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徳島・鳴門 移住者の起業を全力サポート その取り組みに密着

  • 2023年09月19日

    人口減少を食い止めるため、徳島県鳴門市が一風変わったイベントを開きました。その名も「NARUTO BOOT CAMP」。人口を増やすだけでなく街も活気づけてもらおうと、まちぐるみで移住者の起業を支援する新たな試みに密着しました。

    NARUTO BOOT CAMPって何?

    「NARUTO BOOT CAMP」は起業を目指す移住者を増やそうと、鳴門市が今年度から始めた試みです。2023年6月から約100日間、鳴門市への移住を検討する人たちにオンライン講座などでビジネスの基礎を学んでもらいます。そして書類やプレゼンテーションの審査を行ったあと、9月に投資家らの前でビジネスプランを提案するコンテストを行い、目に留まれば必要な資金を得るチャンスが与えられます。コンテストには全国各地から7人が参加しました。

    “鳴門らっきょ”に夢を託して

    その1人、藤井隆行さん(50歳)は鳴門らっきょの加工品づくりをビジネスにしようと参加しました。
    20年以上、東京の製紙会社に勤めていましたが、この春、鳴門らっきょの農家のもとで2週間の農業体験に参加したのをきっかけに早期退職を決意しました。小粒でシャキシャキした食感が魅力の鳴門らっきょはまだ加工品が少ないことに目をつけ、ピクルスなどに商品化できないかと考えています。家族は都内に残し、鳴門市で借りたアパートから農家のところに通ってらっきょう作りを教わっています。

    藤井 隆行さん
    会社では50歳になってすごく現場から離れていく感じがしていました。『生』の現場を感じられる仕事を続けたい。自分でやるビジネスにチャレンジしたいと思うようになりました。

    プラン作りに専門家の支援

    参加者たちは5日間、鳴門市に滞在しながらコンテストに向けて準備します。起業の経験がない藤井さんの課題は「マーケティング」でした。主催する鳴門市が招いた日本政策金融公庫や信用保証協会の担当者といっしょに、事前に用意した事業計画の課題を洗い出しました。どんな商品を開発し、それをどうやって売り込むのか。専門家のアドバイスで、藤井さんの計画が徐々に具体化していきました。

    日本政策金融公庫担当者

    価格設定はふだん食べる手ごろのものと、高くても買っちゃうものの2パターンに分かれる。利益から逆算することや、市場規模など買う人のことを考えて予測を立てることも必要。サンプルの売れ行きのデータを取って収支計画を作れば、ビジネスプランに信ぴょう性が出る。

    信用保証協会担当者

    多くのバイヤーは希少価値のある商品を探している。提案している商品はぴったりだから、提案書をしっかり書いて鳴門らっきょの魅力をしっかり伝えてほしい。最初はけちょんけちょんに言われても、1年かけてしっかりやっていけば大丈夫。

    地元の人たちと「人脈」づくり

    そしてプランを実行に移すうえで重要なのが「人脈」です。鳴門市は新たにビジネスを始める人をサポートする「なると移住起業サポーター」を設け、地元の企業経営者や学生、すでに鳴門市に移住して起業した人など11人に委嘱しています。サポーターの任期は令和7年3月までで、市が主催するイベントを通じて移住希望者の相談に無償で応じます。「NARUTO BOOT CAMP」の参加者にもサポーターと交流する機会が設けられ、新たな土地で起業する不安や悩みについてアドバイスを受けました。

    地元経営者

    自分では分からないことでも、街にはそれを知っている人がいる。少しでも悩みがあれば街の人と話をしてコミュニケーションをとっていけばいいと思う。

    投資家の目に留まったのは・・・

    そしてコンテスト当日。7人の参加者からは外国人のファミリー層向けに空き家を使った1棟貸しの宿泊施設や、都市部の学生を対象にしたツアーなどのプランが発表されました。
    藤井さんも鳴門らっきょの食感をいかしながら、漬け液にもこだわった「鳴門らっきょピクルス」を提案し、鳴門らっきょをトップブランドにする夢を語りました。

    そして審査の結果、藤井さんのプランは鳴門の魅力を高めて地域の活性化につながるアイデアだと高く評価され、最優秀賞に選ばれました。

    投資家

    ビジネスプランを聞いて、とてもわくわくした。鳴門らっきょをブランド化することで全国1位を目指せるんじゃないかと、すごく可能性を感じた。

    藤井 隆行さん
    優勝できて素直にうれしい。やはり地元に愛される商品が世の中に広く受け入れられると思うので、鳴門市の良さを出しつつ、みんながわくわくする商品を作っていきたい。

    移住×起業 地域活性化の呼び水に

    人口およそ5万4000人の鳴門市では、平成7年をピークに人口減少が続いています。国立社会保障・人口問題研究所によれば、あと20年もすれば4万人を切ると予想されています。縮んでいく地域を活性化させる呼び水になって欲しいと、鳴門市は起業を目指す移住者に大きな期待を寄せています。

    鳴門市商工政策課 藤瀬 蔵 課長
    県外から移住して、起業される方に対しては鳴門での生活やビジネス環境を知ってもらうのが大事で、地元企業とのネットワーク作りを支援し、企業間の連携を促進するなどして、起業家たちが上手くビジネスをできるよう支えていきたい。そうすることで、外からどんどん鳴門を目指して、いろんな人がさまざまなビジネスを展開するという間口の広い地域になってほしい。

      • 能智春花

        徳島局 記者

        能智春花

        2012年入局 大分局、長崎局、国際放送局、国際部を経て現所属 

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