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国際女性デー①"フェムテック"県内の状況は

執筆者のアイコン画像櫻井里沙(記者)
2023年03月02日 (木)

3月8日は国連が定める「国際女性デー」

 NHK富山放送局では「あなたと変えたい」をテーマに社会的・文化的に作られた男女の差=「ジェンダー」に関するさまざまな問題についてシリーズでお伝えします。今回のテーマは「フェムテック」です。

「フェムテック」って何?

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フェムテックというのは、女性を意味する「フィメール」と科学技術を意味する「テクノロジー」をあわせた言葉で、女性の健康課題を科学技術で解決することを目指す造語です。
女性は、生理、妊娠、更年期など年齢やライフステージごとに体調の不安や悩みが出てきますが、最近は、さまざまなフェムテックのサービスや製品が開発、販売されています。アプリで問診を受けると処方されたピルが自宅に届くサービスや、生地に使われている特殊な繊維に電流を流して吸い取った血液の量を測り、自分の生理の特徴や異変を把握することができる製品もあります。
民間の調査会社、矢野経済研究所によりますと、おととしの市場規模は642億円あまり、去年は700億円あまりと推計され、成長が続く市場として注目を集めています。健康課題の解決だけではなく、ビジネスチャンスも広がっています。
県内のフェムテックをめぐる現状を取材しました。

サービスの導入進むか

この日富山市で行われたていたのは保険会社が金融会社にフェムテックのオンラインサービスを売り込む商談です。

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女性社員を対象にしたこのサービスは、生理や妊娠、更年期など健康に関する悩みを解消しようと開発されました。

保険会社の社員
「企業の従業員への健康投資って言うのが、すごく注目されています」。


無料通信アプリを使ってスマートフォンなどから気軽に、生理や妊娠、それに更年期などさまざまな健康に関する不安を専門家にチャットで相談できたり、質問に答えると健康上の注意点がわかり、日常生活でできるセルフケアなどについて教えてくれる機能があります。
保険会社では、女性の健康を企業がサポートすることが、働く人たちから選ばれる企業につながることもアピールし、販売を拡大したいと考えています。

SOMPOひまわり生命富山支社 白ヶ澤圭介 支社長
「人手不足とか優秀な人材を確保するっていうことが、どの企業でも言われておりますので、そういった点でやはり女性の活躍が欠かせないと思っていますので、こういったサービスのビジネス展開は広がっていくと思っています」

 

金融会社の社員
「こういったサービスがあることを全く知らなくて、初めてこういったお話をいただいたんですけども、やっぱり女性特有の悩みなど、なかなか相談しにくいものを気軽なツールで24時間相談できるのは、すごく心強い」

 

富山で開発に乗り出す企業も

砺波市に本社がある繊維生地を取り扱う会社では、県の研究所と共同でフェムテック製品の開発を進めています。

koujou.jpg去年から開発に取り組んでいるのが、更年期の症状を緩和するはらまきです。更年期の症状には「ホットフラッシュ」と呼ばれる急に体がほてる症状や、体の冷えなどがあります。下腹部の血流の改善を促して冷えを緩和するとともに、ホットフラッシュが起きて汗をかいても対応できるよう速乾性がある製品を目指しています。さらに肌触りやデザインでもほかの商品との差別化を図っています。
この会社が新事業としてフェムテックの製品開発に乗り出すきっかけの1つになったのは、県のサポートが受けられることでした。

IAAZAJホールディングス 開発営業課 成瀬大輔さん
「弊社も含めまして、正直町工場みたいな昔ながらの企業はフェムテックっていう言葉はまだなじみのない言葉だと思います。今回は最初から県の研究所が協力体制を結んでくれるということでハードルを下げてくれた面があります」

 

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研究開発では、企業が持っていない県の研究所の最新の設備が使えるほか、県が補助している機関からの委託金を活用しています。

富山県産業技術研究開発センター 生活工学研究所 中橋美幸 副主幹研究員
「ヘルスケア製品開発の支援を行おうっていうのは近年重点に置いてきたところなんですが、女性にスポットが当たるようになって、女性が輝ける社会作りと言うことで、女性をターゲットにしたフェムテック製品にも力を入れていこうということになりました」  

 

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現在は保温性を確認する試験などを行っていて、再来年以降の販売を目指しています。

IAAZAJホールディングス 開発営業課 成瀬大輔さん
「まだ本当に始まったばかりの研究開発ですので、まずはしっかりとした検証を行って女性の手助けになるようなものを開発していきたい」

 

更年期とは

一般的に更年期は、おおむね45歳から55歳の閉経前後の時期をいいます。この時期には、女性ホルモン「エストロゲン」の減少などによって、心身の不調が現れることがあります。その症状は「症状のデパート」とも言われるほどさまざまです。めまい・頭痛といった身体的な症状から、イライラや不安などの精神的なものまで多岐にわたり、仕事や日常生活に大きな影響が出る人もいます。

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効果的な治療は?

女性ホルモン「エストロゲン」を薬で補う治療や漢方薬での治療などがあります。更年期かも?と思う症状があったら迷わず産婦人科などで医師の診察を受けると良いと思います。日本女性医学学会のホームページでは、専門医が紹介されています。

経済損失も…

労働経済学が専門の日本女子大学の周燕飛教授によりますと、更年期症状が原因で離職を経験した女性は、40代、50代でおよそ46万人にのぼり、仮に仕事を失った状態が1年間続いた場合、社会全体での経済損失は、およそ4200億円にのぼると推計されています。

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取材を通して感じたこと

働きざかりの女性が退職しないためにはフェムテックの活用が期待され、周囲の理解やサポートが大切です。また離職はしなくても、降格や昇進の辞退など仕事に何らかのマイナスの影響が出た人も多くいて、女性の活躍の大きな障壁になっていると感じます。女性の健康課題について年齢・性別に関係なく理解を深めることは、女性の活躍や働きやすさにつながるだけでなく、企業の生産性の向上にもつながると思いました。

 

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