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富山でも地震の備え必要なの?

"関東大震災100年”を機に考える
  • 2023年09月11日

ちょうど100年前の9月1日に関東大震災が起こり、10万5千人もの人々が亡くなりました。

首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生が危惧されていますが、地震の多い日本では、いつどこで大地震に見舞われるか分かりません。

富山県は、"日本一地震が少ない”と言われる県ですが、そこに住むわれわれは、はたして地震への備えをしなくてもいいのでしょうか?

地質学が専門の富山大学 竹内章名誉教授にお話をうかがいました。

 

首都直下地震が起きたら、富山はどうなる?

1923(大正12)年9月1日午前11時58分、神奈川県西部を震源とするマグニチュード7.9の巨大地震が発生しました。

この地震により、当時の震度階級で最大の震度6を、埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨で観測したほか、北海道道南から中国・四国地方にかけての広い範囲で、震度5から震度1を観測しました。

富山県では、高岡市伏木で震度4を観測しています。

首都直下地震は、30年以内に70パーセントの確率で発生するとされていますので、その際には富山でも、100年前と同じように、揺れを感じることになると考えられます。

竹内
名誉教授

この次に関東地震クラスのものが関東で起きた場合、同程度のものが起きると、伏木で4だと言っても、県内考えますと、地盤の弱いところはありますので、5弱とか、非常に弱いところになれば、5強になってしまうこともあるかと思います。

関東から離れているからと、安心は出来ません。

 

富山って“日本一地震が少ない県”でしょ?

とは言え、富山県は地震が少ない県です。

この100年間に県内で震度5以上の揺れが観測されたのは、いずれも石川県で発生した93年前の大聖寺地震と16年前の能登半島地震2回だけです。

過去100年間に富山県内で観測した震度5以上の揺れ
気象庁 震度データベース検索

こちらは、気象庁の震度データベース検索で、過去30年ほどの富山周辺の地震を検索した画像になります。

能登半島とか長野のほうでは、たくさん地震が起きていますが、富山の中心の辺りでは、全く地震が起きていません。

いわば富山は"地震の空白域”になっています。

 

トルコの地震から富山県が学ぶこと!

ただ『今後も地震は起きない、立山が守ってくれるから大丈夫だ』などと、考えていていいのでしょうか。

竹内先生は、ことし2月に起きたトルコの地震から、富山の人が学ぶべきことがあると言います。

竹内
名誉教授

『富山は地震がない場所だ、全国一少ない』と、威張るような話では決してない。むしろ空白であることのほうが恐ろしいと考えなくてはいけない。一番の警鐘を鳴らす事例が、トルコの地震なんです。

こちらはトルコの地図です。このトルコの南東部、シリアとの国境に近い場所で、ことし2月に地震が起きました。

この辺りの断層帯を示した地図です。画面中央を、端から端に斜めに横切っているのが、東アナトリア断層です。黄緑色のところは、過去200年以内に大きな地震が起きた場所です。そして、青い部分が
過去500年間、地震が起きていなかった場所、"地震の空白域”です。

5万人以上が犠牲になった2月の地震は、この500年間地震が起きていなかった空白域で起きました

竹内名誉教授

トルコも地震国なんです。よく起きる国の中で地震が起きない場所、空白域ですけれども“いずれ大きな地震が起きる場所だ”と考えなきゃいけない。そういうことをこのトルコの地震は教えてくれている。

 

富山にもある危険な活断層!

これまで起きなかったから、今後も起きないとは、決して言えません。富山にも、地震が起きる切迫度が阪神・淡路大震災の直前と同じか、それを上回るSランクと国が評価した活断層帯があります。

富山県周辺の活断層


県の中央にある呉羽山断層帯、そして県西部にある砺波平野断層帯の一部が、地震の確立が最も高いSランクに指定されています。ただ、危険な活断層は県内だけではありません。

竹内
名誉教授

注意が必要なのは、富山県内の断層だけ見ていてはいけない。石川県に発生確率の高いものがあります。特に森本富樫の断層帯、それから能登のつけ根にある邑知潟の断層帯、それらは地下では富山県に入ってきている。そういう活断層が地震を起こした場合、富山県内に震源地が発生すると考えておかねばならない。

富山県周辺の活断層

これらの活断層で地震が起きると、どのくらいの揺れが生じるのでしょうか。

例えば呉羽山断層帯で地震が起きた場合、富山市から高岡市にかけて、最大震度7の揺れが起きると想定されています。また石川県の断層帯で地震が起きた場合にも、特に県西部で重大な被害が発生すると考えられています。

 

“地震の時間割”

地震が起こらないようにすることはできませんが、地震の被害を減らすことはできます。住宅の耐震化や家具の固定、食料や水などの備蓄に加えて、竹内先生からは“地震の時間割”という考え方を教えていただきました。

竹内
名誉教授

地震の発生から3日目まで3日間のタイムテーブル、時刻表というか、それを自分で考えておく、イメージするってことです。

先生の教えをもとに作った、私の“地震の時間割”です。自宅にいる時を想定しました。

私の“地震の時間割”

まずは、地震発生直後、「命を守る」時間(※0分~2分)です。私の場合は、1階のリビングにいたら、テーブルの下にもぐります。2階の寝室にいたら、隠れるところはないので姿勢を低くして、枕か何かで頭を守ります
※時間は、あくまでも目安です。

次は、揺れがおさまったあと、「二次災害を防ぐ」時間(2分~10分)です。火元を確認したり、ドアや窓を開けて逃げ道を確保します。

(私の場合は、家族の無事や家の周囲の状況を確認したあと、会社に出社して、地震の報道に携わることになります。)

こうして、地震が起きた直後から自分が何をすべきか、時間の経過とともに順を追ってイメージしておくことが、いざというとき役に立つという考えです。

大雨や台風の時のマイタイムラインと同じように、“事前に何をすべきか決めておく”という考えに基づいていますが、ただ地震の場合は、いきなり危険に遭遇します。ですから、いざ起きたときパニックにならないように、そのあとの行動を考えておくことは、自分や家族の命を守るためにも、とても大事なことなのです。

竹内先生は、まずは自分の住んでいる場所がどういう場所か、どういうときにどこが危険になるのか、事前に知って調べておくために、家の近所を散歩がてらパトロールしてくださいと話していました。

その上で、自分の住んでいる場所に即して、海の近くでしたら、津波に備えてすぐ逃げなきゃいけないとか、自分なりの時間割を作っておくといいと話していました。

 

取材を終えて・・・

ことし5月には、能登半島先端の珠洲市で起きた地震により、県内でも広い範囲で震度4の揺れを観測しました。大型連休のさなかでしたし、突然の揺れに驚かれた方も多かったと思います。私自身も、けたたましく鳴り響く緊急地震速報の音にびっくりしてしまって、恥ずかしながら、少しアタフタと取り乱してしまいました。

引き続き、近年相次ぐ能登半島の地震には、まだまだ警戒が必要です。

また歴史をさかのぼれば、過去には富山県でも、大きな地震の被害が発生しています。最近起きていないからと油断せずに、この機会にできることから、一つ一つきちんと取り組んでいきたいと、先生の話を聞き強く感じました。 

  • 牧野雅光

    NHK富山局(防災士資格所持)

    牧野雅光

    報道の仕事に携わる中で、防災・減災報道の大切さを痛感し、 防災士の資格を取得しました。 とは言え、日々勉強中です。

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