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静岡戸田“海業”観光・レジャー・グルメで漁港が進化する?

  • 2023年05月08日

海業(うみぎょう)って聞いたことありますか?

漁業を中心に、観光やグルメなど地域の資源を生かして漁村の活性化につなげようという取り組みのことです。

深海魚で知られる静岡県沼津市の戸田(へだ)地区は、漁港をヨットやプレジャーボートなどを楽しむ人たちにも利用してもらい、地域の再生を目指そうとしています。

なぜ今 漁港の進化?

伊豆半島の西側、沼津市の中心部から約30キロの戸田地区。穏やかな漁港のそばに、海業を推進する戸田観光協会があります。

戸田観光協会 看板には特産のタカアシガニも

中心になっているのは、事務局長の佐藤寿美さんです。大阪で金融関係の仕事をしていましたが、6年前にふるさとの戸田に戻ってきました。

事務局長の佐藤寿美さん

「戸田は美しい海水浴場があって賑わいを見せていました。しかし、バブルのころをピークに観光客も人口も減っているし、高速船の定期航路も廃止されました。深海のタカアシガニという特産のグルメもあるので、海のレジャーで人を呼び込めたらと思っています。とにかく地域を元気にしたいんです」(佐藤寿美さん)

そもそも海業って?

水産庁は、海を中心に地域を元気にする海業を推進しています。この4月から全国12の漁港をモデル地区に選び、水産業や観光業それに飲食業などが連携することで、漁村の交流人口を増やそうとしています。

全国の漁村には年間2000万人が買い物などに訪れているということで、水産庁は海にはその魅力があると期待しています。

戸田港どう進化?

そのモデル地区に選ばれた戸田港はどう変わろうとしているのでしょうか。

提案では、漁港におけるプレジャーボートやヨットの受け入れ事業化。海の駅を活用したヨットレース等の開催、大型クルーズ船などの招致とされています。

メリットは“平水区域”

佐藤さんが提案するには、大きな理由がありました。駿河湾の奥、静岡市の清水と沼津市の戸田を結んだ海域は、“平水区域”に定められています。平水区域とは、年間を通して穏やかな海で、ヨットなどの船舶は、必要最小限の構造で航行できるそうです。

赤色の部分が平水区域 (提供 日本小型船舶検査機構)

「私が子どものころは、船で清水まで行って、動物園や水族館を訪れました。それだけ穏やかな海なんです。ヨットなどに利用してもらうには大きなメリットがあると考えています」(佐藤寿美さん)

航路廃止を再利用!

港には、使えるものが残っていました。浮き桟橋です。

浮き桟橋

この浮き桟橋は、9年前まで沼津港と戸田港を結ぶ高速船が使っていました。高速船は住民や観光客の足となる定期航路でしたが、利用客の減少で定期航路は廃止されました。

佐藤さんは桟橋を所有する市と協力してこの浮き桟橋を再利用しようとしています。それは、道の駅ならぬ「海の駅」。これに指定されると、清水港や沼津港とともにヨットやプレジャーボートの回遊が狙えるのではないかと考えています。

どう実現する!?

漁港は漁師さんたちの仕事場。簡単に変わるのでしょうか。観光協会は、これまでの実績を生かそうとしています。

3年前から、戸田地区での宿泊か食事を条件に、無料で浮桟橋に停泊できるサービスを実証実験として行っています。いわば船の公共の駐車スペース。年間180隻が利用しています。

清水港を結ぶヨットレース(提供 戸田観光協会) 

4年前からは、平水区域を利用してヨットレースを開催。コロナ禍にもかかわらず、10隻以上のヨットが参加し、最大120人が戸田に宿泊しました。このときには、ヨットを沖合に止めて、小さな漁船で送り迎えをしたそうです。ことしも5月27日に開催予定で、レースを観戦するクルーズ船やヨットの乗船体験も計画されています。

いろんな人が漁港を使う時代

戸田漁協は、知る人ぞ知る日本有数の漁船団が所属しています。漁協によると、巻き網漁をする3つの船団は、水揚げ量は日本ナンバー1~3までを占めているそうです。その一方で小型の漁船は高齢化などの影響で数を減らしています。

「戸田には日本有数の漁船団がいますので、漁業、漁船に影響がでないのであれば、協力を惜しみません。小型の漁船を中心に漁師の数は減り、魚も昔みたいに取れなくなっています。時代はもう変わっています。新しい人たち、いろんな人たちが港を使う時代なんです。漁業とマリーンレジャーを半分ずつ使う港になればいいと思います」(戸田漁協・塩崎敏巳組合長)

目指すは 清水港と焼津港の機能!

「海洋レクリエーションの魅力を高めていかないとダメだと思います。もちろん何をするにも、漁港を利用している漁船に影響がでないというのが前提です。少しずつでも実績を積み上げて前進するしかありません。いろんな人たちと足並みをそろえて取り組んで行きたいと思います。可能なら商業港としての清水港、漁港としての焼津港を足したような機能の港を目指したいと考えています」(佐藤寿美さん)

マリーナの建設も

港の一角では、マリーナの開設準備が進められています。

民間の企業がプレジャーボートの陸揚げを計画しています。最近では戸田地区でも空き家を別荘代わりに購入する人が増えているといいます。そうした富裕層をターゲットにしています。

漁港をさらに進化させ、地域の活性化の拠点とできるのか、地域の再生を目指して一歩一歩進もうとしていました。

 

  • 長尾吉郎

    静岡局 ニュースデスク

    長尾吉郎

    1992年NHK入局
    初任地大分局で釣り覚える
    報道局社会部・広報局など
    ヤエンによるイカ釣り好き

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