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静岡牧之原・お茶のクラフトコーラ 農業・漁業の連携で地域を応援したい!

  • 2024年03月05日

静岡県牧之原市を中心に、農業と漁業を手がける20代の若者4人が1次産業で地域を元気にしたいとあるグループを立ち上げました。その名も「OUEN」(おうえん)!地域を元気にしたいと体験型ツアーや農業×漁業、農業×福祉の連携を目指しています。

地域支援のマルシェに参加

地域に唯一あったスーパーマーケットが閉店したため、お年寄りなどを支援しようと新たに始まった牧之原市の「地頭方マルシェ」。「OUEN」のメンバーも出店していました。

牧之原市のマルシェ

販売していたのは、地域の農家たちでブランド化した「波乗りレモン」や手作りの干し芋、それに野菜などです。商品のPRをきっかけにお年寄りたちとも、和やかに会話していました。

レモンのかぶり物でPR

販売だけでなく、こうした地域とのつながりを大切にしたいと参加を決めたそうです。

夢を追ってふるさとへ

メンバーのうち小杉山京さん(26)と縄巻洋介さん(26)は、牧之原市の高校の同級生。いずれも会社を辞めてふるさとに戻ってきました。もともとやりたかった夢を実現するためです。

小杉山京さん(左)と縄巻洋介さん(右)

(小杉山さん)
「地元を離れたことで牧之原の魅力を再認識したんです。まずは農業で地盤を固め、地域とのつながりを持ちたいと考えています」
(縄巻さん)
「実家はお茶農家でしたが、当時父が体調を崩してしまいした。お茶農家がどんどん減っていく中で、地域に戻ってなんとかしたい、貢献したいと思ったんです」

竜巻被害がきっかけ

一歩を踏み出すきっかけは3年前の竜巻被害だったそうです。小杉山さんの実家も半壊しました。

画像提供:小杉山京さん

市の調査で確認された建物の被害は100棟以上。2人は地域を元気にしたいという思いが強くなったといいます。

クラフトコーラは名刺代わり

2人が最初に取り組んだのがクラフトコーラ。特産のお茶を使っています。

農業をやるにしてもまだ自分たちの農作物がない中、試行錯誤で味を探りました。3種類のスパイスと砂糖にお茶を煮込んで作っています。ネットを中心に瓶250本が完売。地元のクラフトビール会社の力も借りて、さらに自分たちの味に近づけるために進化させています。

「クラフトコーラは、僕たちの名刺代わりなんです。コーラの売り上げで、いろんな作物に挑戦し、観光農園をつくったり、一次産業の現場を体験する観光ツアーを手がけたりしたいと思っています」

クラフトコーラはどんな味なんでしょうか。動画はこちら👇

手作りぶどう畑

縄巻さん実家のお茶畑はぶどう畑に変えました。将来は観光農園にする計画です。

青いネットの中がぶどう畑

試験的にシャインマスカット系など2本のぶどうの木を植えました。この場所でどんな病気になり、どんな虫がつくのか調べるためだそうです。堆肥も自分たちで作っています。

ほとんどが手作りです

これから苗を植え、ことしは15本、将来は100本まで増やす計画です。こうした取り組みもクラフトコーラの売り上げが支えています。

枝を支える黒いコードはお茶畑のものを再利用しています

「牧之原台地は、寒暖差もあってぶどうが育つ場所だと思います。ほかの果物も検討しましたが、ぶどうは特別楽しいんです。木を育てるところから始めるので愛着が湧いてきますし、屋外での作業も気持ちがいいです」

ぶどう作りを学ぶ

観光農園を目指す2人は、日々、研修を重ねています。静岡市葵区の観光ぶどう園、指導するのは、ぶどうづくり30年の大塚剛英さんです。

2人を指導する大塚剛英さん(右)

この日は、ぶどうの枝に均等に栄養分を行き渡らせるのに必要な「芽傷(めきず)」の作業を学んでいました。枝に傷を入れて栄養を滞らせるそうで、枝の芽の付近に小さな傷を入れ込んでいきます。どの枝にもおいしいぶどうを実らせるために、この時期欠かせない作業なんだそうです。2人は自分たちの畑に植えたぶどうの木をイメージして、熱心に質問していました。

(大塚さん)「2人は一生懸命です。ぶどうは植えて5年経たないとお金にならない、そのことを理解してきちんと準備してやっています。農業も地域のことを考えないといけませんが、2人は最初からそこを意識していて、牧之原市の農家からも期待の声が上がっています。自分も励みになるので、2人とやれてうれしいです」

「芽傷」とは? 大塚さんの解説動画はこちら👇

日本一のレモンの産地に!

「OUEN」のもう1人メンバー、堀内虹弥さんはレモンを手がけようとしています。千葉県の出身でもともと無農薬の野菜を作っていました。

堀内虹弥さん

果樹に魅力を感じ、牧之原市のレモンの産地化に貢献したいと地域おこし協力隊として移住しました。農家で作ったブランド「波乗りレモン」のPRを行いながら、レモンを生かしたスイーツづくりなどに取り組んでいます。

(堀内さん)「お茶畑を辞めた農家と交渉してレモンの栽培を始めました。レモンは輸入が多いですが、日本の生産量を増やすためにも、この地域を日本一の産地にしたいです。そして日本のレモンの産地が連携して何か新しいことができればいいなと思っています」

旬の魚一本釣り

残るメンバーは、御前埼沖で旬の魚を一般釣りしている28歳の漁師です。遊漁船を一緒にやっている漁師仲間などとともに名産の干し芋も作っています。東京や静岡の飲食店に直接魚を販売したり、魚のさばき方教室や初心者向けの釣りの指導を行ったりしています。

“今が一番楽しい!”“わくわくする!”

1次産業に新たに参入した4人の若者たち。それぞれの分野で足場を固め、夢を実現させようとしています。

クラフトコーラづくり(画像提供:小杉山京さん)

(小杉山さん)「今が1番おもしろいです。自分でやる、いろんな人と関わる、新しいことが生まれる実感があります。将来は障害者施設とも連携してケアファームを目指したいと考えています」
(縄巻さん)「やりたいことが近づいてきて、わくわくします。大学で水産を学んだので、将来は、農業と漁業の廃棄物をそれぞれ生かすなど循環させたいと思います」

地域を豊かにしたいという思いで関わり始めた4人。それぞれの強みを生かして体験型の観光ツアーなどでの連携を目指しています。若い力の結集で、地域の1次産業の可能性が広がっていくのかもしれません。「OUEN」のメンバーはまだまだ募集中だそうです。頑張って下さいね。

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

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