どうする家康 久保史緒里(乃木坂46)が語る五徳の孤独 全文
- 2023年06月19日
大河ドラマ「どうする家康」で、家康(松本潤さん)の嫡男・信康(細田佳央太さん)の妻である五徳を演じる乃木坂46の久保史緒里さん。五徳は織田信長(岡田准一さん)の娘で、織田家と徳川家をつなぐ重要な役割を担っています。
久保さんは6月10日に浜松市で行われたイベントに登壇しました。撮影現場で五徳の深い孤独感を知ったという久保さん。発言と、終了後にNHK静岡が行ったインタビューを全文、掲載します。
【動画はこちら】(2023年6月12日「NHKニュース たっぷり静岡」放送)
【トークショー】(司会:NHK静岡キャスター 安川侑希)
(久保史緒里さん)
本日はお集まりいただきありがとうございます。どうする家康で五徳役を務めさせていただいております、乃木坂46久保史緒里です。今日は楽しいお話をたくさんできたらと思っております。よろしくお願いします。
(司会)
ー静岡県や浜松とはつながりはありましたか?
グループ(乃木坂46)の活動でミュージックビデオの撮影に来たことがありました。
先ほど大河ドラマ館に行かせていただき、感動が止まらず。劇中で使われた物とかいろいろな物があって、私自身もドキドキ興奮しました。
ー浜松の食べ物は食べましたか?
以前来たときにウナギをいただきました。格別においしかったですね。
ー五徳は三方ヶ原の戦いのあたりからの登場となりました。
そうですね。私自身の撮影で言うと、三方ヶ原の家康の状況について知らせを聞いて、瀬名さんが「まことなのか」というシーンが初めて撮影したシーンでした。ものすごい緊迫感があったので、それだけすごく大きなことだったんだなと、ひしひしと感じました。
ーあとから輪の中に入るのは大変でしたか?
すでに長い間撮影を共にされた皆さんの中に入れていただくという形だったので、すごく緊張しました。でも有村架純さんはじめ皆さんが温かく輪の中に入れてくださって。安心して撮影できました。
ー信康の正室として、最初にオファーがあったときは。
もちろんいつか大河ドラマに出たいという思いはあったんですけれども、まさかという気持ちが大きくて。でも話が進むにつれて、絶対にやりたいなという気持ちがすごく膨らんできました。五徳という役を探されているというお話だったので調べていくうちに、「つかめない人物だな」「全容を知っている人っていないんだろうな」というところにすごく魅力を感じて、是非やりたいなというふうに思いました。
やりがいを感じつつ、すごく若く、年齢を聞くと驚くかもしれないような強さを持っている。この時代を生きていて、早くに徳川家に嫁ぎ、織田家としていろんな教養も受けてきているという面で言うと、もしかすると大人びていてもいいのかなと思ってやってみました。
ーどんなことを考えながら五徳を演じていますか。
徳川家の皆さんと一緒にいるシーンが多いけれども、織田家の人間であるというところがすごく難しい。だからこそ、岡崎で(徳川家と)一緒にいるときに、ちょっと異質な存在であれたらいいなというふうに思っていました。
現場に入ってみて、五徳という人物がいかに孤独だったかというのを知りました。それは久保史緒里としても五徳としても、撮影していて闘いというか、一番葛藤した部分です。
想像以上の孤独でしたね。もちろんすごく優しい家族の中に入れていただいて、とても温かく過ごしていたと思うんですけれども、織田家と徳川家どちらにいても、家族なんだけど家族じゃない、後ろめたさみたいなものがある。でも子どもだからその表現方法が分からなくて、空回りして、悪循環が生まれていく。自分ではどうしようもないというのがすごく苦しかったですね。
ー特に印象に残っているシーンは?
放送済みのシーンで言うと、母上である瀬名さんに「そなたも三河のおなごであろう」と言われるシーン。リハーサルの段階で監督と有村さん含めてお話していたのですが、あのシーンだけ切り取ってみると、五徳がすごく悪いほうに見えるかもしれない。でも五徳の心情としては、ずっと織田家の人間としてプライドを持っていなきゃいけなかったのに対して、「そなたも三河のおなごであろう」と言ってくれたというのがあって。あのときはプライドだったり幼さだったり、自分を守る術として言い返すという方法しか知らなかった五徳ですが、あのことばは時間がたってもずっと心に残っていたんだろうなというふうに思います。今後の五徳にすごく影響を及ぼしたなと思うシーンです。
ー戦で傷ついた人たちを手当てせずにそっぽを向いていたシーンがありましたが、言葉通りではない部分もありましたか?
そうですね。本心で「このような汚い男どもに触れるなんてできません」と言っていたのかというと、たぶんそうじゃなくて。ああいう場が五徳にとって初めてだったし、何をしたらいいのか分からなかった。でも同じぐらいの年の亀姫は進んで動いていて。自分が動けないことへの後ろめたさとか、いろんな感情があって。その場にいるだけでもつらかったんですよね。居るけれども何もできない自分というのが、また孤独をより強くしていったなと思います。
ー撮影の合間はどんな過ごし方を?
緊張感のあるシーンもあるんですけれど、合間合間では和気あいあいといろんな話をさせていただきました。特に岡部大さん(平岩親吉役)がその場をMCのように回してくださるんです。差し入れのドーナツがあったときに、楽しく円になって1人ずつに「どのドーナツが好きですか」って話を岡部さんの回しで話しているときは、家族の一員みたいで楽しかったです。
ー「たっぷり静岡」など東海地方の番組内で放送されている、ドラマ出演者がゆかりの場所を訪れる「大河たび」のナレーションを担当されています。久保さんが興味を持った回は?
浜松市の中でも、浜松八幡宮に松本さんが訪れていったときに、三方ヶ原の戦いのお話が出ていました。「このクスノキに隠れて難を逃れた」というお話をされていたときに、まさにドラマで三方ヶ原の戦いを放送していて。こうやって歴史として残っている物が今も目に見える形であるんだなと知って。行ってみたいなと思いました。
ーナレーションで心がけていることは?
現地に(ドラマ出演者の)皆さんが行かれて、現地の方とお話している関係性とか空気感がすごく温かくてステキだなと思っています。そこを一番にみなさん楽しんでいただけるように、みなさんの耳にすっと、ちょっと入るというのを意識して。あとはみなさんに会話を楽しんでいただけるようにということを意識しています。
ーこれからの目標や夢は。
自分の想像を膨らませて「五徳ってこういう気持ちだったんだ」とか、実在した人物を演じることの難しさを初めて感じました。だからこそ自分の想像で足していくということが大切。つかみきれない部分もあったんですけれども、現場に入って皆さんとの関係性の中に入れていただくことによって「孤独だったんだ」とか「この言葉がうれしかったんだ」と初めて知る。やっと(撮影)現場で知るという経験が本当に貴重でした。またこうして実在する人物を演じてみたいなと思っていますし、今回ご一緒した皆さんともう一度共演させていただくのが今一番の夢です。
ー父・信長役の岡田准一さんはどんな人ですか。
ここだけの秘密ですけれども、怖かった(笑)。岡田さんは本当にお優しくて、次回(第22回)の2人のシーンの撮影の時も「ごめんね。嫌だったら言ってね」という感じでした。でもいざスタジオに入った瞬間に、本当に父上として威厳のある姿だったので。先週(第21回)の五徳が岡崎にいるところに初めて信長が訪れたシーンは、目も合わせられないぐらいの威厳を感じました。その場にいるだけで身が引き締まる思いというか。目が合うと動けなくなっちゃうような感じがありましたね。
ーみなさんにメッセージをお願いします!
まさにここから五徳としての人生も、ほかの皆さんの人生もどんどん動いていく展開になります。五徳の心情の変化に注目していただきたいです。これから先、皆さんも気になるシーンが続いていくと思います。撮影自体も緊張感があって苦しい場面もありましたけれども、何よりもここから先、父上でもある家康がどうなっていくのか、私自身も楽しみにしています。皆さんにも楽しんでいただけましたら。
【インタビュー】(聞き手:NHK静岡記者 三浦佑一)
ー今回浜松に来られたのは初めてでしょうか。
そうですね。駅に降りたのは初めてでした。
ー駅前の家康に関するのぼりやマスコットキャラクター「家康くん」のイラストなどをご覧になったと思います。浜松の街並みはいかがでしたか。
想像以上に家康公という要素が街のいろんなところに散りばめられていて。この街の皆さんが家康公をどれだけ大切にしているかということが、街の周りを見られたちょっとの時間でも強く感じました。
ー午前中に浜松の大河ドラマ館にも行かれたということですが、浜松の皆さん、あるいは浜松に来られる皆さんのドラマに対する期待を感じましたか。
すでにたくさんの方が並ばれていて、ここにいる皆さんが「どうする家康」を楽しみにしていてくださるんだなというのがすごくうれしかったですし、私に気づいてくださった方が「信長の娘だ!」って言ってくださって。知っていただけていたり、「ドラマ見てます」っていうお声もかけていただいたりして。初めての経験で、すごく胸が熱くなりました。
ーきょうの会場の様子はいかがでしたか。
「どうする家康」についてお話をしている時に、すごく真剣な眼差しを向けて、頷いてくださって。私が印象的ですって言ったシーンについても「はーっ」というリアクションを見せてくださって。五徳が出演するシーンが、皆さんにとってもそういうシーンになれてるんだなあと思うと、とてもうれしかったです。
ーここ浜松は音楽の街です。きょうも演奏があったメインテーマ音楽を、久保さんはどのように聞いていますか。
メインテーマがオープニングで流れる時、その中で自分の名前が流れたときのうれしさを覚えています。あと劇中でもメインテーマが流れてきた瞬間の高揚はいつも楽しみにしていて、力強さを感じます。1年間聴き続ける、耳に残る音楽としてすごく大切に聞いています。きっとこのドラマが終わった後も、ずっと忘れられない大事なメインテーマ、大事な音楽だなって思います。
ー五徳は表面的にはツンとして人を突き放すような場面が目立ちます。久保さんは五徳という人物をどのように捉えてきましたか。
ドラマを見てくださっている方にとっては異質でちょっと毛色が違って、どこか徳川家の温かい空気を壊しているように見えるかもしれません。この役を頂いたときからプロデューサーの皆さんとお話をしてきたのが、五徳という人物は優しい人間だったと思うということなんです。若くて純粋だからいろんなものにあこがれて、家族というものにあこがれて。そういう中で人にすごく影響を受けた人物だったと思っています。今後のドラマの展開でも、五徳がいろんな人に影響を受けて、どう心が移り変わっていくのかっていうのが1つのポイントかなと思います。
ー冷淡な感じの演技は、難しくはありませんでしたか。
そうですね。最初に現場に入る前は、どういう五徳で行くかということにすごく悩んだんです。岡崎で徳川家の家族の皆さんを見ていた中で生まれた感情を、素直に表現できないのが五徳の不器用さだと思いました。その不器用さとか若さ故の葛藤みたいなものが皆さんに伝わればいいなと思っていました。
ーどうして瀬名や信康や亀姫、七之助という温かな人に囲まれていながら、人に距離を置くような態度を取ってしまうと思いましたか。
若くして徳川家に嫁いできたこともあって、きっと本音、わがままなように見えて実はわがままじゃない自分の心を話すことができず、裏腹なことを言ってしまうという不器用さがあると思っています。亀姫に(嫁ぎ先となる奥三河の土地について)現実を突きつけるようなことばを告げるシーンも意地悪に見えたかもしれません。でも五徳の心情としては、自分も政略結婚という形で若くして嫁いだということがあったので、現実を教えてあげなきゃいけないっていう使命感があって。その不器用なやり方、伝え方が実は五徳なりの優しさだったりすると思います。難しいバランスだなと思うんですけれども、きっと五徳は五徳なりに徳川家に馴染もうと一生懸命になっているんだと思います。
ー先ほどトークショーで、「徳川家にいても織田家にいても、家族なんだけど家族じゃない」とおっしゃっていました。家族になりきれないもどかしさや孤独感は意識していましたか。
現場に入って、五徳として生きている間はとにかく孤独だったので。実在した人物だったこともあって、こんなに五徳って孤独とひとり戦っていたんだなって思いました。今後の展開できっとその感じも変わっていくと思うのですが。
ー「織田家にいても家族じゃない」とは、どういう意味ですか?
結婚した理由もそうですけれども「織田信長の娘」ということで、世を回していくための駒として見えてしまう部分はあるんです。(信長が)家康公に「織田の家臣になれ」と迫った場面で「さもなくば五徳を連れて帰る」と言うシーンがありましたが、あの時点ではきっと五徳の気持ちは徳川方に寄っていたと思うんです。そのタイミングでまた親に世を回していくための駒として使われてしまう。すごく父を慕っているし、どこまで行っても自分のたった一人の父親だけれど、どこまで行っても自分はそういう存在なんだっていうのを突きつけられた瞬間でしたね。「立て」と言われた時は。
ー第22回、信長からミッションを告げられるシーン。振り返っていかがでしたか。
あの撮影はものすごく緊張感がありましたね。岡田さんがすごく威厳のある父親だったので、もう鼓動が止まりませんでした。あのシーンも、織田家にいても家族じゃないという思いを助長させていると思います。徳川家に気持ちが寄っているタイミングで、「われらの敵になる、もっとも恐るべきは徳川じゃ」という。「なんで今のタイミングで・・・」っていうあのシーンは、「これが五徳の生きる道なんだな。この苦しみを味わい続けなきゃいけないんだな」という始まりなのかもしれないですね。
ー実際は、岡田准一さんはあんな怖い人では・・・。
ああもう全然!岡田准一さんはものすごくお優しくて、リハーサルの時も、亀姫役の當真あみさんや私に「今、若い子の間では何が流行ってるの?」とか聞いてくださって。もう本当にいろんなお話をしていただいて、すごく和気あいあいとしていました。
ーこれからドラマでは信康一家に大きな事件が待っていると思います。振り返ってどんな気持ちで演じてこられましたか。
そうですね。五徳をやらせていただくと決まった段階で史実を知って。この事件をどう描くかがこのドラマを通しての1つ大きなポイントだと思います。私自身が史実を見て読んで感じていた展開とはまた違った、1つすごく大きな展開が待っています。やっぱり五徳が常に揺れ動いていると思うんですよ。徳川家に思いが寄ったり織田家に思いが寄ったり、揺れている中でこの事件が起こってしまうっていうのは、本当に苦しかったですね。だけども、これが現実なんだっていう思いでやりました。
史実を知っている皆さんは、今後の展開を予想されているかと思うんですけど、その史実の答えに向かってどう動いていったのか。それぞれがどういう動き、心の動きをしていたのかというのは、今回の古沢さんの解釈が私はすごく好きで。それは現場でもそういう話をしていたので。皆さんにどう受け取っていただけるのか、緊張します。
ー最後に県民の方にメッセージをお願いします。
浜松、静岡の皆さん、こんにちは。五徳役の久保史緒里です。今回浜松で大河ドラマ館に行ったり、イベントをさせていただいたりして、ドラマ館に行った際には本当にたくさんの方にこのドラマを愛していただいているんだなって言うのをより強く実感することができました。実際に声をかけていただいて、こんな感情に自分でなるとは思っていなかったというぐらい、グッとくるものがありました。この地、浜松というのはドラマ、そして家康公にとってすごく重要な地だと思うのですけれども、そんなゆかりある皆さんとともにこれから先、この作品を一緒に見守っていけるのがすごく嬉しいなあというふうに思うので、ぜひぜひ五徳がこれからどういう動きをするのかというのはもちろんですけれども、このドラマを最後まで皆さんに楽しんでいただけたらなと思います。よろしくお願いします。
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