子どもの生活リズム、乱れていませんか? 元気に育つには、バランスよく食べる・寝る・遊ぶことが大事です。でも、なかなかうまくいきませんよね。生活リズムと睡眠について、専門家と考えます。

※すくすく子育て「生活リズムと睡眠」より

専門家:
池田裕一(昭和大学 医学部 教授/小児科医)
工藤佳代子(東京家政大学 ナースリールーム 施設長/保育士)

子どもの睡眠時間が足りているか不安…

息子は保育園に通いはじめて2か月になります。朝はパパが6時ごろ起きて、子どものミルクも準備します。7時ごろ子どもが起きて、パパはミルクをママに渡して、そのまま出社です。ミルクをあげる・保育園の送迎はママの担当です。ママは8時半に仕事で出かけ、帰宅は夕方6時前。それから子どものおやつやごはん、ママの食事が終わるのは7時半ごろ。お風呂は8時過ぎになってしまいます。パパが帰るのは9時ごろ。子どもが寝るのは9時半ごろで、パパが寝かしつけます。寝つきはいいのですが、夜泣きがあって、泣きやまないときはパパがミルクをあげるので寝不足気味です。
保育園がはじまってからはこのような毎日です。子どもの睡眠時間の不足や、きちんと生活リズムを作れているのかが不安です。
(お子さん1歳2か月のパパ・ママ)

今は親子でよいペースを作る時期

回答:工藤佳代子さん

保育園に通いはじめて、まだ2か月なので、あまりあわてないでください。「こうあるべきだ」と決めつけず、親子でちょうどよいペースを作っていく時期だと考えてください。

新しい環境の刺激で、夜泣きが出ることも

回答:工藤佳代子さん

子どもは、新しい環境での生活で、友だちの存在や、目に入ってくる風景、耳に聞こえてくる音など、多くの刺激にさらされています。それは、大人が思っている以上なのです。昼間の刺激が処理しきれずに、夜泣きが出てくることもあります。子どもにとって無理のないことだと思いましょう。

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保育園と連携して子どもの生活の様子を把握する

回答:工藤佳代子さん

保育士に、保育園での子どもの睡眠や食事の様子を聞いてみましょう。また、家での子どもの生活の様子を伝えます。子どものことを、家だけでなく、保育園でのことも含めて、1日を通して把握できるようにしておくのもいいですね。子どもは自分で伝えることができないので、保護者と園で細かく連携していくことが大事です。

保育園の連絡帳で、毎日の睡眠時間を伝えていただいています。最初のころは、泣いている時間が長かったので、昼寝を2回にしてくれていました。最近は慣れてきて、昼ごはんの後に2時間ほど寝ているようです。
1歳の子どもの睡眠時間は11時間必要と聞きますが、何時間ぐらいがいいのでしょう? 睡眠時間が足りなくて影響が出ることはありますか?

1歳ごろに必要な睡眠時間は11~14時間

回答:池田裕一さん

生まれてすぐのころの赤ちゃんは、寝る・起きるを繰り返す「多相性睡眠」です。あわせて16~20時間ぐらい寝ています。3か月ごろから、昼は起きて、夜は長く寝るという昼夜の区別が表れはじめ、徐々に睡眠時間が短くなっていきます。1歳ごろに必要な睡眠時間は11~14時間です。次第に、夜まとまって寝る「単相性睡眠」に近づいていきます。夜泣きや夜間の授乳がなくなってくると、本格的に生活リズムを整えていく時期です。

1~2歳で9時間以下が続くと影響が出ることも。個人差はある

回答:池田裕一さん

1~2歳の場合、睡眠時間がおよそ9時間以下になると、足りないといわれます。脳細胞・ネットワークをつくっている時期なので、その状態が続くと認知や学習面に影響が出ることも考えられます。
ただ、それはあくまで目安で、適切な睡眠時間には個人差があります。たくさん寝ることが必要な子もいれば、短くてもよい子もいます。日中、元気に活動して、ごはんをおいしく食べられていれば、その子にとっての適切な睡眠がとれていると考えていいでしょう。

子どもに合わせた睡眠時間や生活リズムをつくりたいとき、どんなことができますか?

睡眠日誌をつけてみる

回答:池田裕一さん

まずは、「睡眠日誌」をつけてみましょう。寝る時間、食事の時間、遊んだ時間を客観的に記録するものです。どれぐらい睡眠できているか、よくわかります。


今回の相談のパパ・ママに、実際に子どもの睡眠日誌を記入していただきました。1週間分がこちらです。睡眠時間は水色の部分で、保育園の昼寝を含めると、1日11時間以上になっていることがわかります。
俯瞰してみることで、生活の流れがわかり、改善点が見つかりやすくなります。

※夜の睡眠時間の合計は、前夜の就寝時間から当日朝の起床時間で計算

池田裕一さんによると、1歳前後は昼と夜どちらの睡眠が重要ということはなく、昼と夜の睡眠を合わせて足りていればよいそうです。
※最終的には、昼寝がなくなって夜にまとめて長く寝るようになることが大切です

保育園に通いはじめの時期に気をつけることはありますか?

親が疲れてしまうと子どもにも伝わる。無理をしないことも大事

回答:工藤佳代子さん

保育園に通いはじめのころは、親も子もまだ慣れていませんよね。そこで親が無理をし過ぎて疲れたり、余裕がなくなったりすると、それが子どもに伝わり、子どもも不安になってしまいます。最初は慣れないものだと考えて、無理をせず、親も休息、睡眠をとることを第一に考えてください。


遅寝で生活リズムが遅いほうにずれているけど大丈夫?

娘(3歳2か月)の寝る時間が遅いことが気になっています。夕方5時過ぎに保育園から帰って、夕食は6時ごろ。下の子の離乳食があるので、どうしてもその後になり、食事自体にも時間がかかります。9時ごろにお風呂に入って、寝かしつけが夜の10時を過ぎてしまうこともしばしばです。生活リズムが遅いほうにずれてしまっています。
日中は元気に過ごしていますが、子どもは早く寝たほうがいいと聞きます。少し小柄で、もし遅寝が影響しているのであれば、すぐになんとかしたいと思っています。
(お子さん3歳2か月・10か月のママ)

※ご相談のお子さんの睡眠日誌
※夜の睡眠時間の合計は、前夜の就寝時間から当日朝の起床時間で計算
※保育園の昼寝の時間は日によってまちまちで確認せず

サーカディアンリズムと大きくずれると成長や発育に影響が出ることも

回答:池田裕一さん

寝る時間・起きる時間は、朝に目覚めて、夜に眠くなる、地球の自転に合ったリズム(サーカディアンリズム)であることが理想です。そのリズムと大きくずれてしまうと、成長や発育にも少しずつ影響が出ることもあると考えられています。
「寝るのが遅いことが影響して小柄なのかも」と心配されていましたが、直接関係するという研究結果はありません。ですが、寝不足が続くと、小児肥満や、将来の肥満につながることはわかっています。幼児のうちは、夜9時前には寝かせるとよいでしょう。

遅寝・寝不足の子は、午前中に元気に遊べない、おとなしい・不機嫌という印象に

回答:工藤佳代子さん

保育園で、遅寝・寝不足が常態化している子をみていると、元気に遊びたい午前中に楽しく遊べなかったり、本来は違うのにおとなしい・機嫌が悪い性格の子である、と思われたりするなどの印象を受けます。

就学に向けて、早めに朝型へのスイッチを

回答:工藤佳代子さん

小学校へ進んでいくことを考えると、朝早く起きることが必要になってきます。できれば早い段階で、夜型ではなく朝型の生活リズムにスイッチしていったほうがよいでしょう。

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例えば、夕方6時に家に帰ってきて、8時には寝かしつけるのは、ハードルが高いと感じます。寝る前に優先してやったほうがいいことはありますか?

夕食は簡単にしてもいい。寝ることを優先する

回答:池田裕一さん

はじめに寝る時間・起きる時間を決めて、そこから1日のスケジュールを組み立てることが大切です。ごはんを食べて、お風呂に入り、ゆっくり一緒に布団に入ってあげるようなリズムをつくってあげましょう。
お子さんの年齢のころは、夕食に時間がかかる場合が多いので、夕食をある程度食べたら切り上げて、寝る時間を優先してみましょう。そのほうが1日のリズムがよくなるのではないかと思います。本来は、朝と昼にたくさん食べてほしいので、夕食を(例えばおにぎりとみそ汁など)簡単にして、親が用意する負担、子どもが食べる負担を軽くするという手もあります。

子どもの睡眠環境を整えることは、家族全員の睡眠環境を整えること

回答:池田裕一さん

保護者が自分で寝落ちして一緒に寝るのは、ある意味、子どもにとっていちばんの睡眠環境といえます。親の睡眠習慣が、子どもの睡眠習慣に大きく影響するので、気をつけておきましょう。子どもの睡眠環境を整えるのは、家族全員の睡眠環境を整えることです。その分、親は朝早く起きて用事をすませることが必要になりますが、それは、親にとってもよいことなのです。

生活リズムをなおそうとすると、どれぐらいかかるものですか?

生活リズムの改善には時間がかかる

回答:池田裕一さん

ずれが30分程度の生活リズムを改善する場合、少なくとも半月~1か月ぐらいになります。睡眠のリズムを変えるためには、時間がかかるのです。もっと長い時間のずれの場合はもっと時間をかけて徐々にずらしていく必要があります。

生活リズムを整えるポイント

  • 朝(午前)、カーテンを開けて太陽の光を浴びて目覚め、活動すると、夜暗くなったとき眠気が起こります。
  • スムーズに寝ることができるように、夕方から照明を落とし、夜は部屋の明かりを暗くする。
  • 夜は、テレビやスマホ(ブルーライト)を見せない。
  • 寝るときは、できるだけ静かな環境にする。

夏は生活リズムを改善するチャンス

回答:池田裕一さん

夏は、早い時間から太陽がのぼるので、生活リズムを改善するチャンスです。明るくなる時間に合わせて、少しずつ早い時間から起きて、夜型だったリズムを、朝のほうにずらしていくとよいでしょう。


昼寝と夜の睡眠のバランスはどのぐらいがいい?

娘は入眠に時間がかかりすぎて、睡眠不足になっていないか心配です。朝は6時半ごろ自分で目を覚まして起きてきます。朝ごはんのあとは、散歩したり、部屋で遊んだり、日中はいろいろと活動しています。昼ごはんまでは順調ですが、そのあとの昼寝がうまくできません。ぐずってなかなか寝つかず、1時間ぐらいかかることも。
昼寝から起こすのも大変です。夜の睡眠に影響しないように、寝ついてから1時間ぐらいで起こすようにしていますが、完全に起きるまでは機嫌が悪く、1時間ぐらいぐずっていることもあります。そのせいなのか、夜も寝つくまで時間がかかります。すっきり起きるまで昼寝をさせると、2~3時間ぐらいは寝て、その場合も夜寝るのが遅くなってしまいます。
昼寝と夜のバランスはどれぐらいがいいのでしょうか。改善できることはありますか?
(お子さん1歳11か月のママ)

※ご相談のお子さんの睡眠日誌
※夜の睡眠時間の合計は、前夜の就寝時間から当日朝の起床時間で計算
※金曜日、土曜日の昼寝のあとの色が違う時間は起きてからぐずっている時間

夜にまとめて寝ることができないうちは昼寝で補う

回答:池田裕一さん

子どもが生まれたころは、1日のうちに何度も寝る・起きるを繰り返す「多相性睡眠」で、徐々に夜まとめて寝ることができるようになります。その過程で、夜寝るだけでは足りない部分を昼寝で補います。3歳ごろまでは昼寝が必要な場合が多いのですが、もっと早い段階で必要でない子も、5歳ぐらいまで必要な子もいて、個人差があります。

様子を見ながら「昼寝をしない」など試してもよい

回答:池田裕一さん

お子さんの場合は、もしかするとあまり昼寝が必要でなくなっているかもしれません。遊びやごはんなど、日中の活動がきちんとできている形で、少しずつ昼寝を短くしたり、昼寝をしない時期をつくってみたりしてもよいと思います。例えば、様子を見ながら、2~3日試して、また戻してみてもいいでしょう。

午後3時以降は昼寝をさせない

回答:池田裕一さん

大人でも、午後の3時以降に昼寝をすると、夜の睡眠に影響するといわれています。子どもも、少なくとも3時ぐらいまでには昼寝を切り上げましょう。あまり遅い時間まで昼寝させないことも大切です。

いろんなことにアンテナを張っている子は、寝るのに時間がかかる

回答:工藤佳代子さん

寝つきがよかったり、時間がかかったり、いろいろな子がいます。保護者から、寝つきが悪いことで質問を受けることもありますが、「パソコンでアプリがたくさん動いていると、シャットダウンに時間がかかることに似ています」と答えています。
いろんなことにアンテナを張って、いろんな刺激を受けているタイプの子どもは、それらを1つ1つ閉じることに時間がかかるのです。とてもよく遊ぶ子、集中力の高い子は、寝るのに時間がかかることもあります。でも、本人も自分とのつきあい方を感じながら成長している時期なので、寄り添ってあげることがとても大事です。

眠りが浅いタイミングでやさしく起こす

回答:工藤佳代子さん

昼寝から起こすときにぐずるのは、眠りが深く、気持ちよく寝ているときに起こされて、びっくりしているのかもしれません。起こすタイミングを見計らってあげてもいいですね。例えば、寝返りをうったり、少し音に反応したり、そのような様子を見て、眠りが浅いときにやさしく起こしてみましょう。ぐっすり深く眠っているときよりは、眠りから戻ってきやすいと思います。

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子どもがスムーズに眠りに入るためのヒント

ここで、工藤佳代子さんが勤める保育園での昼寝の様子をみながら、子どもがスムーズに眠りに入るためのヒントを聞きました。

解説:工藤佳代子さん

こちらは、お昼寝の場所です。午睡の時間になると、遊ぶ場所とは別にくつろげる場所として、畳のスペースにお布団を敷いています。

夜の睡眠とは違うので、室内はほどよい明るさに調整しています。カーテンを閉めますが、遮光カーテンではなく自然な昼の光が入るようにしています。

子どもたちは自分のお布団が大好きです。午前に思い切り遊び、ごはんでおなかが満たされ、周囲の友だちもみんな眠るので、家庭よりは寝る雰囲気ができやすいと思います。

遊び、ごはんという流れから心地よく休息できていると、「自分の体がこんな感じになったら、お布団にごろんとすると気持ちいい」といった経験が積み重なり、「自分で眠る」習慣が身につきやすいのです。

保育園の昼寝の環境を、家で応用できますか?

子どもがリラックスして眠りたくなるために

回答:工藤佳代子さん

まずは、午前中にたくさん遊ぶこと。食事など、生理的な欲求が満たされること。そして、何より安心できる人と一緒にいると、子どもはリラックスしていきます。そういった環境は、家庭でもつくれると思います。


生活リズムを整えるためのアドバイス

決まった行動・決まった場所・決まったアイテムがあると、眠りに入りやすい

工藤佳代子さん

子どもにもいろいろなこだわりがあります。だっこがよかったり、添い寝でトントンされるのがよかったり、好きな絵本や歌があったり。また、ある程度決まった場所、決まったアイテムがあると眠りに入りやすいと思います。
子育ての中で、親子がべったりとしていられる時間は、それほど長くありません。大変な時期ですが、とても大事な時間でもあるわけです。そう考えながら過ごしていると、大人の側の受け止め方も変わって、子どもの様子も変わっていくのではないでしょうか。

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寝ることがすべての基本になる

池田裕一さん

子どもにとって、寝ることが、体をつくる・脳の発達や認知をよくするなど、すべての基本になります。第一に寝ることを考えて、最初に寝る時間・起きる時間のリズムをつくることが大事です。大人は、活動する時間を中心に調整していきますが、子どもの発達のためには、寝る時間ありきで考えましょう。それから、日中の活動する時間を組み立ててあげることが大切だと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです