子どもと遊び続けると疲れてしまったり、若い世代の親と何を話していいのかわからなかったり。40代での子育ての不安や悩みに耳を傾け、前向きに子育てするためのヒントを考えます。

専門家:
大鷹美子(愛育クリニック/産婦人科医)
倉石哲也(武庫川女子大学 教授)

40歳をこえて体力に自信がない。この先の子育ては大丈夫?

高齢出産を経て、初めての子育てをしている40代のママ・パパたちに、40代の子育てで大変なことを聞いてみました。

  • やっぱり体力ですかね。(お子さん10か月のママ)
  • わかります。子育ての相談で「とりあえず体力と気力でやりきった」と言われると、それは無理だなと思いました。(お子さん3歳のママ)
  • 公園で子どもが走り出しても、まず追いつけませんよね。(お子さん2歳のママ)
  • 年齢的に腰や足にきますね。持久力もなくなっていると感じます。(お子さん3歳のパパ)
  • 育休中で筋力が落ちたかもしれません。私も腰にくるときがあります。(お子さん10か月のパパ)
  • 将来、子どもの運動会で転んでしまいそうです。(お子さん3歳のママ)
  • 今がいちばん若くて、どんどん年をとる一方なので、不安が増すばかりですね。(お子さん10か月のママ)

みなさん、体力面に大きな不安を感じている様子です。これから子どもがますます活発になるので、将来のことも心配だといいます。
40歳をこえて、体力に自信がないのに、この先の子育ては大丈夫でしょうか?

年齢よりも運動習慣の有無が大きな差に

回答:大鷹美子さん

年齢のせいだと考えがちですが、医学的には、40代はそれほど筋力と体力が落ちる時期ではありません。一方で、いろいろな理由で、定期的な運動から遠ざかっている方がとても多い。週に1回、短時間のジョギングでも効果があります。年齢よりも、運動習慣の有無が大きな差になると思います。

運動習慣は体力的にも精神的にもいい

回答:大鷹美子さん

私自身、子どもが0歳のときに一念発起して、子守を夫に任せられる週末に、水泳教室に通いました。時間をつくってでも運動をする習慣を持つことが、体力の増進につながり、自分の時間を持て、精神的にもリフレッシュできると思います。

子育てにメリハリをつける

回答:倉石哲也さん

子どもと遊ぶのも体力づくりだと考えてみましょう。若い世代のママ・パパと同じように、ずっと遊び続けるのは難しいかもしれません。だから、子どもが楽しんでいるときは、子どもの世界を大事にして、見守ってください。子どもがぐずったりするようなら、親の出番です。上手にあやしてあげたり、気持ちをそらしてあげたりして、心のバランスをとってあげる。見守るときと、サポートするときのメリハリをつけるわけです。
子どもを放っておくように考えてしまい、罪悪感を持つ必要はありません。量より質を意識するといいのではないかと思います。

親が高齢で頼れません。どうしたらいい?

親以外の頼れる人・サービスを探す

回答:大鷹美子さん

私が子育てしていたときも、親が高齢でほとんど頼れませんでした。そのため、保育園以外にも、ベビーシッターや家政婦など、いろいろな方のサポートを受けました。

子育て世代包括支援センターを利用する

回答:倉石哲也さん

地域の中にも、子育てをサポートしてくれる人がたくさんいます。今、自治体で最も標準的になっているのは「子育て世代包括支援センター」です。無料でいろいろなアドバイスを受けることができます。自分に合ったサービスを教えてくれるわけです。頼る相手として、とても大事だと思います。

親がほかの人を頼るのは、子どもの成長にもいい

回答:倉石哲也さん

実は、親がほかの人を頼ることは、子どもの成長にもよく、社会性を伸ばすという意味でも大事なことです。たくさんの人たちに支えてもらいながら、チームで子育てしていくことを、より意識してみてください。

子育てが大変な時期と更年期が重なって大変です。

更年期障害の症状はさまざま。深刻な症状になることも

回答:大鷹美子さん

女性の更年期障害は、加齢に伴う女性ホルモンの減少によって心身に不調があらわれるもので、その症状はさまざまです。「ホットフラッシュ(汗をかきやすい・イライラする・眠れないなど)」がよくみられる症状のひとつです。症状が軽くて気がつかずに済む人も多い一方で、症状がつらくて「家事ができない」「仕事に行けない」など、非常に調子が悪くなる場合もあります。
症状が深刻であれば、放っておかずにきちんと対応してください。別の病気がないかどうか、検査したほうがよいでしょう。日常生活に支障があるような強い症状がある場合は、産婦人科を受診してください。


若いママ・パパとのコミュニケーションは、どうしたらいい?

続いて、番組のアンケートでも多くの悩みが寄せられた、若い世代のママ・パパとのコミュニケ-ションについて、40代のママ・パパたちに話を聞きました。

  • 若いママはキラキラ系を目指しているという先入観があって、話題が合うかどうか考えてしまい、あまり会話をしたことがありません。同年代の人がいるとうれしくなります。(お子さん3歳のママ)
  • 児童館でも遠目に見て話せていないですね。(お子さん3歳のパパ)
  • 私も若い方がいたとしても話せないと思います。(お子さん10か月のパパ)
  • 何を話したらいいのかわからないですよね。私は、出身地の方言で「こちらに住んで間もないから、わからないことが多くて」という感じで話しかけています。(お子さん2歳のママ)
  • 最近、若いママと盛り上がったのは、夫の愚痴ですね。鉄板だと思いました。(お子さん10か月のママ)

みなさん、年齢の離れたママ・パパとのコミュニケーションには苦労している様子です。どうしたらいいでしょうか?

そもそもバックグラウンドがみんな違う

回答:大鷹美子さん

私自身も、保育園から中学校まで、子どもの成長にともなって、いろいろな親同士のつきあいがありました。1クラス分の保護者が集まれば、そもそもバックグラウンドがみなさん違います。年齢だけではなく、経歴も、考え方も違います。年齢差に関わらず、相手の話をよく聞いて、少しずつ距離を縮め、人の輪を築いていくことが大切だと思います。

小さなことでもいいので、集まりに対して貢献する

回答:大鷹美子さん

私が考えたのは、ささいなことでもいいので、親同士の集まりで貢献することでした。例えば、父母会があれば、椅子を並べたり、お茶を用意したり、何かしら仕事があります。少し早めに行って、全体がうまくいくためにできることを探すわけです。そのように心がけているうちに、つながりができたり、人の輪の中に入っていけたりすると思います。

多様化の時代、年齢で気を遣う必要はない

回答:倉石哲也さん

まず、40代で子どもを持つことを決断して、子どもを授かり、子育てしていることに自信とプライドを持ってほしいと思います。
年齢は違っても、親として1~2年目であることは変わりありません。この多様化の時代に、いろんな人を受け入れていこうとしています。年齢の差に気を遣う必要はありません。40代・50代の方だからこそ、そのような考えを持って、若い世代と関わっていただきたいと思います。

ほめたり愚痴をこぼしたりで、きっかけをつくる

回答:倉石哲也さん

コミュニケーションが苦手な方は、まずは相手の子どもをほめてみるのはいかがでしょう。その次に、「私はちょっと、やっぱり体力がね」のような愚痴をこぼしてみる。そんな話題を用意しておきましょう。最初のきっかけは、それでいいと思います。一度話をすれば、次に会ったときに「こんにちは」とあいさつできるわけです。


周りからの心ない言葉にどう向き合う?

40代・50代で子どもを持つことをよく思わない人がいます。こそこそと話されているのを子どもも敏感に感じ取っています。心ないことを言う人もいます。周囲の目線や心ない言葉から、子どもをどう守ればいいでしょうか。
(40代のママ)

そのほか、行事などの際に、親が高齢であることを理由に子どもがからかわれたり、いじめにあうのではないかと不安になる、という声も多く聞かれました。
周りからの心ない言葉に、どう向き合ったらいいでしょうか?

幸せな気持ちを前面に出して子どもと接する

回答:大鷹美子さん

もし大人が年齢のことを言うのであれば、おかしいことだと思います。そのような言葉は、真に受けないようにしましょう。
自分の子どもをかわいいと思う気持ちは、ほかにはない感覚だと思います。「あなたのことが本当にかわいくて大好き」「子どもを持って幸せ」という気持ちを前面に出して、前向きに子どもと接することに心をかたむけてください。
親に「年をとっていて、ごめんね」と言われても、子どもはうれしくないと思います。「ごめんね」よりも「大好き」を伝えましょう。

もし、親の年齢を理由に嫌なことを言われて子どもが傷ついてしまったら、どうしたらいいですか?

子どもの気持ちに寄り添い、支えになることを伝える

回答:倉石哲也さん

そんなときは、親として頑張ってほしいと思います。まずは「嫌だったよね」「腹が立ったよね」のように、子どもの気持ちに寄り添うことが大事です。そして、「お母さんはあなたのことが大好きだよ」「大事に思っているよ」「何があっても守るからね」と、子どもを支えることをしっかり伝えていただくことも大事です。

心ない言葉を許さないことを伝える

回答:倉石哲也さん

教育的にも、親として「そんな心ない言葉は許さない」「あなたは言わないでね」と、子どもにしっかり言ってください。親のメッセージとしてきちんと伝えれば、子どもは「守られている」という気持ちになります。今度、心ないことを言われても、「そんなことない。いいところがたくさんある」と言い返すことができるかもしれません。子どもは、そういう力を身につけていくのです。


専門家からのメッセージ

多様な親が子育てする時代。ポジティブな気持ちで子育てを楽しんで

大鷹美子さん

多様性というキーワードがあちこちで聞かれるようになりました。育児に関しても多様性は避けて通れません。いろいろな親が子育てする時代で、年齢に幅があっても当然です。今回、声を届けてくれた40代のママ・パパは、ある意味、時代のトレンドでもあるのです。ポジティブな気持ちで幸せをかみしめて、子育てを楽しんでいただきたいと思います。

50代・60代になっても子育てできる

倉石哲也さん

高齢の親が、とても安定した子育てができているというデータもあります 。落ち着きがあり、言葉でいろんなことを説明しようとします。今回の話を聞かせていただいたママ・パパも、とても落ち着いて、笑いを交えていましたね。ですから、子どもが10代・20代になっても、自分が50代・60代でも子育てできるんだと、前向きな気持ちで子育てしていただきたいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです