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日銀短観 大企業 製造業7期ぶり改善 明るい兆しも人手不足が!

  • 2023年7月4日

7月3日、発表された日銀の短観。

大企業の製造業の景気判断は、7期ぶりに改善しました。半導体不足などが徐々に解消されて自動車の生産が持ち直していることなどが主な要因です。

また、非製造業の景気判断も着実に改善し、ようやく日本経済に明るい兆しが見えてきましたが、足元では、慢性的な人手不足が、企業を悩ませています。

日銀短観の景気判断 製造業7期ぶり改善

日銀の短観
国内の企業9000社あまりに3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査は、ことし5月29日から6月30日にかけて行われ、大企業の製造業の指数はプラス5ポイントと、前回・3月の調査を4ポイント上回り、7期ぶりに改善しました。

半導体など、部品の供給不足が徐々に解消されて自動車の生産が持ち直していることや、価格転嫁によって一部の企業の収益が改善していることが主な要因です。

また、大企業の非製造業の指数はプラス23ポイントと、前回を3ポイント上回り、5期連続の改善でした。

外国人観光客の増加などで、宿泊や飲食サービス業が大きく回復したためで、指数は、コロナ禍前の2019年6月以来、4年ぶりの水準まで改善しました。

町工場に好調の兆し!

日銀短観で示された製造業の明るい兆し。
実際のものづくりの現場では、さらなる景気回復に期待感が高まっています。

東京・江戸川区にある「へら絞り」という技術で金属加工をてがける会社では、金属の棒だけを使って金属板をさまざまな形に加工しています。

売り上げはコロナ禍で一時、半分ほどに落ち込みましたが、去年の年末から回復傾向にあります。
キャンプ人気の高まりを受けて、アウトドア用品を開発したことも回復の要因だとしています。

取材をした、この日も商談に訪れる人の姿が見られました。
訪れた日用品卸問屋の担当者に、金属加工を体験してもらうことで新たな注文につなげようとしていました。

金属加工会社 高橋雅泰 社長
「回復の兆しが見えてきている気がする。みんな笑顔というか町工場もだいぶ活気が戻ってきている」

景気判断 改善も…観光業 人手不足に

景気判断が改善している一方で、多くの企業が悩むのが人手不足です。

東京から新幹線で最速2時間半程度。金沢市の人気の観光地「近江町市場」近くのホテルでは、およそ200ある客室が満室になる日もあるなど、利用客数はコロナ禍前に近い水準まで回復しています。

その一方で、ホテルがいま、頭を悩ませているのが人手不足です。
新型コロナの影響で、去年まで2年連続で従業員の新規採用を見送り、この間に退職した人もいたため、コロナ禍前に100人ほどいたスタッフは、およそ80人に減っています。ホテルでは、給与水準をコロナ禍前より2割ほど上げて求人を出していますが、必要な人手を確保できていない状況だということです。

このため、ホテル内のバーや懐石料理店の営業は団体の予約があった場合に限定しています。

金沢市のホテル 中田鉄夫 マーケティング部長
「体制が整わず苦しい状況です。働きたいという人の応募はありますが、まだまだ足りていません。人手不足はどこのホテルも一緒なので人材の獲得競争も厳しく感じます」

人手不足改善に…調理ロボット

人手不足で需要が高まっているのは、さまざまな作業を人の代わりに行うロボットです。

東京・江東区のベンチャー企業では、5年前から人手不足に悩む飲食店などの要望に応じて、ロボットを開発しています。これまでに開発されたロボットはあわせて7種類です。

このうち、パスタの調理工程のほぼすべてを、自動で行うことができるロボットは、鍋を移動させながら、ゆでた麺をソースや具材とまんべんなく絡ませるなどして、パスタ1食あたり最速45秒で完成させます。このロボットを厨房に導入すると1人から2人分の仕事量をカバーできるとしています。

チャーハンや野菜炒めなどを調理するロボットは、メニューにあわせて具材を入れると加熱の程度や時間を調整して調理するほか、鍋の洗浄も自動で行うということです。このロボットを2台稼働させると調理人1人分の作業を担うことができるということです。

このほかにも、料理を指定した量で自動で盛り付けるロボットの開発も進めています。

会社によりますと、飲食業界では、人手不足に悩む企業が多く、ことし1月から6月までの企業からの問い合わせは、あわせて878件と去年7月から12月までの35件と比較し、大幅に増えています。

需要の急拡大で、会社では受注を断らざるを得なかったり、納入の先送りを依頼したりするケースも出てきているということです。このため、社員の採用を増やしたり、ロボットの組み立て作業を外部に委託したりするなどの対応を急いでいます。

東京のベンチャー企業 白木裕士 社長
「人手不足は深刻化していて、ロボットの開発が追いついていない部分もあるので、人手不足に悩む企業にもっと早く製品を届けていきたい」

日本経済に必要なことは?

専門家は、今回の日銀短観の結果について次のように話していました。

SMBC日興証券 丸山義正 チーフマーケットエコノミスト
「日本経済全体が回復軌道に明確に乗ってきたと考えている。自動車の生産が戻り、製造業全体を押し上げていて、ひとつの転換点を迎えたと言える」

その上で、日本経済に必要なことは何か、専門家は、次のように指摘します。

SMBC日興証券 丸山義正 チーフマーケットエコノミスト
「人手が確保できないということになっていきますと、そのビジネス、企業として先細りになってしまいますので、そこをいかにクリアしていくのかということになると思います。賃上げをして、優れた人材を確保していくのは一つですね。ただ、これはやはり限界がある。加えてあとは生産性を上げていく。いかに人手を使わずにサービスを提供していくのか。そのためには設備投資を相当拡大していく。この2方面で向かっていくってことになるかと思います」

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