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富士山 絶景と登山の安全情報 山頂からSNSで発信 世界遺産10年

静岡吉田町 写真家・植田めぐみさん
  • 2023年06月19日

「目に焼き付く富士山頂の景色。下山すると走馬灯のようによみがえって泣いていました」 そう話すのは、静岡県吉田町の写真家、植田めぐみさんです。それ以降、富士山にとりつかれた植田さんは、夏の間、山小屋そして富士山浅間大社奥宮に住み込みで働きながら、10年以上にわたって富士山山頂の写真を撮り続けています。その一方で目にするのは、体調を崩したり、けがをしたりする人々、それにいわゆる“弾丸登山”。植田さんは6年前から、登山者の安全のために山頂の天気を発信しています。世界遺産登録から10年。魅力ある富士山を保つには、何が求められているのでしょうか。

富士山頂 “同じ景色はない”

10年以上富士山頂の写真を撮影 写真家の植田めぐみさん

植田さんは、富士山の魅力をこう話します。

「富士山頂からの景色は、毎日見ても感動します。晴れの日もあれば、雲や雨のときもあります。自然現象なので私たちにはどうすることもできませんが、同じ景色は一つもないんです。ご来光が出るか出ないか、登山者たちはドキドキ。でも見えても見えなくても、みんなでその景色を楽しめるんです」(植田めぐみさん)

登山者たちが見ほれるご来光(撮影 植田めぐみさん)
ご来光とともに雨雲も(撮影 植田めぐみさん)
眼下に雲が広がる(撮影 植田めぐみさん)

奥宮で働きながら撮影

植田さんは、2010年から富士山山頂の山小屋で働くなどしたあと、2017年から富士山浅間大社の奥宮で、噴火を抑える祈願や登山者の安全を祈願するお手伝いをしながら、山頂の写真や動画を撮り続けています。夏の間はずっと山頂での生活です。

富士山浅間大社の奥宮でまかないの仕事(提供 植田めぐみさん)
日々変わる山頂からの風景を撮り続ける(提供 植田めぐみさん)

(植田めぐみさん)

高校生のころ スノーボーダーを目指す
2010年~ 富士山頂の山小屋で働く
2015年~ 御殿場トレイルステーションで働く
2017年~ 富士山浅間大社奥宮で働く

富士山の影が雲海に映し出される影富士(撮影 植田めぐみさん)
天の川も手が届きそう(撮影 植田めぐみさん)
望遠レンズでスカイツリーや東京タワーも(撮影 植田めぐみさん)

世界遺産登録10年の変化は? 

富士山の世界遺産登録から10年。何か変化はあったんでしょうか。

ガイドをするなど富士山を知り尽くす

「山登りを知っている人だけでなく、観光気分で山に登る人が増えました。服装も軽装で、登山に気を配らず写真や動画を目当てにする人、弾丸登山など、登山のルールやマナーを知らない人が多くなったと思います」(植田めぐみさん)

登山者の安全のために

特に気になっているのが、登山者の安全です。植田さんは、神社の仕事の一つとして、救助要員も務めています。

須走口五合目付近

植田さんは、何人もの危険な状態の登山者を目にしています。高山病や強風で動けなくなる人、雨で体温が奪われる人、転んでけがをする人など、天候が悪い日には、1日に10人前後の救助者が出ることもあるといいます。

雷も本当に危険(撮影 植田めぐみさん)

「富士山は天気がよいと、無理なく登れると思いますが、高山病もあるし、天候が悪いと危険な山です。ふもとから、きれいなかさ雲がかかっているのが見えると思います。そのとき山頂では、かぜが山頂を中心に渦巻き、風速が10メートルを超えることもざらです。天候に気を配らなければ、命にもかかわります」(植田めぐみさん)

山頂の情報をSNSで発信!

危険を避けて快適に登山できるようにと、2017年から頂上の天気を毎日、SNSなどで動画を発信しています。

こちら👇の動画は、富士山のかさ雲の動画です。ふもとからはきれいな風景ですが、風が渦巻いているのがわかります。(タイムラプス撮影)

こちら👇の動画では、植田さんが山頂の強風の様子を身をもって伝えています。

ふもとからでは山頂の天候は十分にはわからず、下山するときには天気が急変していることもあるそうです。

「ふもとでも5合目からでも、山頂の天気は雲の上なのでわかりません。世界遺産に登録されて多くの人を受け入れるなら、天候の情報や登山のルール・マナーをもっと情報発信した方がよいと思っています。天候の把握や降りることも考えたスケジュールはもちろん過信せずに自分の安全を守るという意識が必要なんです。美しい富士山だけをPRするのではなく、100%登れる簡単な山じゃないということを知ってもらいたいと思います」

富士山のりんとした姿 楽しんで!

そう訴えるのは、富士山の美しさを多くの人に楽しんでもらいたいからだといいます。

(撮影 植田めぐみさん)

「富士山は単独峰で1人たたずむようなりんとした強さを感じます。どの方向から見ても、だれもが富士山とわかる姿です。登山者にとっては、登れなくても、ご来光が見えなくとも、感動を持って帰れる山です。次はこうしたいと次から次に目標が生まれる、自分の目標がたどりつく場所だと思っています。ぜひ楽しんで快適に登山してほしいです」

(提供 植田めぐみさん)

夏山期間の注意事項

(最低限必要な装備)
登山靴またはトレッキングシューズ、上下セパレートタイプの登山用雨合羽、防寒具、吸汗速乾の肌着、軽くて温度調整のきく服装、ヘッドランプ、水(約 2 リットル)、行動食、ゴミ袋、帽子、トイレのチップ用小銭、携帯電話(携帯電話の電波がつながりにくいため、予備バッテリーを装備)または無線機、荷物防水用の袋等、タオル、ティッシュペーパー、日焼け止め、医薬品、軍手、地図又はガイドブック、コンパス

必要な装備は出発前に必ず確認する。いわゆる観光気分での登山や思いつきによる準備不足の登山は、遭難事故につながりかねないことから絶対にしない。

(富士登山における安全確保のためのガイドラインより抜粋)

( 安全確保に向けた必要な情報)
〇最新気象情報等の入手
・ 登山前に必ず最新の気象情報・予報(天気、気温、風力、気圧、霧、雷など)や警報・注意報の発令状況、火山情報などを気象庁や当協議会のホームページなどで確認し、悪天候が確実な予報時には計画を延期するなど、無理な登山を決行しない。
〇遭難・事故の危険の予防・回避
・ 遭難は疲労や体力不足、装備不備、悪天候、高山病、持病、過密スケジュールなどが主な原因である。
・ 登山初心者は、経験者又は登山ガイドを含むパーティー(団体)での登山形態をとり、単独登山は避ける。

(富士登山における安全確保のためのガイドラインより抜粋)

特に“弾丸登山”は控えて!

静岡・山梨両県は、ことしはコロナ対策の緩和によっていわゆる“弾丸登山”が増えるのではないかと懸念し、以下のような行動は避けるよう呼びかけています。

・夜間は道迷いとなるケースが多く、また、転倒・落石に当たる危険が大きくなることから、夜間登山はなるべく避ける。
・前日までの睡眠が十分でなく、夜登山開始しご来光をめざすといった短時間で休憩を十分にとらない「弾丸登山」は、疲労によるケガや高山病など健康上の問題が生ずる可能性が高いので避ける。
・小屋で睡眠中の他の登山者の迷惑になるので、夜間の山小屋前では騒がない。

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

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