高いところに登ってジャンプ! せまいところに入りたがる。
棒が落ちていると必ず拾う。ピンクの服しか着ない……。
大人にはなかなか理解できない、子どもの不思議な行動の数々。
その行動には、どんな意味があるのでしょうか?

なぜこんなことを? 子どもの不思議な行動※すくすく子育て「なぜこんなことを? 子どもの不思議な行動」より

専門家:
柴田愛子(保育施設代表)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

箱におもちゃを入れたり出したり。同じことをなぜ何度も繰り返すの?

1歳3か月の息子が、おもちゃを箱に入れたり出したりします。箱から出して遊ぶのかなと思ったらすぐにおもちゃを戻します。片づけている意識があるのかどうかわからないのですが、缶や箱があれば入れて、入れるとまた出します。同じことを繰り返すこの行動に何か意味があるのでしょうか。
(1歳3か月 男の子のママ)

同じ行動は先を予測できるので、安心して遊ぶことができます。

回答:柴田愛子さん

基本的に子どもは繰り返すことが好きです。繰り返している間は、最初は多分ドキドキしながら試しているのでしょうね。そして、1回できたら「あ、できた。またできた」と楽しくなってくるのでしょう。缶や箱におもちゃを入れたり出したりするのも、片づけている意識は全くないと思います。出して、入れて、また出してと繰り返しているうちに、「あ、音がする」など、いろいろなことに気がついているのだと思います。
同じ行動を繰り返すと、先を予測できるので、子どもは安心して遊ぶことができます。安心して、次に起こることを楽しみに待つことができるのでしょうね。でもそれも、とことん堪能すると飽きて、また次のことに興味を持ち始めます。子どもはいつもマイブームを持っています。

子どもは、繰り返し遊ぶ中で、仮説と実験を繰り返しています。

回答:遠藤利彦さん

子どもの遊びの基本的なパターンは、「繰り返し」と「変化」です。繰り返し同じことをやってみて、それからちょっと変わったことをやってみる。大人目線では「さっきから同じことばかりで、発展性がなくてつまらない」と見えたとしても、実は、その「繰り返し」の中で、少しずつ「変化」を発見している可能性もあります。
子どもが遊びに夢中になっているとき、特定のものに没頭しているときは、科学者と同じような頭の働きが生じているのではないかと考えられています。
「こうしたらさっきと同じことが起こるんじゃないかな?」という仮説を立て、「実際やってみよう」と実験する。すると、「あ、蓋を開けたらまた同じものが中にあった。じゃあ今度は、もう一度蓋を閉めても、次に開けたときに同じものがあるかな?」という仮説をまた立てる。もう一度開けてみたら、また同じものがあった。そのように、仮説を立てて実験するということをずっと繰り返しているわけです。そんな風に見ていただけるといいと思います。

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やってほしくないことは止めてもいいの?
親がやってほしくないことをして遊んでいるときにも、やらせたほうがいいのでしょうか。それとも、やめさせてもいいのでしょうか。例えば、ティッシュペーパーやおしりふきを出し続けると、正直なところもったいないなと思います。
(1歳3か月 男の子のママ)

大人は目的以外に使われるのは嫌ですが、子どもは堪能するまではおさまりません。

回答:柴田愛子さん

大人は、目的以外に使われるとちょっと嫌ですよね。でも、子どもは、自分が興味があるものがおもちゃでも文房具でも、「あ、面白そう!」と思うと光って見えるのだと思います。結局、堪能するまではその探究心はおさまらないので、できればなるべく安いティッシュペーパーを買って、思う存分やってもらって、もったいないと思ったら、それを拾って使うのはいかがでしょうか。

同じものを何度も指さすのはなぜですか?
図鑑などを見ているとき、例えば、りんごだけをずっと繰り返し指さしを続けます。「りんごだよ」と言ってあげるのですが、またりんごを指さすので、それ以外に何を言えばいいのかなと悩みます。繰り返し同じものを指さしているのは、何か意味があるのでしょうか。
(1歳3か月 男の子のママ)

子どもは、「指さし」で親と気持ちを通わせたいと思っている。

回答:遠藤利彦さん

指さしは、「これなあに?」と聞いて、「りんごだよ」と教えてもらうだけが目的ではありません。その名前を知りたいだけではなく、りんごを1つの話題にして、「お母さんと気持ちを通わせたい」「お母さんとお話したい」という気持ちも表れていて、それが何回も繰り返されるんだろうと思います。
リアクションとしては、時々少し応答を変えるといいですね。「りんごだよ」だけでなく、「この前いつ食べたっけ」「おいしかったね」「むいて食べたかな?」など、話を発展させていくといいのではないでしょうか。

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保育現場で聞く 子どものあるある行動

大人にはなかなか理解ができないけれど、子どもたちがよくする行動にはどんなものがあるのでしょうか。保育現場で、日々子どもに関わっているみなさんに聞いてみました。

第3位 棒を持ち歩く


木の枝など棒を持って歩くのが好き。長い棒は引きずりながら歩いたり、手で持てる長さの棒を拾ってたくさん集めたりしています。
子どもは棒状のものが大好きで、棒がついている道具もお気に入りです。
生き物を捕る網も大好き。枝に糸をつけた釣りざおでザリガニ釣りも楽しみます。

コメント:遠藤利彦さん

棒を握って思い通りに動かせるのは、自分の力がこれだけついているということで、誇らしい気持ちの表れかもしれません。それから、自分の手では絶対届かない高いところでも、棒を使えば届くこともあるでしょう。自分の手で触るにはちょっと怖いけど、棒なら触れることもあるかもしれません。釣りざおで糸を垂らせば魚を釣れる、網を付ければ虫を捕れる。棒って、いろいろな遊びの道具の基本中の基本なんだと思います。

第2位 水を勢いよく飛ばす


蛇口をいっぱいにひねって水を勢いよく飛ばすことは、子どもにとって何ものにも代えがたい喜びのようです。

コメント:遠藤利彦さん

水も、子どもにとってはあらゆる可能性に開かれている遊び道具と考えることができます。音も、感触も楽しい。太陽が水に映ると、ピカピカしてキラキラして、すごくきれいですね。水の楽しさは、一人だけでも楽しめますが、たくさんの子どもが同じ楽しみを共有できることも魅力なのかもしれません。

第1位 高いところに登る

高いところに登ったり、そこから飛び降りたり。
「できた!」という体験は楽しいし、魅力的です。

コメント:遠藤利彦さん

赤ちゃんのときには全く動けなかったところから、ハイハイ、よちよち歩きができるようになります。さらに手を使って、高いところに登れるようになるということは、どんどん運動能力が発達していくということです。動けるようになると、実は、見えるものも聞こえるものも違ってきます。今まで見たことのないものを見てみたいという気持ちがあるんだと思います。また、自分よりも少し年齢が上の子どもが高いところから飛び降りるのを見ると、「あんなところから飛び降りることができてすごい」と憧れます。自分はまだできないと思っていたことができそうだなと思ったところで、「じゃあ自分もやってみようかな」と実際にチャレンジします。飛び降りることができると、「お兄ちゃんやお姉ちゃんと同じことができるようになった」と、子どもはそこで誇らしく思うわけです。

こんなあるある行動も

せまいところが大好き!

そのほかにも、壁と棚の隙間やとび箱の中などせまい空間を見つけたり作ったりしてそこに入ります。

おもちゃも全部出します!

おもちゃをカゴから全部出すのも大好きです。


子どもの好奇心につながる「好き」をおおらかに見守って、面白がってほしい。

コメント:柴田愛子さん

私の園でもそうですが、子どもたちの自由なふるまいに、私でも時々あきれてしまうことがあります。でも、子どもたちはとても楽しそうです。子どもたちが楽しいと思うことには、私は意味があると思っています。「今、これに魅力を感じている」ということだと思うのです。「楽しい」「好き」と思うことは、人間にとって大事なことで、それが好奇心につながっていく。
これは、私たち大人にも言えることですが、人間にとって「好き」というのは、つかみどころのない個人差の大きい感覚です。「今、この子はこれが好きなのね」と、おおらかに見守って、面白がってほしいですね。

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もうすぐ3歳の女の子。どうしてピンクの服ばかり着るの?

もうすぐ3歳の娘がいます。あまりにもピンクばかりを上から下まで着たがります。私としてはお兄ちゃんのお下がりの服も着てくれるとうれしいのですが、青とか黒はカッコいい色だから嫌、ピンクはかわいいから着たいと言います。どうしてピンクの服ばかり着るのでしょうか。
(2歳10か月 女の子のママ)

3歳ごろまではピンクが好きでも、4〜5歳になると変わっていくことが多い。

回答:柴田愛子さん

男のきょうだいが多くて家の中にピンクが無いのに、「ピンクのお洋服を買って」という子がうちの園でも多いですね。でも、3歳ぐらいのころはピンクが好きだったのに、不思議と4〜5歳になったら違う色が好きになって、ピンクのピの字も出てこなくなることが多いんです。もうピンクに憧れなくなってしまうのね。4歳ぐらいからちょっとずつ「私は好き」とか「私は嫌い」とか、いろんな意識を持つようになって、好みも変わってくるのではないかと思います。


女の子たちの好きな色は変化する?

年齢によって好きな色は変化するのでしょうか。ある保育園の3~5歳児クラスの女の子に好きな色を聞いてみました。

  • 3歳児クラスは、7人中5人が「ピンクが好き」と答えました。
  • 4歳児クラスは、6人中1人が「ピンクが好き」という結果に。
  • 5歳児クラスは、「ピンクが好き」という子はいませんでした。

子どもたちの色の好みは、年齢によって変化していくようです。


集団の中では「同化」と「差異化」という動きが起きる。

回答:遠藤利彦さん

集団で子どもたちが生活すると、「同化」といって「みんな一緒のことをしようね」「一緒のことをすると仲間だよね」という気持ちが強く働くことがあります。
また、もう一つは「差異化」と言って、「私たち、一人一人違うよね」「得意不得意も、好き嫌いも違うよね」という個性に敏感になっていくこともあります。
年齢が上がると、「差異化」である「一人一人違うよね」という部分が割合強く表れることもありますし、ときには、ピンクを卒業してみんなキラキラしたものがいいという「同化」に傾くこともあります。もうピンクじゃないけど、やっぱり私たち同じ色が好きな仲間よね」という気持ちを共有しているのかもしれません。

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※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです