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ふるさとのイラスト“わらべ絵”を訪ねて NHK静岡 望月豊アナ

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  • 2023年05月16日

子どもたちの心や姿を絵にした”わらべ絵”。
伊東市の喜田川昌之さんは、84歳のいまも、子どもの心を描き続けています。
喜田川さんのミュージアムを訪ねました。

みんながなつかしむ  “わらべ絵”

 “わらべ絵”、とは子どもの目や心で描いた風景。

 なつかしさだったり、子どものあどけなさだったり。
 名付けたのは、イラストレーターの喜田川昌之さん。
 半世紀以上にわたって“わらべ絵”を描き続けてきました。

 

伊東市八幡野「喜田川昌之わらべ絵館」を訪ねる

喜田川さんと“わらべ絵”たちに会いに、伊東市八幡野を訪ねました。 
「喜田川昌之わらべ絵館」は、伊豆急伊豆高原駅から桜並木の坂を登って10分ほどの所にあります。

東京で絵画教室を開くかたわらイラストレーターとして活動していた喜田川さんが19年前に移り住み、自宅とアトリエを兼ねて開館しました。

伊東という立地から神奈川県から訪れる人が多いそうですが、私が訪れた時は、湖西市から来たというご夫妻の姿も。あいにくの雨にも関わらず、記帳には多くの名前が記されていました。

喜田川さんとお会いするのは今回が2回目。18年前、喜田川さんの出身地・三重県で個展を開かれたとき、私は津放送局に勤務していて、インタビューをさせて頂いたのが最初の出会いです。
喜田川さんも当時伊東に引っ越されたばかりで、収録の合間に、お互いのふるさとで暮らしている不思議な縁を笑い合ったのを覚えています。

18年前と変わらず優しく出迎えてくれました

  “わらべ絵”とは喜田川さんが名付けたもの。
その思いをこう語ります。

 「誰にでも子どもの時代があります。みんな自然の恵みをうけながら、まわりの大人たちに育まれ生長してきたんです。子どもの頃というのは、一日一日がまぶしかったですよ。思い出はつきない。そういう忘れられない“こころ”の光景を、“わらべ絵”と名付けたんです。」 
 


喜田川さんは、子どもの頃の“あそび”や、待ち遠しかった「お正月」「おまつり」など、昭和の子どもたちの光景を描き続けています。
戦前に生まれた喜田川さんの見た風景は、いまとは全く異なり、いまの子どもたちは虫採りも魚採りもなかなか機会がありません。

それなのに、世代を超えて共感を与えるのは、きっといつの時代でも変わらない子どもの心や表情を“わらべ絵”が映し出しているからでしょう。

 

つぎつぎと生み出される“わらべ絵”たち

最初の出会いから18年。その後も喜田川さんは積極的に創作活動を続けていらっしゃいました。 

2015年に描かれたクスノキの絵。

モチーフは、静岡市で78年前にあった空襲に耐え平和の象徴として親しまれている、静岡赤十字病院前のクスノキです。

 

 2019年には、静岡市立森下小学校で紙芝居制作の指導にも当たりました。

写真提供 静岡市立森下小学校

 

写真提供 静岡市立森下小学校

かつての校舎を設計した建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの物語。 

いまも学校の創立記念日には、上級生が下級生にこの紙芝居を読み聞かせているそうです。 
 

 

おととしには新たな絵本も。 

二十四節気がテーマ

「二十四節気というのは、おじいさんおばあさんが子どもだった頃から時代を越えて孫たちの世代へとつながっているわけです。それは人間と自然との共生の姿といえるんじゃないか。」 
 

“わらべ絵”の世界観とぴったりですね

 

年を重ねてなお湧き上がる“わらべ心”

 18年ぶりにお会いした喜田川さん。

その“わらべ絵”は、みずみずしさを増しているようでした。

ご本人にうかがうと、「おなかの中にある“わらべ心”は、もうね、年を重ねるほどに、心の底から、湧き上がってくる」のだそうです。

私たちの内にある“わらべ心”は、忘れてなくなっていくものではなく、その思いは年を重ねるにつれて強くなり増大していくものであるようです。

喜田川さんの“わらべ絵”を見ていると、50歳を目前にした私の“わらべ心”がじわじわとよみがえってくるのを感じました。

 

 以前お会いした時、犬好き同士で話が弾んだ記憶がありますが、ミュージアムには最近描いているという猫ちゃんの絵も。

 

 84歳になられた喜田川さん。その創作意欲と“わらべ心”はこんこんと湧き続けているようです。

妻の妙子さんと
18年前に頂いた干支の戌の色紙を持って
  • 望月豊

    NHK静岡 アナウンサー

    望月豊

    静岡県伊豆の国市出身。1998年入局。2003年から2009年まで津放送局で勤務。

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