校で、とあるVRゲームの体験会が開かれました。

参加したのは情報処理を学ぶ部活動の生徒たち。

順番に専用ゴーグルを装着して体験したのは、、、

バーチャル空間に作られた山間地を、急激に流れ下る土石流です。

この空間には、砂防ダムを自由にデザインして設置することもできます

さらに、そのダムで土石流の勢いをどれだけ減らすことができるかシミュレーションもできます。

生徒たちは土石流の勢いや、砂防ダムの重要性を体感的に学んでいました。

【参加した生徒】
土石流が目の前に来るので、動画で見るより迫力があって、分かりやすかった。

【参加した生徒】
砂防ダムを自分で建設できて、ダムや建設業に興味が出た

制作したのは“建設会社”

体験会で披露されたゲームは、富山県黒部市の建設会社が制作しました。
富山県立大学で、土木やデジタル技術を学ぶ学生たちも、開発に協力しました。

取材したこの日は、土石流の量や流れる早さ、岩の重さなど、細かい調整を行っていました。
このゲームの開発には、1人の立役者がいます。

建設会社で、企業広報用のデジタルコンテンツを制作している山本健太郎さんです。

ことし2月 メタバース企業説明会

山本さんは「生成AI」や「メタバース」などの技術をほぼ独学で学び、仮想空間上での企業説明会などを、県内でいち早く手がけてきました。

これまでに行った仮想空間上の企業説明会には、県内外から多くの高校生や大学生が参加

取り組みを続けるなかで、「砂防ダム建設の仕事をゲームで体験してみたい」という声が
寄せられるようになりました。

“それならば作ってしまおう”精神

“ニーズがあるなら、作ってしまおう”
山本さんは持ち前のフットワークの良さで、これまでも一緒に仕事したことがある県立大学の学生に声をかけたところ、プロジェクトチームが立ち上がりました。

制作開始は、高校での体験会のわずか3か月前

学生たちのほとんどが、土石流や砂防ダムのことを知らない状態からのスタートでした。

山本さんはさまざまな資料映像を使って、土石流の恐ろしさや砂防ダムの役割を説明しました。

こうしたやり取りの中で、学生たちは様々なアイデアを生み出していきました。

土石流のスケールの大きさをVRで再現できれば、より迫力のある体験を高校生に与えられる。

砂防ダムを自分で選んだり、作ったりできるようにしたら?

それなら、土石流の中に岩を入れて、ダムで岩を止められるようにしたら、ダムの役割がより分かるんじゃないか?

建設業界最大の課題“人手不足”

建設会社なのに、なぜここまでデジタルコンテンツの作成に力をいれるのか?
山本さんに、その狙いを聞いてみました。

【大高建設 山本健太郎さん】
「当社は土木の仕事をしていますが、人手不足が深刻です。その中で富山県は高校生の就職率が高いのを知っていたので、焦点を高校生に当てるべきかなとまず考えました。高校生が一番心動かされるのは何だろうと考えたときにゲームとなりました」

山本さんが語る建設業の人手不足。状況は本当に深刻です。
特に若い世代のなり手不足が業界を悩ませています。

富山県建設業協会がまとめた
県内の会員企業389社の技術職・技能職(5739人)の令和4年度の年齢構成は、、、

▼19歳以下:153人(2.7%)
▼20代:682人(11.9%)

合計しても若手はわずか14.6%にとどまっています。
さらに令和2年度に新卒・中途で採用された人の離職率は28.6%
つまり、入社から3年以内に3割弱が離職していることが分かっています。

建設 x デジタル=可能性

当初、手探りで始めた山本さんのデジタルコンテンツ作り。
少しずつ若者をひきつけるようになってきています。

「建設xデジタル」という新しいフィールドに可能性を感じ、東京、鹿児島、沖縄からインターンを希望する大学生や高専生が、飛び込みで会社の門をたたくようになりました。

【大高建設 山本健太郎さん】
「建設業界というと危ない、キツいなどのイメージを持つ人は多いのかもしれません。しかし、建設業界でもデジタル技術を使って、誰も見たことのない仕事やサービスを生み出す。そういう可能性はあると思っています。ぜひ若い人に来てほしいです。今後もドローンやVR、生成AIなどを取り入れ、あらゆることにチャレンジしていきます」

【取材を終えて】
労働条件や給与水準など、建設業界が人手不足解消に向けて取り組まなくてはいけない課題は依然として多くあります。ただ、山本さんの取り組みのようにデジタル技術を使って「全く新しい何かを自分で生み出すことができる」というビジョンや可能性も、若い世代をひきつける大きな力になると感じました。こうした取り組みが業界全体に広がったときどうなるのか。今後も取材を続けたいと思います。

  • 山口 雅史

    NHK富山放送局 記者

    山口 雅史

    2006年入局 宇都宮局・長野局・国際部・フィリピンのマニラ支局をへて富山局記者。労働問題・福祉・教育などを担当。趣味はダイビングで、富山湾に潜ることが目標です。

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