「次は自分が命を守る」教員目指し震災から学ぶ大学生

教員を目指す学生が集まる宮城教育大学では、教員となるうえで震災に向き合ってもらおうと、震災の教訓を学ぶ「311ゼミナール」と呼ばれる活動があります。
震災当時、幼かった大学生が震災に向き合う背景には、「次は自分が、子どもたちの命を守りたい」という思いがありました。

(仙台放送局 アナウンサー 西尾文花)


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仙台市にある宮城教育大学では、5年前から、教員を目指す人たちが、震災に関する様々なテーマを調査・研究しています。

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「311ゼミナール」と呼ばれるこの活動。
今年度は70人の学生が参加し、2月8日、調査してきた内容について報告会が開かれました。

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<宮城教育大学4年 佐藤駿さん>

参加者の一人、4年生の佐藤駿さんです。
教員を目指す佐藤さんは、1年生の時からこのゼミに参加してきました。

震災当時小学3年生で仙台市で被災した佐藤さんは、家族は無事でしたが、沿岸部にある石巻市の祖父母の家が大きな被害を受けました。

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<震災後片付けの終わった祖父母の家で撮影した写真 中央が佐藤駿さん>

佐藤さんは当時を振り返り、「いつも見ていた景色が、全部なくなってしまって。家の周りの駐車場にがれきが散らばったりして、今まで通っていた風景と全く違うなという印象を受けました」と話していました。

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<被災直後 石巻市にある佐藤さんの祖父母宅>

震災を身近に経験してきた佐藤さん。
大学に入学して驚いたことがありました。
各地から学生が集まる大学では、多くの人たちが被災の状況を詳しく知らないという現実があったのです。

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<沿岸部で聞き取り調査 中央奥が佐藤さん> 

震災の記憶を風化させたくない。
みずからゼミに参加し、仲間たちと被災地を回り始めました。

4年目となる今年度は、震災で教員たちが果たしてきた役割について調査してきました。

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<石巻市の門脇小学校>

そのうちの一つ。
石巻市の門脇小学校です。
この小学校は、津波で校舎の1階が浸水し、その後火災の被害を受けました。
当時学校にいた児童たちは、教員たちの誘導で裏山に避難して無事でした。

なぜ無事に避難できたのか。
調査の中で、佐藤さんは当時の教員から直接話を聞きました。

そこで気づいたのが、避難訓練の重要性です。

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ゼミのメンバーの一人からは 「急な坂が多かったので、子どもたちがのぼる中で、それなりに体力も必要だし、日ごろから訓練することが大事だと思いました」という意見が出て、日ごろからの訓練の重要性を感じたといいます。

また、佐藤さんは、「学校内だけではなく、下校中や休みの日の避難の方法についても、先生が子どもに伝えないといけないと思いました」と話し、子どもたちの訓練の重要性をどう伝えるのか、自分たちでも考えたいという意見が出されました。

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1年の成果を報告する報告会。
佐藤さんは、仲間たちと学んできたことを発表しました。

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「この門脇小学校では、震災が起こる前から、津波に備えて自分たちの学校よりも上にある高校に、児童全員を連れて避難していくことが、毎年行われていたそうです」

日ごろの訓練の大切さ。
さらに、廊下の歩き方や教員の話を静かに聞くことなど、当たり前のことが災害時の避難につながっていたことを知りました。

「廊下は歩く方向が決まってるなど、すぐ行動を取れるような環境の体制が整えられていたから、非常時にもすぐ指示をすることができたり、児童全員がしっかり聞くことができたのではないかと感じました」

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「次は自分が、子どもたちの命を守りたい」。
教員を目指す佐藤さんは改めて、子どもたちを守るために何ができるのか、考えていきたいと決意を新たにしていました。

「(被災地に)一度足を運んでみて、どういうことがあったのかを知ること、知ったうえで、自分の中で理解して、それを子どもたちに伝えていけるような先生になっていきたいと思っています」

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<「311ゼミナール」報告会に参加した学生たち> 



【取材後記】

「311ゼミナール」を指導している、宮城教育大学特任教授の武田真一さんにも、話を聞きました。武田さんは、教員を目指す学生が震災に向き合うこと自体に大きな意義があると話してくれました。

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<宮城教育大学 防災教育研修機構 特任教授 武田真一さん>

「教員になった時、子どもたちにどう伝えていったら良いだろうと、悩み、自分なりに考える過程が重要だ。震災から学んだことを次世代に伝えていく役割を担ってほしい。そのための学ぶ場を提供していきたい」

ゼミナールに参加する学生は、震災当時大きな被害を受けた人も、県外や内陸で被害の少なった人もいます。被災の有無や大小はさまざまですが、全員が共通して、「ゼミを通じて学んだことを、子どもたちに伝えられる教員になりたい」「災害時に子どもたちを守れるようになりたい」と力強く語っていました。

私もアナウンサーとして、震災で何が起きたのか学んでいる途中です。
今回取材した「311ゼミナール」の学生のように、震災に向き合い震災から学ぶことで、災害にどのように向きあい、どう解決していけばよいのか考え続けたいと感じました。


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仙台放送局 アナウンサー 西尾文花
2023年入局

小学生の時の将来の夢は学校の先生でした。
子どもたちを支える人々を、これからも取材します。