香川県さぬき市志度と石川県珠洲市“砂地に広がる古い町並み”
- 2024年03月08日
元日に発生した能登半島地震は、北陸の各地で火災や家屋の倒壊、液状化など、甚大な被害を引き起こしました。430キロメートルも離れた土地での大災害ですが、取材を進めていくと香川と能登に地形や地質の共通項がいくつもあることが見えてきました。
石川県珠洲市は「揺れやすい土地」だった
震源に最も近い石川県珠洲市では、震度6強を観測しました。特に深刻だったのが家屋の倒壊。3割以上の建物が全壊しました。
珠洲の被害を拡大させた要因のひとつが、土地の成り立ちにありました。
現在の市役所周辺が描かれた江戸時代末期の絵図を見てみると…。
海岸線に沿うように家々が建ち並び、砂浜の上にあったことがわかります。
海際の軟らかい地盤は地震動が増幅しやすく、「揺れやすい土地」だったのです。
香川県さぬき市志度に共通項が
「ゆう6かがわ」の「とち知り」でもおなじみ、地形や地質のスペシャリスト・香川大学特任教授の長谷川修一さんが注目したのは、さぬき市志度です。
珠洲市中心部とさぬき市志度を見比べると、ほぼ同じ弓なりの海岸線に沿って町があります。
そして、志度を訪れると、さらなる共通項が浮き彫りになりました。
教えてくれたのは、志度寺の学芸部長、野崎恭一さんです。
堤防はなくて、だんだん境内からずっと海へつながっていたというようなイメージがあります。私が子どもの頃は、寺の本堂の裏側で地元の子どもたちが海水浴をしていた記憶があります。
境内には、いまもその痕跡がありました。
これって貝殻ですか?
砂も真砂土のザラザラとしたゴツゴツ感がなくて、どちらかというとサラサラしていますね。
これは、江戸時代の志度と珠洲を描いた絵図です。志度の海際にも砂浜が広がっていました。
珠洲と同じような、地盤が緩い砂浜由来の土地に町が作られていたのです。
さらに、珠洲ではこうした土地の上に残った古い家屋が倒壊し、深刻な人的被害を招きました。
古い町並みが残る志度にも、同じリスクがあると指摘します。
地震動が増幅しやすい軟らかい地盤に、耐震性の低い古い家々が残っているということは、例えば震度6強ぐらいの地震が来ると倒壊する家屋も多く出てきます。
それから海際なので、津波が2時間から3時間後に来るということになった場合、倒壊した家屋から人を助け出して一緒に避難することはかなり難しい。
地震のあとに道が通行できなくなるという危険性もありますね。
長谷川さんは、こうした家屋倒壊は、地区全体の課題だと指摘します。
避難を妨げる家屋倒壊。あしたに備えるためにできることは?
古い町並みは風情がありますが、昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた耐震性の低い家屋が残っています。そういった家屋は倒壊する危険性が高いので、大事なのは、揺れても倒壊しない家が必要条件となります。
建物倒壊の対策には、耐震化が欠かせません。志度では、南海トラフ巨大地震の最大クラスが発生した場合、最大震度6強と想定されています。古い家では、揺れが来た途端に倒れる可能性が高いですが、震度7まで耐えられる、いまの基準に合った耐震化をすれば即座の倒壊を防ぐことができます。
また、空き家の撤去も対策になります。さぬき市によると、市内には令和3年度時点で約1900戸の空き家があります。さぬき市の場合は、解体工事費用の8割、最高160万円まで補助が出ます。県内では、各自治体にこのような制度が設けられています。
行政の補助も活用しながら、起こりうる災害に対してどうしたら強い町にできるか、地域で考えていく必要があります。