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"お菓子"なスイーツ激似! 不思議な石の博物館 静岡富士宮 NHK

奇石博物館「お菓子な石たち」
  • 2023年06月07日

静岡県富士宮市にある「奇石博物館」では、毎年、違ったテーマで1年を通した企画展を開催しています。去年の企画展「お菓子な石たち」は、おかしに激似?な石を集めた展示で大好評。来館者アンケートで終了を惜しむ声が相次ぎ、この度常設の展示となってお披露目されることになりました。

見た人たちからは「おいしそう!」「本当に石なの?」とおどろきの声が聞かれるという展示を田中洋行アナウンサーが訪ね、奇石博物館の北垣俊明副館長にユニークな石の数々を紹介してもらいました。

年間企画が常設展に

富士宮市にある奇石博物館

富士宮市にある奇石博物館は世界各地の珍しい石を集めた博物館です。

「奇石(きせき)」とは、江戸時代の博物学者が石の専門書の中で盛んに使っていたことばで、文字通り奇妙な石を指します。博物館では不思議な色や形をした石から自然の魅力やおもしろさを知ってほしいと、世界各地から1万5000点を超える奇石を収集し、展示や解説を行っています。

北垣俊明副館長

Q、おかしそっくりの石はそんなに人気だったのですか?

北垣副館長
「去年4月16日からことし4月9日にかけて、おかしやスイーツにちなむ石を集めた企画展 ‟Patisserie Kiseki(パティスリー キセキ)お菓子な石たち”という展示を行いました。館内には『館長へのメッセージ』という来館者アンケートがあるのですが、展示をやめないでほしいという声が多く寄せられたんです」。

アンケートの多くには「おかしの展示をやめないで」の声

来館者の声を受け、「お菓子な石たち」という展示コーナーができました。
展示内容をじっくり見せていただきました。

おかしの石の常設展示コーナー

おまんじゅう?

田中アナ

どう見てもお茶菓子ですね。クロモジ(ようじ)が添えられています。
一口サイズで食べやすそうですが……石なんですか?

北垣副館長

はい。れっきとした石です。

青森県南津軽郡で産出したその名も「まんじゅう石」。火山活動によってできた石です。鳥取県の大山付近でもとれます。
いわゆる「あん」の部分は核と言って、鉄やマンガン成分です。

チョコレートケーキ?

田中アナ

こちらはチョコレートのケーキですね。

赤や黄色のしま模様。イチゴやオレンジピールのペーストがサンドされているようです。
本物だったら、チョコの甘さの中に、イチゴの酸味やピールのほろ苦さを楽しめそう……。

北垣副館長

しま模様が絶妙ですね。

こちらは「縞状鉄鉱石」という鉄鉱石の一種です。
赤や銀色の部分は赤鉄鉱(せきてっこう)と言います。黄金色の部分は虎目石(タイガーアイ)です。

シュガーペーストの乗ったオレンジ?

田中アナ

こちらはオレンジにシュガーペーストを乗せたように見えます。
食後の甘味に一口、食べたいです。

北垣副館長

こちらは「オレンジカルサイト」という石です。

主に炭酸カルシウムでできていて、多彩な結晶形を持っています。
オレンジ色をしていますが、不純物によっては緑や黄色、青などの色が出るんですよ。

高級チョコレートのアソート?

田中アナ

高級チョコレートのアソート!
本当にチョコレートのようですね。

本物なら、1日1個ずつの楽しみです。

北垣副館長

左上、サイコロ状の生チョコのように見えるのは「武石」。となりは「砂漠の花」、一番右は「黄鉄鉱」です。
下の段、左は「砂漠のバラ」、真ん中は「十字石」、右は「ポップコーン石」です。

それぞれ化学組成も違い、結晶の形も違うのでこのような色や形になります。
おもしろいですよね。

シュガードーナッツ?

田中アナ

あえて形をくずしたおしゃれなシュガードーナツ?
ドーナツの食感はふわふわでしょうか?サクサクでしょうか?それとももちもち?

北垣副館長

答えはガチガチですね。石ですから。

青森県の五所川原市で採集された「人形石」です。珪藻の化石を含む地層から採集されていて、石の分類ではオパール質の珪乳石です。

丸いチョコレート菓子?

これは子どもの頃にスーパーで買ったチョコレート菓子にそっくりです。

ピンク色をしているのは「バラ輝石」。茶色は「赤虎目石」です。

バラ輝石はマンガン鉱床に産出する石で、英名ではロードナイトと呼ばれていて人気の石です。赤目虎石は虎目石、タイガーズアイに含まれる鉄分が酸化して暗赤色に変化したものです。

大きなゼリー?

田中アナ

シンプルなゼリーもいいですね。

このサイズでもペロリといける人もいるのではないでしょうか?

北垣副館長

こちらは「方解石」です。

氷州石とも言うのですが、これほど大きくて無色透明のものは極めて珍しく、標本としても価値があります。ユニークな展示ですが、石の質感をじっくり見てほしいですね。

奇石から感じてほしいこと

田中アナ

まだまだありますが、展示はじっくり見ているとだ液が出てきそうです。

どれも自然の造形ということに驚くばかりですが、展示からどんなことを感じてほしいのでしょうか?

北垣副館長

展示の中に「河原の丸い石ころ」というものがあります。

北垣副館長

沼津市の狩野川の河口付近の石で、大半は火山の噴出物です。
でもこうやって並べてみると、チョコレートなどに見えてきますよね?

身近な石を拾ってケースにいれるだけでユニークな標本ができるので、子どもだけでなく大人もそんな遊びを楽しんでほしいですね。
石を調べることで、その土地の成り立ちや、地域の特産とのつながりがわかったりするので、自然や人との関わりについての理解が進むと思います。

自然が長い時間をかけてじっくりと作り上げたスイーツ。ぜひいろんな想像をふくらませてお楽しみください(笑)

人は美しいものや不思議なものにひかれますが、宝石に代表されるように石や鉱物も古くから多くの人を魅了してきました。最近は天然石や鉱物なども人気で、ミネラルショーと呼ばれる販売会や展示会に多くの人が集まりますが、今回博物館を訪問して、ちょっと見方を変えることで身近な石にも多くの不思議や魅力があることを感じました。

スタッフは日々石を観察しておもしろさを発見して展示に工夫を加えているそうです。今年の企画展のテーマは、去年63年ぶりに追加されたことで話題になった“誕生石”ということで、展示の中では毎月その月の誕生石をピックアップして紹介しています。

奇石を入り口に自然への理解を深める楽しさ、みなさんも感じてみてはいかがでしょうか?

田中洋行アナウンサー

筆者 田中洋行アナウンサー(左)と北垣俊明副館長(右)
  • 田中 洋行(たなか ひろゆき)

    NHK静岡 アナウンサー

    田中 洋行(たなか ひろゆき)

    大学時代の専門は海の生きものでしたが、自然好きが高じて、最近は鉱物にも興味が。奇石博物館の海洋生物の化石にもロマンを感じました。

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