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静岡 浜松まつり コロナの制限緩和 屋台集結は4年ぶり

  • 2023年04月28日

静岡県浜松市伝統の「浜松まつり」が大型連休中に開催されます。みどころのひとつが、80以上の地域の御殿屋台が夜の町を練り歩く屋台の引き回しです。今年は、4年ぶりに中心市街地に屋台が大集結。これに合わせて、屋台の大規模な修繕を行った地区があります。込められていたのは、「伝統を守り伝えていきたい」という町の人たちの思いでした。

浜松まつりとは?

浜松まつりは、浜松市で400年以上前から続く伝統の市民によるまつりです。毎年5月3日~5日の3日間開催され、コロナ禍前の観客数は170万人、全国屈指の規模を誇ります。メインイベントは、昼間の「凧揚げ合戦」と夜の「屋台の引き回し」です。

昼間の凧揚げ合戦は、子どもたちの健やかな成長を願って行われます。凧の大きさは畳2帖から大きい物だと10帖もあります。170以上の凧が舞い、空を埋め尽くす光景は圧巻です。

その後、夜には82の地区の豪華けんらんな御殿屋台が町を練り歩く「屋台の引き回し」が行われます。今年は、コロナ禍の制限が解かれ、4年ぶりに中心市街地に屋台が大集結します。

伝統守りたい まつりに向け屋台修繕

 4年ぶりの大集結に向け、屋台の大規模な修繕に乗り出したのが、浜松市中区の中沢町です。この屋台が作られたのは、いまから64年前。それからほぼ毎年、まつりでお囃子を演奏する子どもが乗り、一日何時間にもわたって引き回されてきました。町の思い出と歴史がたっぷり詰まっています。 

渥美朋彦さんは、この町で生まれ育ち、いまでは町のまつりを取りしきるメンバーのひとりです。浜松まつりには、一家に初めての子どもが生まれると町を挙げて祝福するという伝統があります。幼い長男とまつりに参加したことはいまでもいい思い出です。

渥美さんにとっては大切な浜松まつりですが、コロナ禍の間、行事が制限されて参加者は減りつつあります。そんななかでも地域の伝統は守り伝えていきたい。4年ぶりに屋台の大集結することが決まった今年、渥美さんは町の人たちと話し合って、ところどころに傷がつききしみが出始めた屋台の大規模な修繕を行うことを決めました。

渥美朋彦さん
やはり屋台を長くもたせて、我々の先代・先々代と、60年以上前から引き継いできた伝統を伝承していきたいなと。

当初の素材や手法 いかして

修繕作業を担うのは、牧之原市で文化財の補修などを行っている専門業者の工場です。屋台から外された装飾品は30以上に上りました。いずれも、東海地方で名をはせた彫り師の流れをくむ彫刻です。

修繕の目的は「屋台が歩んできた歴史を守り伝える」ことです。作られた当初の素材や手法をできる限り生かそうと考えました。欠けた場所を補う場合は、生育年数や乾燥具合が合った木材を選び、木目もできるだけそろえました。

汚れ取りの作業

汚れ取りの作業では、和紙などを水にぬらして貼り付けました。紙が乾くときに、木にしみこんでいたホコリなどが浮かび上がるといいます。紙に色が付かなくなるまで8回ほど繰り返しました。 

装飾品の修繕が終わり、次に行われるのが屋台の組み立てです。昔ながらの手法を守り、釘や接着剤は一切使いません。屋台の腰骨となる台輪は、長く安全に使えるように堅いケヤキでこれまでよりもひとまわり太く、頑丈に作りました。

最後に修繕が終わった装飾品の取り付けが行われました。こちらは1本木で彫られた、中国に伝わる神様、鍾馗(しょうき)です。日本では魔よけとしてまつられています。

天女が静岡市の三保の松原に衣をかけたとされる羽衣伝説。縁起物や伝説、童話の一場面が透かし彫りの技術で浮かび上がるように表現されています。取り付けが進み、だんだんと屋台本来の姿に戻っていきます。

最後に、町のシンボル、中沢町の「中」の字を飾って修繕が完了しました。

生まれ変わった屋台 町民の思い乗せ

まつり本番まで2週間あまりとなった4月16日、完成した屋台が初めて町の人たちにお披露目されました。夜の暗闇のなか、提灯の灯りで彫刻が浮かび上がると人々の間から歓声が起こりました。

さっそく子どもたちが乗り込んでお囃子を奏でました。コロナ禍でまつりに制限がかけられ、お囃子を披露する機会が減っていましたが、この日に合わせて練習したといいます。
渥美さんは、次の世代に自信を持って受け渡せる屋台にできたと感じています。

渥美明彦さん
本当に安心感とうれしさと満足感でいっぱいです。この先、まだまだ若い人たちのためにも我々の背中がちゃんとしないといけないなと思っています。まつり当日は本当に豪華けんらんな屋台がそろうので、それをみなさんに楽しんでもらいたい。

子が見られるのは、3日と4日で、3日は30台あまり、4日には60台ほどが集まり、それぞれの町の思いと歴史が詰まった屋台がお目見えする予定です。

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