あれもイヤ、これもイヤのイヤイヤ期。多くのママ・パパが悩む、このイヤイヤ期について2回にわたり特集します。今回は、イヤイヤ期に親はどう関わったらいいのか、あの手この手を考えます。

専門家:
坂上裕子(青山学院大学 准教授/発達心理学)
宮里暁美(お茶の水女子大学 教授/保育学)

イヤイヤ期のわが子を見守りたいけど、うまくいかない!

現在、娘がイヤイヤ期です。ごはんのときも着替えのときも、私が言うことに「イヤ」と繰り返します。例えば朝ごはんのとき、パンを用意しても「イヤ!ごはんがいい」と言います。着替えのときも「イヤ!着替えない」「この服なら園の先生もかわいいって思うよ」「イヤ!」といったやりとりになってしまいます。
こんなときは「あとでね」と声をかけ、子どもの気持ちが切り替わるまで見守るようにしています。ですが、なかなかうまくいきません。忙しいときは、時間がなくて無理矢理になってしまうこともあります。「イヤイヤ期は見守ったほうがいい」と聞きますが難しいと感じます。
(2歳6か月 女の子のママ)

子どもの気持ちを読み取り、気持ちを立て直す手助けを。

回答:坂上裕子さん

「見守る」というのは、何もせずに待つことではありません。イヤイヤをしている子どもは、感情を自分で立て直すことが難しいので、気持ちを立て直すための手助けを必要としています。その手助けのために、子どもの気持ちや訴えたいことを、様子を見ながら読み取り、子どもの気持ちの状態やニーズを把握できるといいですね。「見守る」ことには、「読み取って」「手助けする」ことが含まれていると思います。

どういった関わり方をすればよいでしょう?

まずは、子どもの気持ちを受け止めることを。

回答:坂上裕子さん

まず、「イヤ!」と主張する子どもの気持ちを受け止める言葉をかけてみましょう。
例えば、子どもが「ごはんが食べたい」と主張したとき、「今日はパンだよ。食べて」と返すと、子どもは「気持ちを受け止められてない。一方的に要求を押し付けられている」と感じるのではないでしょうか。そこで、「ごはんがいいのね。そうだよね。ごはんあればあげたいんだけどないんだよね、残念だよね」のように返せば、「私が言っていることを受け止めてもらえている」と感じるようになります。

親の状況を伝える。

回答:坂上裕子さん

子どもの気持ちを言葉で受け止めた後で、例えば、「ママは会社にいけなくて困っているのよ」というように、親の状況や事情を子どもに伝えると、耳を傾けてくれるようになります。

子どもが答えを選べるようにする。

回答:坂上裕子さん

子どもに選択肢を用意して、答えを選べるようにしてみましょう。
例えば服を着せるとき。親が「着替えて」とお願いすると、答えが「はい」か「いいえ」しかなく、イヤイヤの激しい時期の子どもは、必ず「いいえ」になってしまいます。そこで、「この服とその服、どっちに着替える?」や「オムツ替えとお着替え、どっちを先にする?」のように声かけすると、子どもに「あなたが主体的に選んでいいよ」という姿勢が伝わります。子どもは、自分が選んだものであれば、やってくれる確率が高くなると思います。

子どもの気持ちを受け止めて言葉にするのが難しいように感じます。

子どもの言葉を繰り返すだけでもよい。

回答:坂上裕子さん

例えば「パンが食べたい!」のように、自分の気持ちを言葉にできる子であれば、「パンが食べたいのね」と繰り返してあげるだけでもよいでしょう。それだけでも、子どもは「私が言ったことが伝わっている」と確認できます。

「あぁ」「ふ~ん」などでリズムに合わせるのも手。

回答:宮里暁美さん

子どもの気持ちをいつも正しく理解してあげようと身構える必要はありません。子どもが求めているのは、気持ちをわかろうとする姿勢だと思います。例えば、子どもの言葉に対して、「あぁ~」「はぁ~」「ふ~ん」のような相づちをリズムよく合わせてみましょう。すると、「話を聞いているよ、付き合っていくよ」といった雰囲気になり気持ちが和んでいきます。

子どもの気持ちを受け止めてあげることが大切だとわかっています。でも、優しく受け止めるだけでは、わがままになってしまわないか心配です。
(2歳5か月 女の子のママ)

「受け止める」ことは言いなりになることではない。

回答:宮里暁美さん

子どもの気持ちを受け止めることは、子どもの言いなりになることではありません。子どもの言うことに耳を傾け、気持ちを認めてあげることです。その上で、こちらの事情を説明したり、選択肢を示してあげましょう。
例えば、「あのズボンがはきたい!」とイヤイヤしている子に、「あのズボン好きだよね」のように気持ち受け止め、「でも洗濯しているのよ」「これとそれどっちがいい?」と選んでもらう。子どもは好きなズボンを我慢して、他のズボンを履いてくれる。これはわがままではありませんよね。

気持ちを受け止められた経験が思いやりを育てる。

回答:坂上裕子さん

子どもは、自分の気持ちが受け止めてもらえると、「自分の思いが大事にされている」と感じることができます。そのような経験があるからこそ、他の人にも同じように大事なものがあるとわかるようになり、人を大事にできます。気持ちを受け止めてあげること、思いを認めてあげることは、思いやりを育てることにもなるのです。


毎日のイヤイヤにイライラ。どうしたらいい?

もうすぐ3歳になる長女のイヤイヤ期が続いています。言葉も増えて自己主張がはっきりしてきて、イヤイヤをおさめるのに苦労しています。できるだけ冷静に、娘の気持ちが切り替わるように話をするのですが、なかなかうまくいきません。きょうだいの子育て、家事、仕事などで忙しいときは、イライラしてしまい、つい口調が強くなってしまうこともあります。気付けば「早くして!」と口にしている自分がいます。イヤイヤ期は子どもの成長にとって大切な時期だとわかっていますが、どうしてもイライラしてしまい悩んでいます。
(2歳11か月・1歳2か月 女の子のママ)

自分や子どもに対する期待をちょっと下げてみて。

回答:坂上裕子さん

親として、一生懸命だからこそのイライラなんですよね。「がんばってイヤイヤへの正しい対応をしなければ」と思えば思うほど、自分を苦しめてイライラしてしまう。このイヤイヤの時期は、自分や子どもに対する期待を少し下げるぐらいでちょうどいいと思います。

困った状況を“笑い”に変えるのも手。

回答:宮里暁美さん

私の経験では、イヤイヤにイライラをかぶせても、よいことはありません。イライラしてしまうときは、お茶の時間などをとって、クールダウンしてみましょう。
また、真剣に向き合い過ぎるあまりイライラしてしまう部分もあると思います。困った状況を“笑い”などに変えてしまうのもひとつの方法です。


困りごとを笑いに変えるアイデア

イヤイヤの困った状況を笑いに変えるには、どんな方法があるのでしょうか。「すくすくアイデア大賞」で紹介してきたアイデアの中から、困りごとを笑いに変えるアイデアをみてみましょう。

もうママ笑うで?

和歌山県 紀岡さん より

「もう寝る時間よ」と言っても「イヤイヤ」。子どもにしつこくダダをこねられると、怒りたくなりますよね。そんなとき、イライラをクールダウンさせるアイデアです。

イライラしてきたら「あんまりふざけてばっかりいたら、もうママほんまに笑うで!」と言いながら、怒りを笑いに変換して発散します。
子どもと一緒に笑って、スキンシップをして、スッキリできます。

解決!ご近所さん

兵庫県 荒木さん より

子どもたちに「片づけしようか?」と言っても、素直に聞いてくれません。そんなとき、「ご近所さん」になりきって話かけます。

「こんにちは」「どうしたの!?いつもきれいなお部屋なのに」「お片づけをして、一緒にレストランに行きませんか?」のように、他人行事に声をかけるのです。子どもたちは、いつも一緒に過ごしているママが「ご近所さん」として接する設定がおもしろいのか、素直に聞いてくれます。


いろいろと試すうちに、わが家流のアイデアが生まれる。

コメント:宮里暁美さん

笑うと、楽しくなって心の余裕が生まれますよね。でも、紹介されたアイデアをそのまま試しても、うまくいかないことも多いと思います。少しずつ工夫を加えて、わが家流のやり方を探すといいのではないでしょうか。

「聞かせる」対「聞かない」ではない“第3の道”を探す。

コメント:坂上裕子さん

2つのアイデアには、「第3の道を探す」という要素が含まれています。イヤイヤ期は、どうしても「親が言うこと聞かせる」と「子どもが嫌がる・聞かない」が対立してしまいます。ですが、親子で一緒に「困った状況を解決しよう」という立場になり、“第3の道”を探せば対立する必要はないのです。
例えば、近所で買ったお菓子を「子どもはすぐ食べたい」「親は家に帰って手洗いを先に」と対立しそうになったとき、第3の道「早く食べられるように家まで競争しよう」と提案してみる。第3の道を作るのは、意外に第3者がよい場合もあります。ママと子どもで対立していたら、パパがうまく第3の道を提案してみるのもよいでしょう。

イヤイヤがおさまった後、振り返って注意をしない。

コメント:宮里暁美さん

子どもがイヤイヤから落ち着いたとき、後からイヤイヤの行動について振り返って注意をしないでください。ひとつ乗り越えたら、立ち戻らないことが大事です。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

イヤイヤ期は必ず終わりが来る。

坂上裕子さん

イヤイヤ期の渦中にいると、「いつまでこれが続くのだろう」と思えて気が遠くなりますよね。でも、イヤイヤ期は必ず終わりが来ます。トンネルの先に、必ず光が広がっていますので、出口を目がけて歩んでいただければと思います。

イヤイヤ期の終わりは、ふとした瞬間に訪れる。

宮里暁美さん

イヤイヤ期の終わりは“ふとした瞬間”に訪れます。子どもが「もうイヤイヤしない!」とはっきり決めるようなものではなく、「そういえば、最近イヤイヤが少ないな」と気がつくものです。そのときを楽しみにお待ちください。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです