宮城県も油断しないで! 相次ぐクマ被害 私たちにできること

全国で相次ぐ、人がクマに襲われる被害。特に多いのが東北地方です。
宮城県内は東北の中では被害は少ないものの、目撃情報は昨年度を大きく上回っています。なぜ、被害が増えているのか。そして、私たちが心がける対策は。キーワードの1つが「えさだけでない!?においの出るものに注意!」

(仙台放送局記者 吉原実 岩田宗太郎)


【各地で被害が過去最多】

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東北地方の各地で相次ぐ人がクマに襲われる被害。NHKが10月24日の午後5時の時点で各県に問い合わせたところ、

▽秋田県が最も多く57人、
▽岩手県が39人、
▽福島県で13人、
▽青森県で11人、
▽山形県で5人、
▽宮城県で2人でした。

人的被害は、秋田県と岩手県それに福島県と青森県の4つの県ではこれまでに最も多くなっていました。

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一方で、クマに襲われた人数が2人となっている宮城県。昨年度の同じ時期に比べて少ないものの、10月20日の時点での目撃情報は766件。昨年度1年間の549件をすでに上回り、200件以上増加していました。宮城県は、10月23日から「クマ出没警報」を発表して警戒を呼びかけています。


【クマのえさが“大凶作”】

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クマによる被害が増えている背景には、深刻なえさ不足があるとみられています。
東北森林管理局が、クマの主要なえさとされるブナの実について、ことし9月から10月にかけて調べたところ、調査対象となっていない福島県を除く東北の5県で、4段階のうちの最も実りの少ない「大凶作」となっていました。135か所ある観測地点のうち、124か所では「まったく実がついていない」という深刻な状況だったとしています。

【専門家“クマが住宅近くにいることが普通に”】

クマの生態に詳しい、森林総合研究所 大西尚樹 動物生態遺伝チーム長は、もともとクマが増え続けていたところに、ことしのえさ不足が重なったことで、クマの行動範囲が広がっていると指摘します。

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(大西尚樹 さん)
「1970年代ごろから、クマの数が少なくなったことを受けて保護することになり、その後クマが増えてきた。だいたい10年ぐらい前から現在のような出没が顕著になってきていて、東北地方は山の中でクマが満ち満ちになっている状態です。人里近くで生まれ育ったクマも増え、クマにとっては私たちの住宅近くにいることが普通になってしまっている」

では、私たちがふだんからできる対策は何なのか。クマの生息している場所に行く際には、鈴をつけたり、ラジオを流したりしながら行動するほか、山には複数人で入ってほしいとしています。

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一方で、大切なことは家の近くに「においの出るものを置かない」ことだと指摘しています。

(大西尚樹 さん)
「地域のごみステーションにごみを出すときに、前の晩に出さないようにしましょうとよくいわれますが、前の晩に出してしまうとそのにおいにクマが引き寄せられるということがあります。あとは、漬物たるであるとか、意外なところではペンキとか、これからの時期は灯油もそうですが、そういう揮発性のものがしっかり密封されていないと、そういったにおいに引きつけられてきてしまいます。しっかり屋内でにおいが漏れないようにするということが大事です」

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クマは例年、12月に冬眠を始めますが、大西さんによると、ことしは暖かい時期が続いたこともあり、冬眠をする時期が少しずれ込む可能性もあるということです。宮城県でもほかの東北地方と同じように、いつ、どこでクマと遭遇するかわからない状況にあるため、油断せず、引き続き警戒してほしいと訴えています。

(大西尚樹 さん)
「宮城県でもここ数年クマが非常に増えてきていて、どこの地域でもふつうにクマがいる状況ができつつあります。まず認識を変えていただいて、クマが近くにいるんだという前提でこれからどうふだん日常生活を過ごしていくかっていうふうに考え方を変えていく必要があるかなと思います」