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「黒部宇奈月キャニオンルート」新しい観光地に行ってみた

  • 2023年09月11日

    “世紀の大工事”と呼ばれた昭和の電源開発の軌跡をたどるルートが富山県の新しい観光ルートとして誕生します。

    2024年6月にオープンするのは、その名も「黒部宇奈月キャニオンルート」。

    新しいルートではこれまで登山者しか目にすることができなかった大自然の景観を望むことができるとか…。

    報道機関向けの内部公開が行われ、一足早く記者が体験してきました。
    (富山放送局記者 林慶介)

    黒部宇奈月キャニオンルートとは?

    来年2024年のオープンを前に9月6日に報道機関向けの内部公開が行われたので、内部の様子を体験してきました。

    「黒部宇奈月キャニオンルート」は関西電力などの工事用路線。黒部峡谷鉄道の欅平駅から立山黒部アルペンルートの黒部ダムまでを結ぶ全長およそ18キロの区間となります。

    黒部川上流で60年以上前に建設された工事用のルートで、2024年6月からは観光客向けに一般開放されることが決まっています。

    まず欅平駅に到着すると、工事用の車両に乗り換えてキャニオンルートに向かいます。

    ここからエレベーターや蓄電池機関車を乗り継ぐ全長18キロの旅が始まります。

    巨大なエレベーターが出現!

    車両を降りて最初に到着したのは、標高差200メートルを一気にのぼる巨大なエレベーター。

    竪坑(たてこう)エレベーター

    ダムや水力発電所の建設工事のため昭和14年に設置されました。4.5トンもの資材や人を一度に運ぶことができるものです。

    続いて、待っていたのは蓄電池機関車。蓄電池機関車に乗り換えると、長さ6キロ余りの長いトンネル区間が続きます。

    蓄電池機関車

    日本の建設史に残ると言われる黒部川の電源開発。

    その歴史は大正時代に始まりました。厳しい自然が行く手を阻む中、人の手で命がけの作業が続けられてきました。

    ルートを進んでいるとその歴史の軌跡を直接感じることができます。

    トンネル掘削の苦労のあとも

    最大の見どころは「高熱隧道(ずいどう)」です。トンネル掘削工事で最大の難関となりました。

    このあたりは温泉が湧き出るほど地熱の高い地帯で、掘削当時は岩盤温度が160度以上にも達しダイナマイトが自然発火する事故が相次ぎました。

    作業員たちは冷水を体にかけながら昼夜交代でトンネルを掘り進めたといいます。

    苦難に満ちた工事の様子は作家、吉村昭の「高熱隧道」の舞台にもなりました。

    岩盤温度は、現在、約40度まで下がっていますが、車両内からも熱や温泉のにおいを感じることができました。

    高熱隧道を抜け、橋の上に出たところでいったん停車します。見えてきたのは昭和15年に完成した仙人谷ダムです。

    日本が戦争へと突き進んだ時代に建設が始まり、発電所の工事と合わせて多くの人が犠牲になりました。

    戦後に入ると黒部川のさらに上流でダムや発電所の建設が進みます。黒部川第四発電所は、自然環境を守るためすべて地下に建設されました。

    展示された大型の水車

    直径3メートル余りの大型の水車も展示されています。

    急傾斜をのぼる

    行程のほぼ半ばに位置するのが見どころのひとつ「インクライン」と呼ばれる装置です。大型水車をはじめ発電所建設に必要な資機材を長野県側から運びました。

    斜度34度の急傾斜を20分かけてのぼり、途中ではくだりの車両とすれ違います。

    トンネル掘削で出た大量の岩や土砂を捨てるための「タル沢横坑」からは外に出ることができます。

    この日はあいにくの天気でしたが、晴れた日には剱岳の雄姿を望むことができます。

    タル沢横坑から見える剱岳

    欅平駅を出発してから3時間あまり…。

    高さ日本一の186メートルを誇る黒部ダムに到着しました。

    昭和30年代に行われた工事は「世紀の大事業」と呼ばれ、その電力供給は日本の高度成長を支えました。

    黒部ダム

    ルート内では数々の大事業の軌跡を間近でとらえることができ、その偉業を感じることができます。

    富山県の担当者も新たな観光名所として期待を寄せていました。

    「黒部川上流での電源開発の歴史、先人の軌跡といったものが魅力だと思っていますし、現在もこの場所で発電が行われていて、未来にもつなげていかないといけない場所です。この黒部宇奈月キャニオンルートの魅力を県外にも発信していきたいと考えています」
    (県観光振興室 高田敏暁課長)

      • 林慶介

        富山局 記者

        林慶介

        2001年入局
        金沢局・横浜局・報道局を経て現在は富山局で県政キャップ。出身は富山県高岡市で、地元のイチ押しは寿司と日本酒。

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