令和の指導術! 佐賀 鳥栖工業レスリング部 独自理論で選手育成
- 2024年03月01日
2023年の「かごしま国体」、レスリング競技で初の男女総合優勝を果たした佐賀県勢。その強化の拠点となっている施設が鳥栖市にあります。
2022年、鳥栖工業高校の敷地内に完成した、鳥栖レスリングセンター。県が、アスリート育成をすすめようと、約5億円をかけて建設したものです。
2面のマットや最新の器具を備えたトレーニングルームなどがあり、高校生や社会人、さらに子どもたちなど幅広い年代に利用されています。
この鳥栖レスリングセンターで活動する全国屈指の強豪、鳥栖工業レスリング部は、独自の理論に基づいた指導によるトレーニングを行っています。
【強豪レスリング部のウォーミングアップは・・・】
鳥栖レスリングセンターの道場。この日集まった選手たちが、最初に始めたのは・・・。
なんと、サッカー!鳥栖工業では、体操やランニングなどのウォーミングアップは行いません。
遊びの要素を取り入れたミニサッカーのゲームで汗を流し、ほどよい集中力を保ちながら練習に入るのが狙いです。
サッカーが終わると、ふたりひと組になり、技のかけ方を確かめ合います。
【選手たちに‟考えさせる”独自の指導法】
レスリング部を率いる、小柴健二(こしば・けんじ)監督は、この間ほとんど指示を出しません。
(小柴監督)「レスリングっていうと厳しいスポーツというイメージがあると思うんですけど、選手を伸ばすというところを考えた中で、いまの指導法が、一番適していると思います。」
現役時代、日本選手権優勝などの実績を残してきた小柴監督。
指導者になってからは、自身が考えたハードな練習メニューを課し・・・
自宅で選手たちと寝食をともにするなど、日常生活から管理してきました。
しかし、より高いレベルを目指すには、指導の方法を変えていかなければならないと感じたといいます。
(小柴監督)「ここ何年かで指導法も変わっていった感じですね。ほとんどの選手が大学でも競技を続けるので、しっかり自分で考えて練習できるように自主性というのは重んじてやっています。純粋に、レスリングというものを考えて、自分の形をつくることを一番に置いています。」
小柴監督が新たに始めたのが、世界中の大会のなかから注目した場面を切り取って、選手たちと動画を共有する取り組み。
選手たちは、この映像をヒントに自分に最も適した技の入り方を考えていきます。
(選手)「こっちの足を寝かせるみたいな・・・」
監督はきっかけを与えるだけ、考えるのは選手自身です。
【独自の練習で急成長~2年連続高校三冠達成!】
この練習で急成長したのが、甫木元起(ほき・げんき)選手です。
甫木選手は『全国高校選抜』『インターハイ』そして『国体』と、高校生の主要大会すべてで2連覇を達成。圧倒的な実力を見せつけてきました。
(甫木選手)「自分で考えることで、自分の体や手足の長さにあった判断というか、これならできるというのが自分が一番わかると思うので、そこが一番伸びた部分です。」
道場での練習が続く一方・・・
同じ時間に別の部員はトレーニングルームでの鍛錬を行っていました。その日にどんなメニューをこなすかは、選手各自の判断に委ねられているのです。
(内田選手)「僕は高校からレスリングを始めたんですが、最初は周りに追いつくのに必死だし、筋トレなどを精いっぱい頑張って追いつけるよう努力しました。」
小柴監督は、"自身に考えさせる指導"で成長した選手たちが、国スポでも活躍することを期待しています。
(小柴監督)「佐賀の地で試合がありますので、自信をもって初めての国スポでの総合優勝を出来るように頑張ってほしいと思います。」
【取材後記】
鳥栖工業は、2023年のインターハイで団体優勝を果たしたほか、「かごしま国体」でも複数の優勝者を輩出するなど、小柴監督による指導が着実に実を結んでいます。
また、小柴監督にお話を伺ったなかで印象的だったのは「いまはこの指導法が一番適していると考えているが、数年後には全く違うやり方をしているかもしれない」ということばでした。このような柔軟な考え方こそが、多くの有力選手を育ててきた背景にはあるのかもしれません。
今回、放送した内容は、部活動の世界にとどまらず、社会人や子育て中の親世代などにも大いに参考になるものだったかと思います。