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「新耐震」でも要注意 徳島で知っておくべき耐震化のポイント

能登半島地震の教訓 南海トラフ巨大地震にどう備えるか
  • 2024年03月13日

元日に起きた能登半島地震では古い木造住宅の倒壊が相次ぎ、多くの犠牲者が出ました。
南海トラフ大地震では津波の被害が想定される徳島県。その津波から逃げる前に命を失わないために。倒壊を免れた住宅の特徴と耐震化のポイントを取材しました。

NHK徳島放送局 ディレクター 古市かな子
        記者      村田修一

能登半島地震で倒壊した建物の多くは・・・

地震で倒壊した住宅

古い木造住宅の倒壊が相次いだ能登半島地震。警察庁によると、犠牲者の40%(1月31日時点)が倒壊した建物の下敷きになったことなどによる「圧死」が原因だったことがわかっています。

3つの耐震基準

木造住宅の耐震基準には建てた年によって呼ばれ方が違います。

「旧耐震」:1981年以前に建てられた住宅
「新耐震」:1981年~2000年に建てられた住宅
「新・新耐震」:2000年以降に建てられた住宅
※新・新耐震は2000年耐震と呼ばれることもある

「旧耐震」基準の住宅は、震度7程度南海トラフ大地震クラスの地震に対して耐震性がないとされています。しかし2000年以前の「新耐震」基準の住宅にも注意が必要です。

耐震基準による被害の差は

木造住宅の耐震化に詳しい徳島大学の小川宏樹教授は、2月に能登半島地震の被災地に入り、建物の被害などを調査しました。
こちらは2000年以前に建てられたとみられる建物。もともと建てられていた場所から10メートルほど動いてしまっていました。

2000年以前に建てられたと見られる建物

一方、2000年以降に建てられた建物。大きな被害を免れていました。

2000年以降に建てられた建物

その理由が、建物を支えていた、およそ50本の杭でした。

「新・新耐震」なにが改正された

木造住宅の耐震化の基準は1995年の阪神淡路大震災を受け、2000年に厳格化されました。

改正されたのは主に3つ

1.壁の配置やバランスを計算すること
2.柱や梁の結合部に適切な金物を使うこと
3.地盤調査を行い適切な基礎を作ること

2000年以前の住宅に暮らす徳島の人は

鳴門市に住む樫原糾さん

徳島県鳴門市に住む樫原糾さん84歳。
1983年に建て売りで住宅を購入。樫原さんは全盲で2人の子どもは独立し今は1人で暮らしています。南海トラフ大地震では、樫原さんが住む鳴門市は最大で震度6強の揺れが想定されています。

樫原さん

地震があるたび避難所の生活がいかに大変かという話しをよく聞く。やっぱりできたら自分の家にいたいと考えている。

そこで樫原さんは住宅の「耐震診断」を受けることにしました。

「耐震診断」とは

倒壊の可能性を4段階で評価する耐震診断

「耐震診断」とは大規模地震に対し、建物の安全性がどの程度あるのかを専門の資格を持つ建築士が構造や劣化を調べて点数化します。
市町村の窓口に申し込むと耐震診断員(建築士)が訪問して2時間程度の現地調査を行い、後日、診断結果を説明します。
徳島県では2000年以前に建てられた住宅を対象に4万円かかる耐震診断を、自己負担が3000円で、一部市町村は無料で受けることができます。

樫原さん宅の点数は0.25

1点未満は倒壊する可能性があるとみられています。樫原さんの自宅の点数は・・・
0.25倒壊の可能性が極めて高いという結果でした。

樫原さん

これは危ないと思った。のんきに考えているのは具合悪いなと思った。

衝撃の点数の訳は

なぜ、この結果になったのか。徳島大学の小川教授が指摘したのは建物の構造上の問題です。

和室には大きな窓

樫原さんの自宅は木造2階建ての3DK。注目したのは「壁の配置」です。
南側にある和室は日当たりをよくするために大きな窓が2つあります。その分、壁が少なく、現在の耐震基準には達していないのです。
 

小川教授

住みやすさで行くと窓があるのが理想だが、構造的に考えると窓の部分に壁があった方がよかった。

樫原さん

何年あと寿命があるか分からないから(耐震化は)無駄ということも考えられるが、地震が実際に来たらそれはそれで無残なことになると思う。

生き延びるための第一歩は

小川教授は、まずは自宅の耐震性を知ることが生き延びるための第一歩と訴えます。

徳島大学 小川教授
必ず地震の揺れがきて建物が崩れるのが先になるので自分の命を守るという点では潰れて下敷きにならないように耐震化をすることが重要。

耐震補強していたおかげで

費用が高額だったり、高齢で次に住む人がいないなどの問題で耐震工事に踏み出せない人もいると思います。それでも、命を守るために耐震改修工事が必要だとわかるケースが能登半島地震の被災地で見つかりました。

耐震化で倒壊を免れた住宅
建物内の筋交い

大規模な火災が起きた石川県の輪島朝市通りの近くにあった住宅。建物を支える「筋交い」を取り付けていたため倒壊を免れていたのです。小川教授は「震度7が来ても倒壊しない保証するためには耐震補強も必須といえる」と話しています。

木造住宅の耐震化の方法 いろいろ

ひとくちに耐震改修と言っても、さまざまな方法があります。

愛知県蒲郡市の住宅課によりますと、本格的な工法では費用は約240万円程度とされていますが「低コスト工法」と呼ばれる方法では約半額・平均112万円に抑えられるとしています※工事の内容によります
 

その一例です。本格的な改修では壁を一度はがして工事する必要がありますが、壁の外から補強することでコストを抑えています。工事の間、引っ越しも必要なく住みながら補強できるのも特徴です。

さらに耐震改修工事は、補助金の活用で自己負担をより少なくできます

徳島県では工事の5分の4を上限に100万円の補助などが出るほか、自治体によっては10万円~50万円の上乗せがあります。
 

耐震ベッド

ほかにも金属のフレームなどでベッドの上部が覆われている「耐震ベッド」

耐震シェルター

住宅内の一部に木材や鉄骨で箱型の空間をつくり安全を確保する「耐震シェルター」も。
家の中で、こうしたスペースが押しつぶされないだけでも命を守ることにつながります

徳島県では耐震ベッドにも40万円・耐震シェルターにも80万円の補助が出ます。
 

実際に対策をとった人は20% 命守る耐震化を

徳島県では古い木造住宅を対象に耐震診断を受けるよう促しています。昨年度まで約2万戸の住宅が耐震診断を受けてきました。ところが実際に対策を行ったのは20%ほどにとどまっているといいます。
能登半島地震の被災地では、倒壊した住宅やブロック塀が道路をふさいでいる様子が相次いでみられました。もし、そこが津波の避難経路だったら・・・耐震化は自分の命だけでなく家族や地域の人を守ることにも繋がります。
今すぐに行動を考えてみてください。

下記リンクから徳島県内の相談窓口一覧が掲載されています。ぜひご確認ください。

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