ページの本文へ

かがわWEB特集

  1. NHK高松
  2. かがわWEB特集
  3. 避難妨げる液状化 香川県でも危険性の高い地域が 注意点は

避難妨げる液状化 香川県でも危険性の高い地域が 注意点は

  • 2023年04月04日
避難妨げる液状化 その危険性は
2023年3月14日放送

地震の揺れをきっかけに地面から水や砂が噴き出す液状化。香川県内でも、南海トラフ巨大地震が起きれば沿岸部の広い地域で発生する可能性が高いとされています。津波などからの避難を妨げかねない液状化。その特徴について考えます。

地震で発生 液状化とは?

液状化は水を含んでいる砂地盤で起きやすいとされています。こうした地盤、ふだんは砂の粒子と粒子の間に水が満たされバランスが保たれているため、問題はありません。
ところが、地震の揺れによってこのバランスが崩れると、砂の粒子は沈みこむ一方、水が地表に噴き出します。これが液状化です。

液状化を疑似体験 避難の難しさ

液状化が発生すると、地震の後の避難が困難になります。その様子を疑似体験するため、埼玉県の大学に向かいました。迎えてくれたのは、ものつくり大学の的場やすし客員教授。液状化を疑似体験できる「流動床インターフェース」という特殊な装置の開発者です。

流動床インターフェース

この装置は、中に砂が敷き詰められその上に立つことができる構造になっています。まず、スイッチを切った状態で砂の上に乗ってみました。歩いたり跳ねたりしても、砂が崩れることはありません。

五味

やわらかい砂です。砂浜を歩いているような感じですね。

液状化を疑似体験するためスイッチを入れて、砂の中に空気を流し込むと…。

足が砂の中に沈み込んでしまいました

地面が急に柔らかくなり、足が砂の中に沈み込んでしまいました。歩こうとしても沈み込んでうまく進めません。流し込んだ空気によって砂の粒子が分散されることによるものだということです。手で触ってみると、砂がまるで液体のように動きます。これが、液状化と似た状態だといいます。
 

的場やすし客員教授
的場やすし客員教授

液状化では水の中でこの砂粒が1個1個自由に動けるようになります。すると、まるで液体みたいになってしまうんです。この装置の仕組みは実際の液状化と少し違いますが、起きている現象はよく似ています。

五味

ドロドロの田んぼに足を突っ込んだような感覚ですね。この状態ではとても動けないです。

避難しようとしたとき、周囲がこんな状態になっていたら思うようには逃げられないことがよく分かりました。

東日本大震災の液状化

液状化が起きると避難が難しくなるだけではなく、建物が傾いたり地下に埋まっていたものが飛び出したりする被害も考えられます。地中にあるもので、液状化した地面の土より軽いものは浮力が働いて浮き上がり、地面の上に立つものは地面が支えられなくなり沈みます。

浮き上がる砂の中に沈めたバスケットボール

先ほどの装置で、その様子を再現してみました。砂の中に沈めたバスケットボールは軽いので浮き上がりました。

重さで沈んだ鉄アレイ

逆に砂の上に置いた鉄アレイは重さで沈んでいきました。

この装置は実際の液状化と全く同じことを再現しているわけではありませんが、固いと思っていた地面が一瞬で大きく姿を変えてしまう驚きがありました。

液状化は 過去に県内でも

実際に液状化が起きやすいのはどういう場所なのか。注目したのは坂出市。江戸時代から昭和にかけて塩田が広がり塩の一大産地として栄えました。水を含んだ砂の層からなる塩田は、液状化を起こしやすい場所なのです。

坂出市塩業資料館に残されていた写真帳

過去の地震で実際に被害が出た記録が残されていました。坂出市塩業資料館に残されていた写真帳。昭和21年に起きた昭和南海地震の被害を撮影した写真、およそ180枚が収められています。昭和南海地震では、香川県内で317棟が全壊、52人が死亡する被害が出ました。

塩田の地中に埋められた壺が地面から飛び出した様子

建物や堤防が崩れる写真などに混じって、塩田の地中に埋められた壺が地面から飛び出した様子を捉えたものがありました。これは、液状化によるものとみられています。

市の担当課職員
市の担当課職員

昔、塩田でこういったことがあったんだということが資料を通して後世に伝えられていくことが大切だと思っています。

塩田広がっていた坂出の今は?

塩田後の街並み

こうした塩田が広がっていた坂出市はいまどうなっているのでしょうか。地形や地質が専門の香川大学・長谷川修一特任教授とともに現地を歩いてみました。海沿いに向かって進んでいくと、意外な特徴が見えてきました。

長谷川特任教授

この先が少し高くなっているような気がしませんか。

五味アナ
五味

そうですね。ちょっとずつ上がっています。普通は陸から海に向かって海抜が下がっていきますよね。でも、ここでは上がっていますよね。

長谷川特任教授
長谷川特任教授

ここより向こう側は塩田が廃止された後に埋め立てられたので、ちょっと高くなっているということなんです。

盛り土によって、海に向かって高くなる地形

坂出市で塩田が沿岸部に広がっていたのは昭和の時代まで。廃止されたあとは盛り土が施され、現在は住宅や工場などが建ち並んでいます。盛り土によって、海に向かって高くなる地形になっていたのです。

地下に潜む液状化のリスク

盛り土の下には、塩田跡の水を含んだ砂の層が隠れています。東日本大震災の際に液状化が発生した千葉県浦安市の埋め立て地でも、地下水で満たされた干潟の軟弱地盤がありました。長谷川特任教授は、盛り土の下にいまもなお液状化のリスクが潜んでいることを忘れてはいけないと指摘します。

長谷川特任教授
長谷川特任教授

海側の砂地盤の土地ですので液状化リスクが高くなります。埋設管などが液状化で被害を受けますので、水道ガスとかのライフラインが、長期間、下水も含めて不自由になる可能性があります。

液状化リスクは県内各地で

液状化危険度予測図

液状化のリスクがあるのは坂出市だけではありません。こちらは液状化の県内の危険度を県が示した地図です。オレンジ色で示されているのが「危険度がかなり高い」エリア。沿岸部の広い範囲のほか、内陸部にも、危険度の高いエリアが広がっています。地質や震度によっては、内陸部でも液状化が起こりうるからです。

防災・減災などが専門の香川大学・金田義行特任教授によりますと、こうした液状化が起きたときに避難する際は、道路のゆがみや亀裂のほか、電柱やブロック塀が傾いたり壊れたりすることに注意してほしいということです。

また、液状化してもできるだけ素早く逃げられるよう備えも重要だといいます。液状化のハザードマップを確認した上で複数の避難経路を考えておくことや、自力での避難が困難な身近な人をどう助けるかについても確認しておく必要があるとしています。

普段見慣れた風景が一変してしまう液状化。まずは自分が住む土地の歴史を知り、普段から地震が起きたときの対応を考えておく必要がありそうです 。

五味アナウンサーのひとこと
過去の映像を見ても、実際に身の回りがどうなるのかあまり想像ができずにいた「液状化」。疑似体験では、まったく同じ現象ではないものの、砂の地面が大きく姿を変えてしまう不思議さに驚きました。同時に、津波から逃げなくてはいけないのに周囲がこんな状況になっていたら、と恐ろしく感じました。いざというときの選択肢は、複数想像しておくことが大切だと実感します。

  • 五味哲太

    高松放送局アナウンサー

    五味哲太

    2020年から「ゆう6かがわ」のキャスターを担当

  • 内野匡

    高松放送局記者

    内野匡

    平成31年入局。高松市政などを取材。

ページトップに戻る