今回の「すくすく子育て」は、番組に子育ての悩みを寄せてくださったご家族の「その後」を特集します。当時、抱えていた悩みは解決したのでしょうか? その様子を一緒に見ていきましょう。

古坂・あきえの 気になるお悩み家族どうなった?

専門家:
坂上裕子(青山学院大学 教授/発達心理学)
汐見稔幸(東京大学 名誉教授/教育学)
福丸由佳(白梅学園大学 教授/家族心理学)
柴田愛子(保育施設代表)

「どう乗り切る?イヤイヤ期 ~親の関わり方~」より

どう乗り切る?イヤイヤ期 ~親の関わり方~

まずは、「どう乗り切る?イヤイヤ期 ~親の関わり方~(2020年1月18日放送)」。「イヤイヤ期のわが子を見守りたいけど、うまくいかない!」と悩んでいたご家族です。

「どう乗り切る?イヤイヤ期 ~親の関わり方~」

4年前、お子さん(当時2歳6か月)はイヤイヤ期の真っ最中でした。ママがパンを用意しても「イヤ!ごはんがいい」「いらない」、着替えのときも「イヤ!着替えない」と言っていました。困り果てていたママにアドバイスしたのは、坂上裕子さんでした。

イヤイヤ期の乗り切りかたのアドバイスは2つ。「子どもの気持ちを受けとめること」「選択肢を作ってあげること」です。

イヤイヤ期には、子どもの気持ちを受けとめる

坂上裕子さん

例えば、子どもが「ごはんが食べたい」と主張したとき、「今日はパンだよ。食べて」と返すと、子どもは「気持ちを受け止められてない。一方的に要求を押し付けられている」と感じるのではないでしょうか。そこで、「ごはんがいいのね。そうだよね。ごはんあればあげたいんだけどないんだよね、残念だよね」のように返せば、「私が言っていることを受け止めてもらえている」と感じるようになります。

イヤイヤ期には、選択肢を作る

坂上裕子さん

例えば服を着せるとき。親が「着替えて」とお願いすると、答えが「はい」か「いいえ」しかなく、イヤイヤの激しい時期の子どもは、必ず「いいえ」になってしまいます。そこで、「この服とその服、どっちに着替える?」や「オムツ替えとお着替え、どっちを先にする?」のように声かけすると、子どもに「あなたが主体的に選んでいいよ」という姿勢が伝わります。


―― あれから4年、どんなふうに成長しているのでしょう。

お子さんは6歳。この春から小学生になります。妹が生まれ、お姉ちゃんになっていました。
今はファッションにこだわりがあるそうです。

お気に入りの服、「どういうところが好き?」と聞くと「スパンコール」と答えてくれました。

「イヤイヤ期には、選択肢を作る」というアドバイスを実践していました。今では、私が服の選択肢を出すよりも、「自分で準備する」と言って洋服を選べるようになっています。ふと「あれ?自分で選べるようになってきたんだ」と思って、気づかないうちに「イヤイヤ」が終わっていました。イヤイヤ期を卒業して、今では口ゲンカをするまでになっています。てこずることもありますが、これも成長の証だと感じます。
(ママ)

実は今、手を焼いているのは妹(1歳11か月)のほうなんです。イヤイヤ期が到来して、坂上さんのアドバイスを実践中です。

そんなときの救世主がお姉ちゃん。イヤイヤのスイッチが入っているとき「一緒に遊ぼうよ」と誘ってくれて、妹も笑顔に。ママが忙しいときは、妹の歯みがきもしてくれます。ママがだめなときでも、お姉ちゃんが言うとイヤイヤが収まったり、言うことを聞いてくれたりするそうです。

今や頼りになるお姉ちゃんの心強い助けを借りながら、イヤイヤ期の子育てに再び奮闘中です。


鈴木あきえさん(MC)

イヤイヤで悩んでいる方は多いと思いますが、子育ての悩みは、当時は本当に大変ですけど、成長するんですね。すっかりお姉さんになって、妹のお世話もしていて、もう子育てチームの一員ですね。


「きょうだい育ての悩み」より

きょうだい育ての悩み

続いては、「きょうだい育ての悩み(2019年10月19日放送)」。「上の子と下の子、どちらを優先すればいいの?」と悩んでいたご家族です。

「きょうだい育ての悩み」

当時、お兄ちゃん(当時2歳10か月)と妹(当時10か月)が、仲良くできないことが悩みでした。対策として、お兄ちゃんの気持ちを優先して子育てをしていました。上の子のほうがわかっている分、泣いたときに寄り添ってくれて抱きしめてくれたなど、記憶が残ると聞いていたからです。下の子は、記憶に残らないのではないかと思っていました。ただ、お兄ちゃんの気持ちを優先していても、きょうだい育てはうまくいきませんでした。

そんなママさんにアドバイスしたのは汐見稔幸さんです。「下の子はまだ記憶に残らない」という考え方には誤解があると言います。

感情は記憶に残る

汐見稔幸さん

少し気をつけてほしいのは、「0、1、2歳ぐらいの子どもは記憶に残らない」という言説が広がっていることです。そのくらいの時期は、「あのときに誰が何をした」などという細かいエピソードはそんなに残りませんが、感情は残ります。例えば、一生懸命泣いて訴えたのに無視されて寂しかったとか、何もしていないのにお兄ちゃんにたたかれて嫌だったとか、そういうネガティブな感情は残っていくといわれています。また、ポジティブな感情もちゃんと残っていくといわれています。


―― その後、きょうだいはどうなったのでしょうか。

現在、お兄ちゃんは小学1年生、妹は5歳になりました。そして2人には、妹が生まれました。

2人とも末っ子のお世話が大好き。生まれたときから、とてもかわいがっています。

成長するにつれてだんだんお兄ちゃんも妹を受け入れて、一緒に遊べるようになりました。でも、けんかをするときもあります。妹が勝つこともあるんです。ケンカもするけど、前より仲のよい時間が増えました。
(ママ)

ママは、4年前の番組をくり返し100回以上見て、汐見さんの話を暗唱できるまでになったそうです。

「0、1、2歳の子どもは細かなエピソードは記憶に残らないけど、感情は記憶に残る」という話がとても印象に残っています。妹を泣かせっぱなしにしてでも、先にお兄ちゃんの対応をしていましたが、2人に気をかけて、両方とも同じ愛情を注ぐというような気持ちに変えていきました。
(ママ)

いつの間にか、やさしいお兄ちゃんと、お姉ちゃんになっていた2人。末っ子は、1か月ほど前から歩くようになりました。

2人は「だいじょうぶ?」「あぶないよ」と言いながら、手を引いて歩いていました。きょうだい仲よく助け合う様子は、以前は想像もできなかったそうです。

ママ/この番組は、子育てに悩んだときに見返すこともあります。
パパ/最近も、たびたび見ていますね。

今も、きょうだい育てで大変と感じるときは、汐見さんの言葉が支えになっているそうです。


古坂大魔王さん(MC)

きょうだいで仲が悪かった2人が、下の子を一緒に面倒を見ていて、すばらしいですね。

鈴木あきえさん(MC)

ママが子どもたちの関わり方をアップデートして、とてもよかったです。


「パパの子育ての悩み」より

パパの子育ての悩み

次に「パパの子育ての悩み(2020年10月10日放送)」。「パパが子どもに嫌がられてしまう。どうしたらいい?」と悩んでいたご家族です。

「パパの子育ての悩み」

パパは、お子さん(当時1歳1か月)が懐いてくれず悩んでいました。当時、週3日の在宅勤務で、家にいるのをきっかけに少しでも子どもに近づきたいと思っていたんです。子どもがかわいくて、積極的に面倒を見るようにしても、「パパは嫌」「ママがいい」となっていました。

この悩みに答えてくれたのが、福丸由佳さん。パパが子どもの日常に関わることが大事だとアドバイスしました。

“見えない家事・育児”がいっぱい

福丸由佳さん

「見えない家事」という言葉がありますが、「見えない育児」もたくさんあります。子どもの食べこぼしを拭いたり、熱が出たときは病院や保育の手配をしたり。ママは、そのような部分にも関わっていると思います。
決して、パパが育児をしていないわけではありません。でも、ママがどれだけ子どもと過ごして、日常に関わっているかを考えてみましょう。どうしても何かあったら、子どもも「ママ」となってしまうと思います。


―― あれから3年、パパとの関係はどうなったのでしょうか。

今では4歳になったお子さんは、毎日のように「パパ、パパ」と言ってくるそうです。折り紙が好きで、パパと動画を見ながらいろいろな折り方を楽しんでいます。

「パパのこと好き?」と聞くと「うん」と答えます。「どういうところが好き?」と聞くと、パパのいないところで「かお、しゃべる口のところが好き、かわいい」と言ってくれました。パパのことをよく見ているんですね。

パパの心に特に響いたのが福丸さんのアドバイスだったそうです。

たしかに「見えない家事・育児」があると思いました。それまで、だっこやお風呂に入れるなど、メインのところばかりをしようとしていました。ママからは「あなたは、ただお風呂で洗ってるだけ」と言われたこともあります。そのあと体を拭いたり、パジャマを着せたり、頭を乾かしたり、そういう工程があることをわかっていないまま、お風呂に入れた気分になっていたんだと、ハッとした瞬間でした。家事育児のいいとこ取りしかやってこなかったことに気づきました。
(パパ)

アドバイスを受けてから、パパは家事育児全般に向き合うようになりました。

起床後は、洗濯物をたたんで片づけたり、子どもを起こして、朝食を作って食べさせたり。保育園に送るまでの一連をパパが担当しています。

子どもは周りで動いているのをよく見ていて、それがよかったと思います。「あの人はいろいろ私のことやってくれているんだ」と思ってくれたようです。
(パパ)

「見えない家事・育児」も率先してやるようになったパパですが、しつけはママに任せていました。

2人が「ママに見つからないように食べちゃおう」と言いながら食べていたりしますね。見えてるんですけれど、そういうのが、なにか「たのしいのかな」と思いますよ。
(ママ)

共働きのパパ・ママ。協力しながら家事育児を頑張っています。


古坂大魔王さん(MC)

「パパの子育ての悩み」はよく覚えています。私が同じ状況でしたからね。

鈴木あきえさん(MC)

我が家もまさに、「パパでは泣いちゃう」ことが多かったのですが、今ではとても仲よしです。パパも頑張ってすごく変わりましたね。

古坂大魔王さん(MC)

そうですね。4年たつとこんなふうに強くなる。「最初から達人の人はいない」ですよね。


「どうする? 子どもの友だちづくり」より

どうする?子どもの友だちづくり

最後は、「どうする? 子どもの友だちづくり(2019年7月13日放送)」。「知らない子がいると一緒に遊べません。このままで大丈夫?」と悩んでいたご家族です。

「どうする? 子どもの友だちづくり」

当時3歳6か月のお子さんが、友だちと遊ぶことが苦手だと心配していました。例えば公園へ遊びに行くとき、ママと2人のときはご機嫌ですが、他の子の姿が目に入ると「遊ぶのをやめる」と言い出します。知らない子がいると遊べなくなっていたんです。

そんなお子さんを連れて訪ねたのは、柴田愛子(しばた・あいこ)さんが代表を務める保育施設です。知らない子どもたちの中で不安そうにしていましたが、柴田さんは「自分から動き出すまで待ちましょう」と言います。

しばらくママの手を握り、子どもたちが遊ぶのを眺めていましたが、他の子がいなくなると、「おっきいダンゴムシ」と言ってきました。

柴田さんが、「え!いたんだ、ダンゴムシ。よく見つけたね。ダンゴムシ、好き?嫌い?」と聞くと、「嫌い」と言いながらも興味津々です。

そのうちに表情が徐々に明るくなって、いつのまにか他の子と並んで水遊びに夢中になっていました。

遊びに興味がある子と人に興味がある子がいる。気長に見守っていきましょう

柴田愛子さん

遊びに興味がある子と、人に興味がある子がいます。お子さんは、どちらかというと遊びに興味があると思います。水遊びなど、自分が興味を持ったことに関しては、他の子がいても警戒していませんでしたね。いずれ人に興味を持つ時期が来るはずです。気長に見守っていきましょう。


―― その後、友だち関係はどうなったのでしょうか。

現在は、小学2年生。勉強やピアノにも進んで取り組んでいます。今では親友と呼べる存在もできたそうです。ママに話を聞くと、友だち関係で悩んでいたことをすっかり忘れてしまっていたぐらいだと言います。

親友の子とは、一緒に「〇〇をしたい」タイミングが合うと言います。休みの日には一緒にお風呂に入ったり、ごはんを食べたりするそうです。

当時は、人に興味を持つ時期が来るのか心配でしたが、実際は、柴田さんの話の通りになりましたね。小学校の入学前ぐらいから、なんとなく人に興味を持ち始めたと思います。特定の子だけではなく、いろんな子の話が本人から出てくるようなったんです。「〇〇くんと、こういうふうに遊んだよ」という話が、少しずつ出るようになりました。
「あ、人に興味を持ち出すというのは、こういうことなんだ」と、子どもの様子を見ながらアドバイスを思い出しまして、そういう時期が来るんだと実感しました。
(ママ)

そして、今では3歳下の妹がいます。妹はお姉ちゃんとは正反対で、臆することなく誰にでも話しかけるそうです。

姉妹を同じように育てたつもりですが、最初から違いがありましたね。妹は、まさに柴田さんが言っていた「人に興味がある子」だと感じます。誰かが遊んでいると「何しているの?」と入っていったり、逆に輪に入っていないお友だちがいると「こっちおいで」と声をかけたりするんです。みんなで遊ぶのが大好きなんですね。
(ママ)

妹に引っ張られて、友だちの輪が広がることもあるそうです。
友だちの作り方は人それぞれ。姉妹それぞれの持ち味で、人との関係を築いていくんですね。


鈴木あきえさん(MC)

こんな「すくすくタイムマシン」は、今まさに悩んでいるたくさんのママ・パパを救うのではないかと思いますね。

古坂大魔王さん(MC)

私たちも含めてですよね。「人の子の成長は早い」と言うけど、今、一瞬にして見ることができた不思議な気持ちです。すっかりお姉ちゃんになって、遊びながら「親友」と言い合って、「ああなるんだ」と。

鈴木あきえさん(MC)

小学校となると、またぐっと成長するんですね。

古坂大魔王さん(MC)

考えてみると、子どもの年齢と、パパ・ママとしての年数は同じですよね。

鈴木あきえさん(MC)

そうですよね、一緒に成長して、一緒にたのしんでいきたいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです