NHKスペシャル

シリーズ日本新生 橋が道路が壊れていく・・・ インフラ危機を乗り越えろ

ガス管や水道管の破裂、橋の亀裂、公民館や学校の老朽化…ここ数年、全国で「インフラ崩壊」の危機が顕在化し、生活に直結する事故が相次いでいる。
「国土の均衡ある発展」をスローガンに、高度成長期に多くが整備されたインフラ。40年~50年の耐用年数を経て、いま、一斉に老朽化が進んでいるのだ。インフラ全ての維持・更新に必要な費用は、今後40年間で実に600兆円にも達すると試算されている。しかし、これまで国も自治体も有効な対策を講じず、問題を先送りにしてきた。
こうした中、各地で危機を乗り越えようという動きも始まっている。街をコンパクトにすることで、インフラの“選択と集中”を行い、企業誘致や雇用の拡大をめざす自治体。住民自らが道路工事を行うなどして、国の補助金に頼らない自立的な運営に乗り出す自治体も現れている。
人口減少が続き、縮んでいく日本で、持続可能な国作りはどうあるべきか。インフラ危機の現状とそれを克服しようとする取り組みを通して考える。

放送を終えて

皆さんは「自分が住む“まち”の将来」を考えたことがありますか?
今回の取材を始めるまで、私自身は一度もありませんでした。転勤生活が長いこともありますが、行政やデベロッパーが考えることで自分には関係のない話、ぐらいに考えていました。
ところが「インフラの維持コスト」という切り口で見つめると、とたんに自らの問題となって降りかかってきます。総務省の調査では今後40年の間に、今あるインフラの3分の1はお金が足りず、維持できなくなる可能性があります。急激な人口減少を考えるとこれすら楽観的な予測かもしれません。
成長・拡大をひたすら追い求めてきた時代から、持続可能性に重きを置いた「身の丈」を追求すべき時代に入ったようです。
一方、番組でコンパクト化の是非が議論になったように「身の丈」への転換は一種の暴力性も含んでいます。「上からの効率化」に陥らず、参加を通じた自発的な合意形成が本当にできるのか、日本社会にとって大きなチャレンジです。
「地域にあったオリジナルな方法は必ずある」と信じて、まちの将来を描く作業に参加するのも意外に面白いかも、と私は感じるようになりました。皆さんはいかがですか?

あすの日本プロジェクト 記者 古川恭