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夏休みの宿題 生成AIの使い方は? 東京都教育委員会は注意喚起

  • 2023年6月15日

子どもたちの夏休みの宿題と「ChatGPT」など生成AIの扱いをどうしたらよいか。東京都教育委員会は、児童や生徒が夏休みの宿題でAIの回答をコピーして、そのまま提出させないことなど注意喚起を促す通知を都立学校に出していたことがわかりました。生成AIの利活用についての教育現場などの動きをまとめました。

生成AI 読書感想文コンクールでは

「ChatGPT」など生成AIをめぐっては、普及が急速に進む一方で、さまざまなリスクも懸念されています。
小中高校生の読書感想文コンクールを主催する全国学校図書館協議会は、AIを悪用して作成された感想文が応募されてくることを懸念して、2023年度の応募要項を改め、盗作や不適切な引用があった場合に審査の対象外となり、事実上の失格となることがあるとする規定を追記しました。

全国学校図書館協議会 設楽敬一理事長
「本を読んでどう感じたか、その感動を伝える表現力を培うために読書感想文がある。ほかの力を借りるのではなく、自分で考えて、自分で表現してほしい」

夏休みの宿題に生成AI?

東京都教育委員会は生成AIにいかに対応すべきか、ことし4月から9つの都立学校で聞き取りなどを行い、検討してきたということです。
ある学校では、1割ほどの生徒が生成AIを使っていて、都の教育委員会は普及が急速に進むことを想定し、学校側が児童や生徒に注意喚起すべき内容などを3枚の紙にまとめ、6月13日、すべての都立学校に通知しました。

生成AIの回答コピー そのまま提出はダメ

この中で学校教育では、児童や生徒がみずから考える力を育成することが重要だとしています。その上で、夏休みの宿題を出す際には、生成AIの回答をコピーして、そのまま提出させないことや、レポートを課題として出す際には生成AIに頼らず授業中に教員が説明した内容を踏まえて書くよう注意喚起することが必要だとしています。

具体的に注意を促す例として、日記や読書感想文のほか、プログラミング、校内コンテスト用のポスターの作成などを挙げています。

都教育委員会は、今後、国から公表される予定のガイドラインなども踏まえて、新たな周知を出すことも検討しています。

夏休みの宿題に生成AI?

留意点として、ChatGPTは利用規約で「13歳未満は使用不可、18歳未満は保護者の許可が必要」とされていることから、小学生は使用できず、中高生は保護者の許可がないと使用できないと指摘しています。

また、読書感想文や課題に対する考察などでは、AIが書いた文章と人間が書いた文章を見分けるのは困難だとした上で、課題を出す側の工夫も必要になるとしています。

東京都教育庁 篠祐次 企画調整担当部長
「読書感想文であれば、AIの文章をそのままコピーするのではなく文章を参考に、一緒に考える方法もあるかもしれない。最新の技術を子どもたちに使わせないというのではなく、技術の特性を知ってもらったうえで、どう活用するかを家庭や学校で考えてほしい」

“限定的利用から” 暫定的なガイドライン原案

文部科学省は5月から、生成AIの学校現場での取り扱いをめぐって専門家を交えた議論を始めていて、暫定的なガイドラインの原案が分かりました。
関係者によりますと、原案では、生成AIは個人情報の流出や著作権侵害のリスクも懸念されることなどから、活用が有効な場面を検証しながら限定的な利用から始めることが適切だとしています。

具体的には、グループ学習で考えをまとめる途中段階として足りない視点を見つけるために活用することや、英会話の相手として使うことなどは適切と考えられるとしています。

一方、生成AIのメリットやデメリットを学習せずに子どもたちに自由に使わせることや、コンクールの作品やレポートなどで生成AIがつくったものを自分の成果として応募、提出することなどは適切ではないと考えられるとしていて、応募要項を踏まえて十分に指導するように促しています。

文部科学省は専門家などの意見を踏まえて7月上旬までには公表したいとしていますが、その後も科学的な見解などに応じて見直していく方針です。

“活用しながら問題を把握して改善を”

筑波大学の学長で国立大学協会の永田恭介会長は6月12日、協会の総会後の会見に臨み、生成AIについて「活用しながら問題点を正確に把握し、技術の上でも改善しなければならない」と話しました。

国立大学協会は5月29日に生成AIの利活用についてのコメントを公表し、「負の側面を克服しつつ、積極的に活用を試みるべき」とする一方、「現時点ではプライバシー侵害や機密情報の漏えいなどへの懸念があり、社会においても制度やルールが未整備である」としました。
その上で留意すべき点として、レポートや論文などで安易に利用されないような学内のルールづくりや、生成AIが抱える各種の課題解決に向けた研究の推進などを挙げています。

協会の見解について永田会長は、「現在の問題点を挙げたが、半年もたつと、書いたことが陳腐になるぐらいのスピードでAIが進化している。利活用を抑える方向ではなく、課題も科学技術で直す心意気で活用を進めていただきたい」と話していました。

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